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2010.08.25

 ホルムズ海峡 密輸ボート 我が物顔 手薄な警備 

カテゴリ 中東、ペルシャ湾出典 朝日新聞 8月25日 朝刊 
記事の概要
商船三井のタンカーが損傷したホルムズ海峡では、高速で飛ぶように行き交う小型ボートの密輸船が目立っていた。

約80キロ離れた対岸イランのバンダルアバスへ、オマーン北部のハサブから、米国製のタバコや日本のテレビ、中国の衣類を密輸するイラン人たちだ。

ハサブ港で堂々と密輸品の積み込み作業をしていたイラン人のムハマンド・ザーレイさん(23)は、「2トンの荷物を片道2時間でイランに毎日1、2回届ける。13歳の時、父親を手伝って始めた。危険だけどやめる気はない」「警備の船はいるけど止められることはない。(「事件後に)警備が増えたとは思わない」と話した。

沿岸警備隊はオマーン警察の所属。警察本部も沿岸警備隊も取材に応じなかった。

今回の事件で、真偽は不明だが国際テロ組織アルカイダ系組織が犯行声明を出した。ソマリア海賊との連携の可能性も指摘されている。

しかしソマリア海賊のリーダーの一人は朝日新聞の電話取材に「今回の件が海賊の仕業という情報は、仲間内に入っていない」と話した。
コメント
このような大型タンカーを爆発物で攻撃する方法は、携帯式対戦車ロケット砲(RPG7)などが使われることが一般的だった。

小型ボートでタンカーに接近し、船上でRPG7を構えて、タンカーのブリッジに向けて発射するやり方だ。

25年ぐらい前に、日本の大型石油タンカーがイランの革命防衛隊のメンバーにRPGで攻撃されたことがある。

その石油タンカーが川崎港に帰港したとき、船内の被害状況を取材したことを鮮明に憶えている。

船室の天井や壁が、爆発したRPG7の砲弾の破片でメチャクチャに壊れていた。(このことはすでに書いた)

今回、軍事常識で想定できることは、火薬はRDXやTNTといった軍用火薬の可能性が高い。手製爆薬では期待した爆発力が得られない。また、タンカー船体に金属の破片痕が見えないことから、軍用火薬を油紙やプラスチック袋のような柔らかいもので巻いている。さらに沈まないように浮体をつけ、簡単な時限信管セットする。(この程度の爆発物作りなら軍の教育を受ければ簡単)

さらに航行中のタンカーの船体に接触させるため、爆発物に磁石を取り付けて磁力で船体に接触させる方法がある。

また爆発物に長いロープと浮体をつけ、小型船を使ってロープをタンカーの前部で進行方向に直角に延ばす。進行してきたタンカーの船首がロープを引っかけ、ロープ端の爆発物が船体に接触するというやり方である。

しかし幸いにも、今回、爆発物は船体に接触することなく、船体から数メートル離れた水面上で爆発した。タンカーの損傷痕(威力)から爆発物(軍用火薬)は数キロから数十キロ程度と推測される。

そこで考えられる動機だが、アルカイダという説は否定されると思う。むしろホルムズ海峡がいつでも航行中止させることができることを証明して、中東での戦争の危険性を誇示することが動機と考える方が一般的だ。

すなわちイランの革命防衛隊が、イスラエル軍や米軍の奇襲攻撃を警戒して、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃の危険性を誇示したと考える方がごくごく普通だ。

また、とくに日本のタンカーを狙ったとは考えられない。また、今回の攻撃でイランの存在を誇示する必要もなかった。ホルムズ海峡の重要性と脆弱性を証明すれば目的は達せられる。

ともあれ、タンカー船体の損傷箇所に付着したススの成分を分析すれば火薬の種類が特定できる。

今後、ホルムズ海峡のタンカー通過は、見張りを厳重にして、昼夜の区別なく警戒を強化することが必要だ。



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