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2009.05.26

北核実験は決議違反 「新たな制裁」目指す 国連安保理

カテゴリ北朝鮮出典時事通信 5月26日 電子版
記事の概要
国連安全保障理事会は25日午後(日本時間26日早朝)、緊急理事会を開催し、北朝鮮の核実験に強い反対と非難を表明するとともに安保理決議違反と明言する議長談話を出した。仏国連次席大使は、北朝鮮に対する「新たな制裁」を盛り込んだ決議案採択を目指す考えを表明した。
コメント
25日に北朝鮮が行った2回目の核実験で、国連安保理では緊急理事会を開催し、北朝鮮に新たな制裁を課すことで一致した。今朝のNHKユースでは、その制裁案を日本が草案すると報じていた。そこで新たな制裁案とは、北朝鮮の貨物船を洋上で臨検するようである。(PSIに似ている)

06年10月の1回目の核実験では、北朝鮮の外国資産の凍結や、ぜいたく品の輸出禁止などと比べると、今回は遙かに厳しい制裁案である。北朝鮮がアフリカや中東に輸出している武器(通常兵器)の輸出に大きな影響を与えるだろう。しかし核兵器(大量破壊兵器)などの拡散を防ぐためには重要な制裁案である。ただ北朝鮮(特に軍部)が猛烈に反発してくることは間違いない。

それにしても不思議なのは、日本のメディアでは、昨日の核実験で北朝鮮は核弾頭の小型化に成功したという話しがあった。さらには2回目の核実験でノドンに小型核弾頭が搭載可能になったという。どうして昨日の核実験でそんなことが分かるか不思議である。

まだ核実験によって発生する空中の放射能物資も採取されていなので核実験さえも成功したとはいえない。今の段階で分かっていることは、地震波の測定から前回よりも爆発規模が大きかったというだけである。

3発の短距離ミサイルの発射は、地下核実験場から漏れた空中の核物質を採取するために、アメリカ軍などの大気測定機(WC135C)が実験場近くに飛来したのを追い払うためである。別の意図はない。

また核実験1時間前にアメリカや中国に北朝鮮は通報したというが、これは4月5日に打ち上げたテポドン2の場合と大違いで、テポドン2は数日前に国際機関に報告し、発射予定時刻や危険海面を通報している。1時間前の通告とは同列の対応ではないのだ。

それはなぜか。北朝鮮はテポドン2を発射したあと、金正日とミサイル関係者が並んだ記念写真を公開した。確か、あの記念写真の中に軍服の者はいなかった。まさにテポドン2(人工衛星)打ち上げは労働党が中心に行ったイベントだったのだ。だから異例とも思われるほど、打ち上げを国際社会に情報提供した。しかし人工衛星打ち上げは失敗した。

今回の核実験はあきらかに軍部の行ったもので、労働党は関与していないと思う。しかし軍部の暴走に労働党は危機感を持ち、国際世論の反発を避けるため、中国やアメリカに事前通報(1時間前)したのではないか。この1時間前通報には核実験を行った軍部は関与していないと思う。

これがテポドン2の打ち上げと、2回目の核実験の最大の違いである。

今、気になるのは北朝鮮の地下核実験が横穴方式で行われたことである。横穴式は掘削時の土砂の運搬(排出)に車両などが使える利点があるが、核爆発後は地下水脈を伝わって放射能が地上にしみ出る可能性が高い。今後、北朝鮮の住民が深刻な放射能被害を受ける危険が高くなった。

それから、昨日も強く感じたが、今朝の新聞各紙を読んでも、北朝鮮の指導部が混乱している気がしてならない。北朝鮮(金正日)流の謀略や脅迫であっても、深い思慮が全く感じないからだ。軍部と党が競争(対抗意識)を持ち、権力闘争を始めるような気がしてならない。もはや金正日には軍と党を従わす力はなくなったとしか思えない。

これから北朝鮮でどのような混乱が発生するのか。日本は油断なく注視して確かな対応に入る時期がきたようだ。



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