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2011.05.11

 あたご衝突、自衛官2人無罪 地裁判決「漁船側に原因」 

カテゴリイスラエル出典 朝日新聞 5月11日 電子版 
記事の概要
海上自衛隊のイージス艦「あたご」が2008年2月、漁船・清徳丸と衝突し、清徳丸の父子が死亡した事故をめぐる刑事裁判で、横浜地裁は11日、業務上過失致死などの罪に問われた2自衛官を無罪とする判決を言い渡した。

秋山敬裁判長は「清徳丸側が衝突の原因を作っており、あたご側に衝突を避ける義務はなかった」と述べた。

刑事裁判に先だって行われた海難審判の裁決(09年1月)は「あたご側が見張り体制を十分に構築していなかったことが事故の発生原因」と判断。大きく食い違う形となった。

判決を受けたのは、あたごの元航海長後瀉(うしろがた)桂太郎被告(38)と元水雷長長岩友久被告(37)=いずれも3佐。

2人は08年2月19日早朝、千葉・房総半島沖であたごを操船。後瀉3佐は衝突約12分前に、操船責任者である当直士官を長岩3佐に引き継いだ。

横浜地検は、後瀉3佐が「漁船はたぶん停止操業中」と誤った引き継ぎをし、長岩3佐がそれを過信して衝突の恐れに気付かなかったために事故が起きたとして、2人を起訴。それぞれに禁錮2年を求刑していた。

公判で2人は過失を全面否定し、衝突に至る清徳丸の航跡が争点となった。

清徳丸の航跡記録は沈没で失われ、ともに漁場に向かっていた僚船乗組員らの目撃証言から推定するしかない。

検察側は「清徳丸は自船の左7度の位置を航行していた」との僚船乗組員の供述などを根拠とした。

ところが、この乗組員は公判で「自分から7度とは言っていない。この辺だと言っただけだ」と供述調書の表現を否定。さらに、航跡図は「左7度」に整合しない部分もあった。

判決はこれらの問題点を列挙し「供述をもとに特定したのではなく、別の方法で特定した航跡に沿うよう供述を恣意(しい)的に用いた」と指摘。

「清徳丸は、検察が主張する航跡で航行していたとは認められない」として、検察の主張を全面的に否定した。

一方で、弁護側が独自に主張した航跡についても「信用できない」としつつ、自ら航跡を推定。「清徳丸が直進すれば衝突しなかったが、衝突3分前に清徳丸が右転し衝突の危険が生じた」と述べ、衝突の原因が清徳丸側にあったと判断し、「清徳丸は、衝突約30秒前からはあたごの汽笛や探照灯照射で危険を知ることができたのに、衝突直前まで回避動作を取らなかった」と指摘。

あたご側に海上衝突予防法にもとづく回避義務はなかったと認めた。

その判断を踏まえ、2自衛官の見張りが不十分と認めながらも、法律上の注意義務を負っていたとはいえないと結論づけた。

海難審判では、海自側が「清徳丸の右転で危険が生じた」などと責任を争ったが、裁決は、長岩3佐の監視不十分が事故の原因になったと判断。

「あたご側が見張り体制を十分に構築していなかったことが事故の発生原因」と述べて、海自側に安全教育を徹底するよう勧告していた。

一方、後瀉3佐の引き継ぎは、事故と「相当な因果関係はない」として、後瀉3佐の責任は認めていなかった。
コメント
この事故が起きた直後、日本テレビのズームイン朝に電話で生出演をした私は、ヘリからの現場映像を見ながら「護衛艦と漁船の双方に見張り不十分が事故の原因です」と話した記憶がある。

羽鳥アナウンサーが「今の段階で、そこまで断定しなくてもいいのではないですか」と返答したことを憶えている。

しかし今となっては、漁船に側に生存者はいない。「死人に口なし」という判断で今回の判決が下された感じがする。

もし「あたご」側に漁船の動きを察知すれば、警笛などの警告をすれば衝突事故は防げたと思う。

互いに相手の存在と接近に気がつかず、このような悲惨な衝突事故になってしまった。

だから次回の高裁や最高裁では、今回と同じ横浜地裁の同じ無罪の判決は出ないと思う。それでは事故の責任者責任が無視されるからだ。

相手が死亡して証言が得られないから、航跡を認定することができないという理由もわかるが、それでは衝突されて死亡した2人の漁師の魂は浮かばれない。

ここは互いに相手の船を認識していなかったという理由で、もう一度今回の判決を見直すべきと思う。

互いに相手の存在を認識していなければ、今回の判決はどのように変わるのか、その判決を待合い。



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