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2011.07.19

 タイ、カンボジア両軍に即時撤退を命令 国際司法裁判所ハーグで 

カテゴリカンボジア出典 朝日新聞 7月19日 朝刊 
記事の概要
タイとカンボジア間の国境紛争を巡り、国連の国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)は18日、両国国境近くの世界遺産「プレアビヒア寺院」の周辺を暫定的な非武装地帯とし、両国ともに部隊を速やかに撤退するよう命じる判決を言い渡した。

両国は判決を受け入れる意向を示した。

判決は、カンボジアが訴えた国境の明確化については結論を先送りした。

しかし、武力衝突で寺院などに取り返しのつかない被害が出ないよう、緊急措置として非武装地帯を設置。カンボジアが求めたタイ軍の撤退だけでなく両国に対し、この地帯での全ての軍事行動を即時停止するよう命じた。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の監視団を受け入れることも求めた。

タイのアピシット首相は地元メディアに「判決を受け入れる」と表明。

カンボジアのホー・ナムホン副首相兼外相は「判決を歓迎する」と話した。

ただし、これまで撤退や監視団受け入れを拒んできたタイ陸軍の第2軍管区報道官は朝日新聞に「撤兵よりは政府間交渉が先だ」と述べた。

タイでは、カンボジアのフン・セン首相と親交ののあるタクシン元首派のタイ貢献党が今月の総選挙に勝利。衝突を繰り返した現政権とは違う融和ムードが出つつある。
コメント
タイ側の問題は、このプレアビヒア寺院の”観光利権”を握りたいタイ軍部が強硬姿勢を続けることにあった。

タイ軍部の支持を得るためには、タイ政府(アピシット首相)は軍部の強硬姿勢を支持するしかなかった。

しかしタイでタキシン派が政権を奪い返せば、タイ軍部への報復で”プレアビヒア寺院の観光利権”を奪いとる可能性がある。

そしてタイ軍部に代わって、カンボジアのフン・セン首相とタキシン派が折半して共通の利権としてプレアビヒア寺院を観光化する。

例えば、タイ側の道路にはタイ政府の検問所(料金所)でカンボジア側の道路にはカンボジア政府の検問所(料金所)を設置するとか、1本の道路に2カ所の検問所を設けるなどである。

カンボジアのシェムリアップにはアンコールワットに通じる道に外国人用の料金検問所がある。たしか一人40ドルだったと思うが、以前は自由に行くことができたので、ずいぶんと外国人から分捕るなと思った。

そのアンコールワットに匹敵する遺跡なのがプレアビヒア寺院なのである。

このように説明すると、タイの軍部がプレアビヒア寺院の観光利権に執着する気持ちがわかるだろう。

国際司法裁判所は絶好なタイミングを狙って判決を出した。

タイ軍もクーデターを起こしてまで、プレアビヒア寺院の観光利権に執着することはできない。



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