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2010.10.06

 米から武器調達 総計10兆円以上 湾岸4か国 軍拡加速 イランの核に対抗か 

カテゴリ 中東、ペルシャ湾出典 読売新聞 10月6日 朝刊 
記事の概要
中東の湾岸諸国(サウジ、オマーン、UAE、クウェート)が米国から兵器を調達する動きを加速させている。4か国の兵器購入総額は今後数年間で計1200億ドル(約10兆円)を超えるとみられる。

8月中旬に明らかになった米国からサウジへの兵器売却計画は「史上最大規模の兵器取引」と評された。新型のF15戦闘機84機や多用途ヘリ「ブッラクホーク」などヘリ計178機など、総額678億ドル(約5兆6000億円)に上る。

英フィナンシャル・タイムズ紙によると、UAE(アラブ首長国連合)はパトリオット地対空ミサイルなどミサイル防衛を中心に356億ドル(約2兆9000億円)、オマーンがF16戦闘機18機の購入など123億ドル(約1兆円)、クウェートにもミサイル防衛の強化に71億ドル(約5800億円)をかける計画という。

4か国の兵器調達額は、2014年までに計1228億ドルに上る見込みだ。

背景には、イスラム教スンニ派国家が大半を占める中東で、急速に影響力を増すシーア派大国イランへの警戒心だ。

イランは今年2月、保有ウランの濃縮度を兵器級の高濃縮ウラン生産が容易になるレベルまで高める作業を開始した。

中距離弾道ミサイルの改良や航続距離が1000キロとされる無人爆撃機の開発も進める。

イスラエルがイランの核施設を空爆するとの見方もくすぶり続ける。

湾岸諸国の親米国家が米軍の基地を抱え、「いつイランの攻撃対象となり、衝突が起きるかも知れない不安が、兵器購入に駆り立てる」と、エジプト背負政府系のアラハム政治戦略研究所のガルマ・アブデルガワド副所長は分析。

こうした兵器購入の動きが、「イランの軍事行動をちゅうちょさせる要因になる」と抑止効果を期待する。

しかし、兵器の大量調達はさらなるイランの軍備増強を招く恐れもある。

UAEの調査研究機関のムスタファ・アニ研究院は、「この地域での軍拡競争は既に始まった」と指摘した。
コメント
サウジの史上最大の兵器調達については、What New の、「サウジに武器 5兆円売却 (9月15日)」を参照してください。

湾岸4か国の狙いは3点あると思う。@イランとの戦争に備えた戦力を整備して抑止力にも使う Aイランから発射される弾道ミサイルを、米国から調達したPAC3で軍事拠点を防衛する Bイランを軍拡競争に巻き込み国内経済を破綻させる 

いずれもアメリカ軍がイラクから撤退させることで、ペルシャ湾の湾岸地域で軍事力の空白が生まれることを想定しての動きである。

核開発で経済制裁を受けるイランと、中東の石油を支配する湾岸4か国との経済力を考えると、私はBの要素が極めて高いように思える。

そこで最も危険なことは、駐留米軍の撤退後にイランがイラクのシーア派と大団結することである。

イランがイラクと大団結すれば、隣国のシリアが組み込まれ、さらにレバノンに支配圏を拡大することが可能になる。

イスラエルにとってはまさに悪夢となるだろう。

湾岸4か国が約10兆円の兵器購入をしたとき、果たしてイランはどちらを向いて動くのか。

これは逆ネオコンの動きに似ている。



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