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2012.12.02

 北朝鮮:発射予告受け 日本政府は破壊準備命令へ 

カテゴリ日本政府出典 毎日新聞 12月2日 朝刊 
記事の概要
野田佳彦首相は1日夜の関係閣僚会議後、公邸前で記者団に「安保理の決議や議長声明に反するもので、仮に発射が強行されたら極めて遺憾だ。断固とした対応を取らざるを得ない」と語った。

日朝協議の延期については「諸般の事情を総合的に勘案すれば開催は困難ではないかと考えた」とした。

野田首相は関係省庁に▽情報収集と分析に万全を期す▽米韓など関係国と連携し発射しないよう強く自制を求める▽不測の事態に備え国民の安心・安全の確保に万全を期す−−ことを指示した。

一方、森本敏防衛相は1日夜に開いた防衛会議後、政府が今週中に安全保障会議を開き、破壊措置命令を出すことを決めるとの見通しを記者団に明らかにした。

森本氏は「前回とおおむね同じ方角、弾道を経由すると考えられる。わが方の態勢もおおむね同様だ」と述べ、北朝鮮が4月に発射した前回と同様の態勢を取る考えを示した。

政府は前回、沖縄や東京に地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC3)を展開したほか、海上配備型迎撃ミサイルSM3を搭載したイージス艦を沖縄周辺海域に配置した。
コメント
私のツイッターで「また、虚しい自衛隊の対北朝鮮ミサイル防衛(MD)騒動が始まる。・・・」と書いたら、「こんな時に自衛隊が出動しなくてどうする」というお叱りのメールが届いた。

本当は、自衛隊も国民の不安を取り除くために活躍したいのだが、北朝鮮のテポドンには自衛隊のMDは役にたたないのである。まったくの気休め程度にしかならないから虚しいのである。

テポドンには自衛隊のMDが役に立たないことを承知で、日本政府や防衛相は「破壊命令」を発令してることを自衛隊員は知っている。

政治家が1兆円もかけて購入したMD兵器が、まったく役に立たないことを隠すために虚しい破壊命令を出しているだけである。

なぜ役に立たないかということは、すでにこのHPで何度も説明している。

北朝鮮が09年に東の太平洋に向けてテポドンを打ち上げたとき、自衛隊は日本海にイージス艦(SM3)を配備し、岩手県に空自のPAC3を機動配備させた。

今年4月のテポドン発射予告でも、東シナ海に海自のイージス艦(SM3)を配備して、沖縄本島と石垣島に空自のPAC3を機動配備させている。

しかし、いずれも役に立たない虚しい配備だったのだ。

その理由をもっとも簡単に説明しよう。まず海自のイージス艦のSM3では北の長距離弾道ミサイル(テポドン)の飛翔高度まで届かないのである。公表されていないが、SM3の射程が500キロ前後と言われている。SM3が迎撃するテポドンのミッドコース(中間飛翔コース)での高度は1000キロ以上※と推測されている。届かないのである。

そこで苦し紛れに考えた言い訳(ウソ)が、テポドンが打ち上げに失敗して、バラバラに分解しながら地上に落下した時に、地上で被害が出ないようにMDで迎撃するという無茶苦茶な論理である。

地上のPAC3もその論理で配備されている。北朝鮮が南に向けてテポドンを発射すれば、東シナ海や沖縄に届くまでには大気圏外に出て、加速に失敗して大気圏内に再突入することになる。

テポドンは大気との摩擦熱でバラバラになりながら燃えて落下してくる。そこを射程20キロのPAC3が真下から迎撃するという。テポドンが分解すれば、それを迎撃しても地上の被害を避けることにならない。

その程度の単純なことを政府は国民に説明しようとしていない。騙しているのだ。

今日の説明はこれくらいにするが、今回は選挙もあることだし、破壊命令を出した日本政府や、自衛隊にMDを導入した自民党の石破幹事長(導入決定時の防衛相)の説明をよく聞きたい。

政治家のこの程度の軍事知識では普天間問題を解決することなど出来ないことが証明されると思う。

※自衛隊のMDシステムは射程が1300キロ程度の短・中距離弾道ミサイルのノドン・ミサイルを対象に開発されたもので、テポドンのような長射程弾道ミサイルの迎撃を想定していない。それは現在、日米で開発中のSAM3ブロックUAである。

※この部分の記述を最初2000キロ〜4000キロと記述しましたが、読者の方のご指摘で誤りとわかりました。私が間違えた根拠は、09年4月に北朝鮮が東に向かって打ち上げた人工衛星(テポドン2)が日本の東北地方を通過した高度を約3000キロと誤って認識していたからです。

正確には防衛省が発表したデータでは高度が数百キロとなっていました。これは3段式のロケットの2段部分が噴射中のものです。あの時は3段目の噴射が確認されていますので、訂正して高度が1000キロ以上に改めます。間違えて申し訳ありませんでした。

また北朝鮮は日本のミサイル防衛に対抗したためか、ノドンの代わりにより高度が高く取れる中距離弾道ミサイル「ムスダン」を配備しています。




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