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2009.07.10

 サイバー攻撃 韓国で3次被害 「黒幕」は追求困難 

カテゴリ北朝鮮出典 朝日新聞 7月10日 朝刊 
記事の概要
米韓の政府機関などのコンピューターがサイバー攻撃を受けている問題で、韓国では9日夕から、銀行など国内7機関のうちの一部でウェブサイトへの接続が再び困難になった。

韓国政府は7日、8日に続く第3次のハッカー攻撃とみている。米国ではホワイトハウス、国防総省、国務省などに被害が出ているという。

韓国国家情報院は7日の攻撃に使われたプログラムを分析し、米韓両国の攻撃用に作られたものと確認。背後に北朝鮮か親北勢力がいるとみている。

攻撃する側は、事前に遠隔操作でロボットのように操れるする不正なソフトを忍び込ませ、特定のタイミングで一斉に攻撃対象に閲覧要求を出すように操作する。

このため、攻撃してくる「ロボット」の所在がわかっても、背後で操る「黒幕」までたどり着くことは難しい。

韓国政府は9日、サイバー攻撃を防ぐための設備拡充や関連法の整備など対策案をまとめた。
コメント
これはテロ問題を考える上で貴重な教材になると思う。なぜなら今回のサイバー攻撃を北朝鮮のサイバー・テロと位置づけることが出来ないという特徴を明らかに示しているからである。

テロというのは政治的な要求を満たす闘争手段である。そのためテロには明らかな政治メッセージと実行者の証明が必要である。

例えば、旅客機を飛行中に爆破しても、それが事故なのか、自殺者(乗客)の犯行か、荷物に仕掛けた爆弾マニアの仕業か、あるいはテロなのか判断が出来ない様ではテロの目的を達成できない。

01年9月の米国同時テロでは、そのことを証明するため、出発地の空港の駐車場で放置されたレンタカーの中に、コーランと旅客機の操縦マニュアルを置き、実名でレンタカーを借り、アルカイダ・メンバーの仕業(テロ)であることを証明している。

乗客全員が死亡するような航空機テロでは、テロ犯の所在証明が絶対に必要になる。

今回のサイバー攻撃の場合、北朝鮮の国家機関の犯行か、韓国内の親北勢力の犯行か、あるいは国籍を特定できない愉快犯(ハッカー)なのか、その犯行者を断定できないとすれば、これをテロとさえ断定することができないのである。

このあたりの定義があいまいだと、北朝鮮の工作員が目的も不明に新幹線を爆破したり、大都市の地下街にサリンを散布するような架空の話しを生んでしまう。

今回のサイバー攻撃も、最終的に犯人を特定したら、韓国の普通の中学生一人が起こしていた事件という信じられない様な可能性もあるのだ。

もう30年ぐらい前になるが、米国防総省のコンピューターに侵入したハッカー事件をアメリカで取材したことがある。その犯人はロサンゼルスに住む普通の高校生(マニア)だった。

この事件は地元週刊誌「カリフォルニア」に掲載され、その記事の翻訳が日本の月刊文春誌に掲載されたことを覚えている。その月刊文春が使っている高校生(ハッカー)の写真は私がインタビュー時に撮影したものである。

テロとは政治的目的をもった闘争手段の一つであることを忘れずに。軍事ではこれを低烈度の戦争(LIW)とよぶ。今回のサイバー攻撃が北朝鮮によるテロと認定されれば、LIWで初のサイバー攻撃となる。



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