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2013.06.22

 陸自の命令一元化 「陸上総隊」を検討 方面隊は維持、複雑化も 

カテゴリ自衛隊政策出典 朝日新聞 6月22日 朝刊 
記事の概要
防衛省は年内にまとめる新しい防衛大綱に「陸自総隊」の創設を盛り込むことを検討している。

陸上自衛隊の命令系統を一元化する組織で、中央即応集団(神奈川県相模原市)の改編で対応する。

一方、これとセットで検討してきた各地の「方面総監部」の廃止は見送られる見通し。かえって命令系統の伝達が複雑になる懸念もある。

陸自に対する命令は、北部、東北、東部、中部、西部の全国5区域の方面総監部にそれぞれ伝え、そこから各駐屯地の部隊に伝わる仕組み。

海自は自衛艦隊司令官、空自は航空総隊司令官に伝えれば済むため、陸自の命令系統を一元化すつころは懸案となっている。

自民党が今月まとめた新防衛大綱に向けた提言では陸自総隊の創設が盛り込まれ、防衛省は検討を本格化。

経費を抑えるため、テロ対応や国連平和維持活動を担う陸自中央即応集団を改編する調整に入った。

命令をよりスムーズに伝えるには5つの方面総監部の廃止がカギになるが、これには陸自制服組の反対が根強い。幹部ポストが減るうえ、東日本大震災を機に災害支援活動で現地の事情がよくわかる方面総監の指揮が欠かせないといういう主張を強めている。

また、駐屯地の隊員が減らされかねないとして、自治体からも方面総監部の存在を望む声がある。

新防衛大綱への提言をめぐる自民党国防部会での議論では、地元の声を意識する若手から「方面総監部には頑張ってもらわないと」といった意見が相次いだ。

安倍首相は「防衛大綱見直しによる自衛隊の対応能力向上」を掲げる。

背広組(文官)の幹部は「方面総監部はそのまま陸自総隊を置くなら、陸自の意思決定が遅くなるだけ」と指摘している。
コメント
自衛隊の組織に疎い人は、陸上自衛隊の各部隊に命令を出すのは陸上幕僚監部と思っている人がいるだろう。

実は各部隊に命令を出すのは5つの各方面隊の総監なのである。陸上幕僚監部(市ヶ谷)の主な役割は防衛大臣の補佐(助言)である。陸自部隊の実動は、防衛大臣から方面総監に命令されて、方面総監の命令を受けて各部隊が動き出す。

例えば、東日本大震災の場合でも、陸自の場合は、災害派遣(出動)は内閣総理大臣・防衛大臣・5つの方面総監・各部隊という順に行われた。

そこで新たな命令系統として、陸自に陸上総隊という司令部を創設し、防衛大臣の命令は陸自総隊が受け、全国の各部隊に実動命令ができるようにするという改革案である。

あくまで5つの方面総監部を廃止して、あらたに陸自総隊を創設するというのが改革案のポイントである。

しかし、それでは将官ポストなどの数が減るのは困るという。また、地元に精通した総監部は大災害に有効だという。そんな発想では未来の陸自は成り立たない。

だったら陸自総隊を創設する必要はないのと同じだ。逆に、防衛大臣の命令を陸上総隊が受け、陸上総隊から各方面総監部に回すという簡素化とは反対の意味になる。改悪である。

自民党の若い政治家が、地元に総監部を残せというのは、あくまで選挙対策が目的で、自衛隊は票になると思っているからである。

陸自で将官の椅子を確保したいなら、本当に必要な新設ポストを考えるべきで、例えば九州に第2ヘリ団を創設するとか、陸海空共同の作戦司令部(司令部のみ)を検討するなど、陸自がやるべきことは山ほどある。

そういった個々の欲望で、今までに陸上自衛隊を改革することを遅らせてきた経緯がある。

これからは陸自も無人偵察機や精密誘導兵器などが、戦場で活躍する時代になる。クラウゼビッツの時代ではない。自衛隊員の人数は減っても、陸自は高性能兵器を配備する必要性が高まる。(数の論理は通用しなくなる)

日本の防衛力を向上させるためには、陸自の各方面総監部の廃止は必然である。なぜなら、これからは陸自は高度に機動化され、北海道の部隊を数日後には九州に展開させる時代である。

陸自は、もっと未来を考えた組織の改革を考えるべきだ。




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