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2014.05.19

 奄美・宮古・石垣に陸自新部隊、各350人規模 離島攻撃に対処 

カテゴリ 福島原発事故 出典 読売新聞 5月19日 朝刊 
記事の概要
南西諸島の複数の島に、陸上自衛隊の駐屯地を新設し、離島攻撃に対処する新部隊を配備する方針であることが18日、明らかになった。

政府が想定するのは奄美大島(鹿児島県奄美市など)、宮古島(沖縄県宮古島市)、石垣島(同県石垣市)で、海洋進出を活発化させる中国を念頭に南西諸島防衛を強化するねらいがある。

新設するのは、離島への攻撃や大規模災害に対応する警備部隊で、2018年度までの配備を予定している。

国境離島の警備にあたっている長崎県の対馬警備隊を参考に、それぞれ350人規模を想定している。

攻撃が想定される離島に相手より先に上陸して情報収集にあたるほか、その後の部隊展開に備える。

奄美大島には武田良太防衛副大臣が今週中に訪れ、駐屯地建設のための共同調査を要請する。

沖縄県・尖閣諸島周辺の海域では、公船による領海侵入など、中国の活動が活発化している。

石垣、宮古の両島は尖閣諸島からそれぞれ約170キロ、約210キロと近く、防衛省は「西南諸島の要」(幹部)と位置づけるものの、奄美大島から日本最西端の与那国島(沖縄県)までな沖縄本島を除けば、陸自部隊が配備されていない「空白域」となっている。

このため、中期防衛整備計画は、南西諸島などなどについて、「部隊の態勢を強化。迅速な部隊展開に向けた機動展開訓練を実施」と明記。

15年度末までに空自那覇基地のF15戦闘機部隊(約20機)を倍増させるほか、与那国島に150名規模の陸自の沿岸監視隊を配備することにした。

空自那覇基地では今年4月から、早期警戒機(E2C)の警戒監視部隊の一部が常駐している。

中国は海洋進出に加え、血米軍事戦略として「第一列島線」「第2列島線」を設定するA2AD(※)を採用している。

第一列島線に接近する南西諸島での防空力強化について、防衛省幹部は「日米安全保障体制の強化の意味もある」としている。

※A2AD・・・@伊豆諸島から小笠原、グアムにいたる「第2列島線」内側への米軍の進出を妨げる(接近阻止) A九州南部から南西諸島、フィリピンにいたる「第1列島線」の大陸側に米軍を侵入させない(領域拒否)−−−中国の戦略。
コメント
陸自が沖縄復帰後も沖縄本島以外に部隊を配備しないために、この地域に軍事の空白が生じることはなかった。日米両軍は、そんなバカではない。

なぜなら沖縄本島から西の南西諸島は台湾有事に関連して、その防衛任務を在沖海兵隊が担っていたらからだ。自衛隊ではない。もし台湾有事が起これば、米海兵隊は石垣島や宮古島に展開し、その基地(主に飛行場と港湾)を活用して、米空軍や海軍が台湾有事に備えるためである。

また奄美諸島は朝鮮半島有事に関して、佐世保の米海軍艦艇と在沖海兵隊の機動部隊の航路帯として、これも米軍(主に海兵隊)が有事に展開する防衛戦略であった。(一部は陸自・自衛隊も緊急展開する)

だから米ソ冷戦時に、ソ連極東艦隊の潜水艦が対馬海峡を抜けて九州の西を南下して、奄美諸島の間を抜けて太平洋に出ていたが、あえてこれを米軍や自衛隊の対潜水艦潜水艦部隊が追跡をすることはなかった。それは朝鮮半島の有事に無関係であったからだ。

だから自衛隊が奄美大島と宮古・石垣の両島に陸自を配備することは、第一に在沖海兵隊が南西諸島の防衛任務を解除したため、軍事的な空白を作らないための措置である。(北朝鮮軍の弱体化と、中台間の緊張が緩和し、在沖海兵隊が撤退する予兆でもある)

これを具体的にいえば、在沖海兵隊の重大任務であった台湾有事と朝鮮半島有事に関する備えを解いたことになる。

だから陸上自衛隊が、その空白を担うことになったのである。

それで朝鮮半島に関する米軍のプレゼンスが縮小したわけではない。米軍は長距離・緊急展開能力を向上させることで、ハワイやグアム、それに米本土などから朝鮮半島に日本に駆け付ける能力を高め、朝鮮半島での抑止効果を高めている。

次に重要な点は、離島防衛というのは尖閣諸島を守るためではない。そもそも尖閣に中国軍が上陸するという仮説自体に無理がある。

奄美大島、宮古島、石垣島に陸自部隊を配備することは、東シナ海から西太平洋に進出できる中国海軍の海路を抑えることで、中国軍の危険な挑戦に対する抑止効果を高めるためである。

かつて極東ソ連軍の太平洋進出を、日本が宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡を封鎖する能力を持つことで、ソ連海軍に対する大きな抑止効果をアメリカ軍に提供したことと同じである。

尖閣に漁民に扮した中国軍が上陸してくるなどという”おとぎ話”ばかりをして、無責任にお茶を濁しているから真実が見えにくくなる。

東シナ海の中国海軍は沖縄本島と宮古島の間の海域を通過し西太平洋にでる航路を選ぶ。その海域の幅が広く、深いからである。

そのため中国軍は宮古島を占領して、自由な太平洋航路を確保したいが、宮古島を軍事的に確保するためには、まず石垣島を占領して、そこを橋頭保として軍事利用する必要がある。

また、日本としては、確実に宮古島を死守するためには、石垣島に部隊を配置して、側面から宮古島の部隊を援護できるように体制を固める必要がある。

以上が3島に陸自部隊を配備する軍事的な理由である。

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さらに付け加えるなら、陸自はこうでもしないと、南西諸島防衛では、空・海自衛隊に防衛予算を取られて、どんどんと陸自の割合が少なくなるという現実がある。

そんな点も、日本の防衛戦略では重要な意味を持っていることを理解すると分かりやすくなる。




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