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2011.01.19

 イラン核施設ウイルス感染 米、イスラエル関与か 「スタクスネット」に感染か 

カテゴリイスラエル出典 産経新聞 1月17日 朝刊 
記事の概要
イランの濃縮関連施設のコンピューターシステムがウイルス「スタクスネット」に感染し、核開発が数年遅れる見通しとなっている。

この件で、米紙ニューヨーク・タイムス(電子版)は15日、米国とイスラエルが過去2年間、イスラエル南部の核研究施設でイランのウラン濃縮関連施設と同様の遠心分離器を作り、「スタクスネット」の効果を研究していたと伝えた。

同紙はこのウイルスがアメリカ・イスラエルによって製作されたことを示唆する強力な手がかりになると指摘した。

情報機関・軍事関係筋の話として報じたもので、米国人専門家の一人は「ウイルスの効果を詳細に調べるには、対象となる施設を把握しておく必要がある。ウイルスが効果的だったのは、イスラエルが試験済みだったからだ」と述べた。
コメント
この記事は2日前の産経新聞に掲載されたものである。それが今朝(19日)のFM放送「JーWAVE」で解説を求められたので、電話でインタビューに答えた内容を掲載します。

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この事件は昨年11月中旬、イランのナタンツにあるウラン濃縮施設がサイバー攻撃を受けてダウン。イランが使っていたウラン濃縮高速遠心分離器(IR−1)が使用できなくなったもの。

使われたウイルスはイスラエルが開発した「スタクスネット」で、これはウラン濃縮の超高速分離器の回転をコントロールするソフトを誤作動させる性能を秘めている。

このサイバー攻撃でイランのウラン原爆の開発は2年以上の遅れが出ることIAEA(国際原子力機関)が推測している。

しかしこのウイルスをイスラエルがアメリカと共同開発したという説明は疑問だ。イスラエル南部の核施設で同型(IR−1)の施設を作り、「スタクスネット」の効果を確認したなら、イスラエルは「モサド」(イスラエルの情報機関)によってナタンツ核施設のコンピューターに仕掛けるのは容易である。

モサドの暗躍でイランのウラン濃縮の情報を入手したら、今度は逆のルートでナタンツの核施設にイスラエルからウイルス入りのソフトを忍び込ませることは容易である。

今回のサイバー攻撃は外部の通信ネットから侵入して、ナタンツ内部の制御コンピューターを誤作動させたものではない。(外部とネット回線と遮断し、外部のネットから侵入できないようにセキュリテーが施されている可能性が高い)

それではなぜイスラエルはアメリカと共同開発したと報道させたのか。それはイスラエルがイランから報復を受けることを警戒したからだと思う。

レバノン南部のヒズボラを使い、イスラエル北部にロケット砲撃などの攻撃を加えることは可能である。それを防ぐためではないか。アメリカの名前を出すことで、イランから単独でイスラエルが報復を受ける危険性を排除したかった。

ともあれ、これでイランは旧式なウラン高速遠心分離器(IR−1)を新型に交換する必要がある。これはイランの原爆開発が致命的な攻撃を受けたという言い方もできる。

イスラエル空軍がイラクのフセイン大統領時代にバグダッドで完成直前の原子炉を空爆した時代とは違うのだ。イランの核施設は空爆を警戒して、山間部の地下トンネルに建設されている。もし、イスラエルが攻撃するなら、地上部隊を派遣して、トンネル内の地下施設を破壊する必要があった。大きな犠牲が予測できる特攻作戦である。

しかし今回のサイバー攻撃で、我々が知らぬ間に戦争が始まり、我々が知らぬ間に戦争が終わった。今はそんな時代が到来している。



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