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2012.10.29

 陸自に「海兵隊化構想」 水陸両用車購入へ 島争奪戦には懐疑的 省内に疑問視も 

カテゴリ自衛隊出典 朝日新聞 10月28日 朝刊 
記事の概要
陸上自衛隊に上陸作戦を担う「海兵隊」の機能を持たせようとする構想が進んでいる。尖閣諸島をめぐる日中の緊張も構想を後押しする。ただ、島の争奪戦は現実味に乏しく、防衛省内にも疑問の声がある。

陸自は9月、米領グアムで敵に奪われた島を奪還する訓練を実施し、米海兵隊から上陸のノウハウを学んだ。自民党の総裁選では「日本にも海兵隊が必要だ」という主張が語られた。

敵の反撃を受けやすい上陸作戦は軍事上、危険な任務とされている。「専守防衛」を掲げる自衛隊では長く不要のものとされてきた。中国を強く意識した防衛大綱や中期防衛力整備計画にも海兵隊創設につながる記述はない。

陸自が根拠にするのは、「南西諸島防衛」。離島を守るには「海兵隊的な機能を担える装備や訓練の準備を進める必要がある」(君塚陸幕長)という理屈だ。

陸自にはすでに02年に編成された離島防衛を目的にした西部方面普通科連隊(佐世保市)がある。少人数で秘密裏に潜入して偵察や戦闘訓練を積んできたが、本格的な上陸作戦までは想定していない。

陸自幹部は「奪われたら米軍頼みではなく、領土は自分で守るという意思と能力をみせることが抑止力になる」と力説する。

陸自は来年度、上陸作戦に使える水陸両用車4両を約25億円で新規購入する予定だ。米海兵隊と同じ「AAV7」が有力候補。当面は研究用で、導入の規模などを検討している。

ただ、水陸両用車は大型艦艇に搭載され、沖合から陸地に向けて発進する。

海自にはエアクッション型揚陸艇(LCAC)を運用できる輸送艦が3隻あるが、水陸両用車を運用できるようにするには、大がかりな改修が必要だ。

新たな輸送艦をつくる選択肢もあるが、海自には「ほかの護衛艦の予算を削ってまで増やすのは難しい」との声も強い。

自衛隊内に「ヘリや潜水艦で特殊部隊を投入するやり方が、時速10キロ強でしか航行できない水陸両用車寄りも現実的」との指摘もある。

ある防衛省幹部は「そもそも離島で陸上戦力がぶつかり合う場面が想像しにくい」と懐疑的だ。

海上と航空の優勢を維持すれば、補給路を断たれかねない離島に敵が攻めてくることは考えにくいからだ。

冷戦時代、陸自は旧ソ連軍の北海道侵略に備え、野戦を想定した装備を整えてきた。代表格は戦車で最盛期に1200両あった。今は約760両。2020年頃には400両まで減らされる。

軍事評論家の前田哲男さんは「陸自も新たな出番を見つけないと、発言力も低下しかねない。尖閣諸島をめぐる緊張という追い風の中で活路を見いだそうとしているのだろう」と話す。
コメント
私も前田さんの意見と同じだが、前田さんの「尖閣問題を追い風にして陸自の存在意義を高めたい意図」という考えを。ここでもっと深化させたい。

というのは自衛隊に海兵隊を作るという考えには、そもそも無理がある。石破氏が自民党総裁選で「海兵隊を作る」と公言したが、いつもの軍事オタクの妄想である。

西部普通科連隊を水陸両用連隊とすることはできる。しかし自衛隊の陸海空部隊とは別に、海兵隊を作るという考えは米海兵隊の歴史と現実を知らなすぎる。

ちょうど日本にアメリカ政府のNSC(国家安全保障会議)版を作るという発想と同じで、あまりにも現実を見ていない考えだ。米NSCの歴史と実態をまったく知らない。

また、中国がアメリカのステルス機のスタイルだけを真似た戦闘機を作り、通常のエンジンを搭載して飛行させると同じ程度の知的水準である。

今や米海兵隊はアフガンやイラク戦争で、米陸軍や州兵と同じような作戦を担っている。昔ながらの海兵隊らしい任務は皆無である。

その理由は、米海軍と米空軍の戦力が圧倒的に強く、それに米軍には特殊部隊が充実しているからだ。さらにトマホークやJDAMなどの精密誘導兵器が登場したことも特殊部隊の活躍範囲を拡大させている。

海兵隊が自前の戦闘機や戦車に戦闘装甲車、それに武装ヘリなどを配備した海兵隊が数千人〜数万人規模で戦う戦場は想像しにくい。

だからこの海兵隊構想は君塚陸幕長が辞任すれば消える。君塚陸幕長は陸自が中央即応集団を新編成したように、自分の代に海兵隊構想をぶち上げたい希望があったと思う。本人には申し訳ないが、今回は君塚幕僚長の取り巻きがよくなかった。

それに軍事オタクの石破氏の妄想などに付き合ってはだめである。石破氏はミサイル防衛(MD)導入の2匹目のドジョウを狙っているだけである。自衛隊に不要な海兵隊を作って、そこに1兆円以上の予算をつけ、使い物にならないMDのように海兵隊で2匹目のドジョウを狙っている。

まあ、このあたりの事情は自衛隊で軍事を学んだものなら誰でもわかる話しである。

今は日本に海兵隊を新たに創設するような時代(軍事環境)ではない。




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