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2010.09.29

 北朝鮮 ジョンウン氏「大将」に任命 経済再建 後回し 軍優先を維持 

カテゴリ北朝鮮出典 毎日新聞 9月29日 朝刊 
記事の概要
(神浦・・・毎日新聞はジョンウン氏を正銀と漢字表記していますが、このHPでは当分の間、サイト内検索のためにジョンウンとカタカナ表記します。なお、中国の国営新華社系国際情報紙などは、この夏頃から正銀という漢字表記をするようになりました)

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北朝鮮は28日、金正日総書記の三男ジョンウン氏を朝鮮人民軍の大将に任命したことを明らかにした。

(神浦・・・29日の未明に発表された党人事で、ジョンウン氏は朝鮮労働党軍事委員会(金正日委員長)に新設された副委員長に就任した。29日、朝のNHKニュースより)

軍の人事では、金総書記の実妹である金慶喜党部長(64)や、夫の張成沢国防委員会副委員長の側近である崔竜海氏(前黄海北道党責任書記 62)を大将に任命した。

金慶喜氏と崔竜海氏は、ともに軍務の経験のない異例の大将人事で、これも先軍政治の一環だろう。

先軍政治は、軍を重視して資源を優先的に振り向けることで軍部の離反を防ぎ、国内の体制締め付けを図ろうとするものだ。

北朝鮮の公式サイト「わが民族同士」によると、8月24日の労働新聞は「先軍政治の力強い波は、なんとしても最終勝利の対岸にたどり着く。党と革命の命脈は代を継いで粘り強く受け継がれる」という論調を掲載し、先軍政治を今後も続けることを示した。

北朝鮮の内部資料でも、ジョンウン氏の後継体制の下でも、軍需工業が最優先されることを示唆している。

ただし、先軍政治と北朝鮮が望む経済発展は両立しない。北朝鮮の経済状況を好転させるには、先軍政治を転換して対外関係の改善や市場の重視といった政策を取り、限られた資源を民生部門に投入するほかないからだ。

北朝鮮経済の現状は待ったなしの段階だ。中朝関係筋は「コメの価格は1キロ1700ウオンに達したところもある。5月の3倍以上にまで価格が上がった」と語った。

コメ以外の食料品や生活必需品も、経済水準が北朝鮮よりもはるかに高い中国の地方年並みの価格になっているという。

北朝鮮住民によれば、地方の大学教授でも月収は5000ウオン程度だ。正規の月給ではコメ3キロも買えないことになる。

地域によっては一定程度の配給が行われているが、「そんなもので生活ができない」(北朝鮮住民)のが実情だ。

中国人の北朝鮮専門家の一人は「この期に及んで、まだ先軍政治を守るというなら、北朝鮮経済に未来などない」と吐き捨てるように語った。
コメント
この記事を読んで気がついた。最近、平壌近郊の軍事飛行場で10月10日に史上最大(兵士1万人規模)の軍事パレードの練習が行われていると書いたが、これは軍が党に対する圧力だったのではないか。

平壌近郊に戦車や装甲車など1万人規模の部隊が集結することは、北朝鮮の支配体制から軍部を排除しようとする労働党には無言の圧力となる。軍事クーデターの脅しである。(※逆に反クーデターの可能性もある)

このため党は軍の排除を諦め、金一族を軍の組織に組み込む(大将人事)ことで、先軍政治の継続を約束さされたのではないだろうか。

そもそも今の人民軍に、戦車や装甲車が参加する軍事パレードは無理なのである。戦闘車両が隊列を組んで整然と行進することなど無理なのである。

エンジンなどの劣化と部品不足や、軍事パレードの訓練のための燃料がないからである。

実は沖縄に外来の米軍機があいつで飛来している。沖縄タイムス紙によれば、23日に岩国基地(山口県)に配備されている米海兵隊のFA18ホーネット10機が普天間基地に飛来した。さらに同紙によれば、27日には米空軍の三沢基地(青森県)からF16戦闘機が嘉手納基地に6機飛来している。

この時期になぜ沖縄に飛来したか疑問を感じていたが、米軍は平壌近郊の飛行場に人民軍が軍事パレードのためと称して集結したことで、米政府は北朝鮮で軍事クーデターの可能性を感じたからではないか。

そのための予防措置として嘉手納に米軍機を避難させるとともに、北朝鮮の異変に対応できるように体制をとった。

ところが、これが人民軍の労働党に対する圧力だったわけである。その結果、今回の大将人事と党軍事委員会に新設された副委員長のポストにジョンウン氏を就任させ、軍の意向を受け入れさせたというシナリオが読めると思う。

これも北朝鮮の党と軍の権力闘争である。

繰り返し言うが、今の人民軍に戦車部隊や自走砲部隊、それに航空機(小型ヘリを除く)が参加する史上最大の軍事パレードはとうてい無理なのである。

もし予定通りに10月10日に軍事パレードが行われても、今まで通りに徒歩部隊と軍用トラックが牽引する火砲やミサイルぐらいではないか。無論ミサイルの中身は砂を詰めたダミーである可能性が高い。

まあ、10月10日になればわかることである。

※軍部の一部がクーデターを起こす可能性に対して、平壌近郊の飛行場に党に忠誠を誓う戦車部隊を集め、クーデター部隊を威嚇するという意味です。



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