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2011.07.16

 アフガン:米軍撤退開始「寝耳に水」 双方の足並み乱れ 

カテゴリアフガン出典 毎日新聞 7月16日 朝刊 
記事の概要
アフガニスタンから撤収した駐留米軍部隊第1陣は、アフガン国民に知らされないまま、ひっそりと去って行った。

20日ごろに治安権限移譲の大規模式典を予定しているアフガン政府にとっても「寝耳に水」(アフガン政府当局者)の動きだった。

米軍側には、撤収に関する情報がアフガン政府関係者を通じて旧支配勢力タリバン側へ伝わり、攻撃されるとの恐れがあったとみられる。

駐留軍の爆撃による民間人殺傷が相次いだことで、カルザイ政権は米軍への反発を強めたが、「対テロ」戦争終結へ向けた記念すべき撤収開始でも、双方の足並みの乱れと相互不信を露呈した。

カルザイ大統領は3月、アフガン側に7月に治安権限が移譲される地域として、カブール州など3州と西部ヘラート市など4市を挙げた。

しかし、駐留米軍は今月6日、7月の撤収はカブール、パルワン両州に駐留する陸軍州兵部隊の計800人のみとし、食い違いを見せていた。

今回撤収したのは、米軍発表通りのカブールとパルワンの部隊で、米軍は今後も独自の戦略で撤収していくとみられる。

アフガン政府関係者は15日、「パルワン州では、(治安権限移譲の)式典すら予定されていない」と不満を隠さなかった。

アフガン政府側は、予定通り7州・都市で式典を開く。

西部ヘラート州のダウド・サバ知事は14日、毎日新聞の取材に「ヘラート市などではすでにアフガン軍・警察が治安を守っている」と語り、米軍の撤収が多少遅れても問題はないとの考えを示した。

アフガン政府や国民の大多数は米軍の早期撤収を求めているが、現地の政治アナリスト、アフマド・シャー氏は「国土の大部分で治安は回復しておらず、経済状況も悪い。急な撤収はタリバンを勢いづける」と警告した。

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アフガン:米軍撤収第1陣、650人が帰国の途に

  毎日新聞 7月16日 朝刊  カブール 杉尾直哉特派員 

アフガニスタン駐留の北大西洋条約機構(NATO)軍は15日、アフガン駐留米軍の撤収第1陣が帰国の途に就いたと発表した。

撤収したのは、中部カブール州と北接のパルワン州の部隊で計約650人。

7月中の撤収開始を公表していたオバマ米大統領は、月内に計800人、年内には計1万人を撤収させ、14年に撤退を終える計画だ。

01年9月の米同時多発テロ事件を契機に始まった米国主導の「対テロ」戦争は、アフガン駐留米軍の撤収開始で「終戦」局面を迎えた。

ただ、今回の撤収は治安維持部隊が対象で、戦闘部隊などの本格的な撤収は、米軍の主敵となった旧支配勢力タリバンの活動が鈍る冬季からになる見込みだ。

NATO軍によると、撤収したのはアイオワ州とネブラスカ州の部隊で、昨年から段階的に増派された3万3000人の一部。

10年11月にアフガン入りしたが、十分な宿舎や通訳が確保されず、厳しい環境に置かれていたという。

撤収は14日、バグラム米空軍基地から輸送機などで行われ、アフガン国内の別の米軍部隊約300人が両州での治安維持活動を引き継いだ。

一方、アフガン政府も近く米軍撤収と治安権限移譲の大規模式典を主催する予定。
コメント
この2本の記事は、ともに今朝の毎日新聞の朝刊に掲載され、2本とも同じ杉尾特派員が書いた記事である。

アメリカ軍はアフガン戦争で勝利して、アフガンから本国に撤退するわけではないことを証明する光景と思う。

アフガン政府の大規模な式典で送られて、アフガンから撤退することには抵抗を感じるのではないか。

オバマ政権は一刻も早くアフガンの泥沼から抜け出し、アメリカ兵を本国に帰国させ、来年の大統領選に臨もうとしている。

アフガンでの戦争はアメリカの名誉の戦争ではなかった。

オバマ政権はアルカイダの指導者であるビンラディンを殺害したから辛うじてアフガン撤退で華を飾ることができたが、あれがなかったら散々なものだった。

だからアフガンから撤退する米兵を盛大な式典で祝うのは、カルザイ大統領側の事情からで、米軍撤退を自分の国民人気に結び着けたい意図がある。

アフガンから米軍を追い出したのはタリバンではなく、自分の功績として国民に意識付けたいカルザイ大統領の政治戦略である。

アメリカが撤退する理由は、もう一度繰り返すがアフガンの泥沼から抜け出し、来年のオバマ再選に結びつけたいからだ。

この意識の差が、「寝耳に水」の撤退第一陣になったのではないか。

このようにあの軍事大国のアメリカが、アフガンでは子供のように扱われている。

このアフガンの国民性が、旧ソ連軍をアフガンから追放し、ソ連邦さえも崩壊させる起爆薬になったのだ。

アメリカ軍は負ける戦争はないかもしれないが、勝てない戦争があることを学ぶ必要がある。

このことに軍拡を急ぐ中国が気がつくのは長い時間がかかると思う。



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