最新記事へリンク

所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamiura Motoaki
Military Analyst

English Column of This Month!VOICE OF Mr.KAMIURA

What's new

日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。(1999年11月)

2010.03.18

 拘束のタリバン幹部 アフガン政府と和平交渉中 台無し カルザイ大統領激怒 

カテゴリアフガン出典 朝日新聞 3月18日 朝刊 
記事の概要
パキスタン南部で拘束されたアフガン・タリバンのナンバー2のアブドル・ガニ・バラダル師が、拘束前にカルザイ大統領と和平について秘密裏に交渉していたことをアフガン高官が17日、明らかにした。

カルザイ大統領は拘束の報に激怒しているという。

バラダル師はタリバンの最高指導者オマル師に次ぐ幹部で、拘束は米国にとって大きな成果とされていた。

カルザイ大統領はバラダル師とはアフガン南部の同じ部族出身で、高官の話では、部族の長老の仲介で大統領の使者と数回。接触した。

バラダル師は政権との交渉に前向きで、和平の条件などになどについて話し合ったという。

高官は、「バラダル師は他のタリバン幹部には相談せず、独自の考えで我々と接触していたようだ」と話した。

しかし、その交渉中にパキスタンのカラチ郊外で車で移動中にパキスタン情報機関に捕まった。

パキスタンとアフガン両国はバラダル師の身柄をアフガンに引き渡す方向で合意しているが、高官は、「我々は米国とパキスタンによって、タリバンの交渉から遠ざけられていると感じている。パキスタンへの引き渡しを延ばすのでは」とい懸念を募らせている。
コメント
これが典型的な「情報心理戦」である。タリバンのナンバー2のバラダル師が和平交渉中だった」とタリバンを裏切ったような情報を流す。

目的の一つには、バラダル師に「タリバンに帰れば、裏切り者として処刑される」という心理的な圧力を加えるためである。

それ以上に、ナンバー2が秘密裏に和平交渉に応じていたという噂を広めることで、タリバン兵士の”闘争”士気を打ち砕く意味が込められている。

この記事を読んで、瞬時に「心理戦」と感じた方が多いと思う。日本のような国では”効き目”は薄いが、アフガンのように情報が少ない国では、”部族の長老の仲介”という言葉で信憑性が高められる。

もちろんこの心理戦はこれからもいろいろな脚色が施されていく。バラダル師がサインした和平合意書がメディアに流れたり、カルザイ大統領の側近と会談中のバラダル師の写真が公開されるだろう。(もちろん偽物)

心理戦とはそのようなものである。

それでもこの心理戦は、バラダル師の身柄を拘束している方が有利に展開する。タリバン側が反論してもすぐに打ち消される。

そのうちバラダル師の証言で、オマル師の居場所を特定したという話が出るかも知れない。アメリカにとってオマル師はタリバンとの和平合意を象徴する大事な身柄である。そう簡単に殺せないので、そのような証言を得ても公表されることはない。



関連記事