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所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamiura Motoaki
Military Analyst

English Column of This Month!VOICE OF Mr.KAMIURA

Re:メールにお返事

日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。(1999年11月)

2010.05.26

 在沖海兵隊の役割に関する質問です 

届いたメール
神浦さん、こんにちは

私は、直近では3月31日に「メールで情報と感想」でコメントを頂いたものです。

今回も沖縄の基地負担軽減の観点より、普天間基地移設問題について質問させて頂きます。(以下、1と2は海兵隊の県外移設について、3と4は神浦さんのご提案についての質問です。)コメントを頂けると幸いです。

1、沖縄など南西諸島以外の日本列島は、ほぼ朝鮮半島を中心とした弧を描く様に広がっています。海兵隊の駐留が朝鮮半島への緊急対応のためであれば、在沖海兵隊を(必要ならば一体的に)本土へ移転した方がより良いということにならないのでしょうか。

2、アメリカ側は、航空部隊と陸上部隊が一緒にいる必要性を主張するのに、なぜ輸送手段としての強襲揚陸艦が佐世保基地にある現状を問題にしないのでしょうか。(この件については田岡俊次さんも指摘されています。http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-155766-storytopic-3.html(琉球新報1月17日))
 先遣隊のみ飛行で急行し、残りの本体を海上輸送する時は急がないので離れていて良いという意味なのでしょうか。そうであれば、先遣隊以外の本体の方はどこに配置しても良いということにならないのでしょうか。

3、神浦さんの嘉手納弾薬庫跡地に海兵隊用の滑走路を建設するというご提案(2010年4月「所長ご挨拶」ほか)では、嘉手納町の狭隘な市街地は嘉手納基地と海兵隊基地との航空基地に囲まれてしまいます。これでは嘉手納町としては街自体の死活問題で、絶対に受け入れられず、辺野古移設同様に実現性が低いのではないでしょうか。

4、神浦さんは、平時は嘉手納基地の警備を自衛隊が行い、有事のみ海兵隊が飛来して警備するようになると述べておられます(5月19日「メールで情報と感想」のコメント)が、どの程度の部隊が飛来して来る必要があるのでしょうか。また、その分に限り海兵隊の駐留を残し、あるいは自衛隊の増備で賄い、海兵隊航空基地の県内移設を回避するといった選択肢は考えられないのでしょうか。

普天間基地の県外移設という沖縄の人々の要求は、在沖米軍→在沖海兵隊→普天間基地というように、今まであまりにも現実が動かなかったために、既に絞りに絞り込んだ上での最低限の要求であることをご理解頂き、その最低限だけは何としても解決する方向で考えて頂きたいと思います。

在沖米軍基地の問題をめぐる神浦さんの主張に、賛同出来る部分と賛同しかねる部分とはありますが、以前より興味深く拝見しております。おかげさまで、まったくの素人ではありますが、取っ付きにくい軍事関係の本や報道記事などが、以前よりは少しずつ理解出来る様になってきていると感謝しております。
コメント
さっそく本題に入ります。

(1)に関していえば、海兵隊は以前は本土にいました。朝鮮戦争が休戦となり、日本の御殿場(静岡県)と岐阜県に海兵隊が撤退してきました。しかし1950年代後半になると全国で米軍基地反対運動が起こり、海兵隊は米軍が統治する沖縄に移転していったにです。

当時も海兵隊が統一運用できる広大な軍用地は本土にはありませんでした。

また、沖縄に海兵隊を駐留させる軍事的な意味も変質しています。現在では沖縄にいるよりグアムにいたほうが、全アジアからアフリカまでカバーする海兵隊の性格にあっています。

本日、早朝のラジオ放送(ニッポン放送)で、「海兵隊は救急車のようなものです。しかし救急車を100台集めても総合病院にはなりません」と話しました。陸海空軍が総合病院という意味です。

抑止力という言葉を使う時は考えてもらいたい例えです。

(2)の佐世保に揚陸艦を配備する理由ですが、これは艦艇のメンテナンスと関連しています。艦艇は意外とメンテナンスが大変で、沖縄には揚陸艦を修理・点検できる施設がありません。だから佐世保に海兵隊の艦艇(海軍)が待機しています。

将来、グアムに移転した揚陸艦が、佐世保の造船所でメンテナンスを行うか、横須賀の造船所で行うか、どちらか選択しなければなりません。在グアム海兵隊が特に朝鮮半島出動を意識する必要がないなら、横須賀が選ばれる可能性が高いと思っています。

岩国の海兵隊航空部隊も北朝鮮が片づけば、さっさとグアムに移転するでしょう。そこに厚木の空母艦載機部隊が移駐してきます。

アメリカが求めている海兵隊の基地は、陸海空部隊を統一運用できる機能です。岩国基地には統合運用できる機能はありません。また、北朝鮮が片づけば、岩国に航空部隊を配置するメリットはありません。

(3)嘉手納弾薬庫を現状のままでは使えません。海兵隊の北部訓練場、キャンプ・シュワブ、辺野古弾薬庫を沖縄に返還する際、嘉手納弾薬庫の一部が海に通じるように土地の取得を行い、一般道路を地下道にするなどの工事が必要になると思います。
 既存の基地に手を付けないという訳ではありません。そのあたりの話は地元をまじえて話し合えばいいと思います。事故や騒音を減少させる基地のあり方をです。

(4)ですが、キャンプ・ハンセンは陸上自衛隊が移駐してきて、有事には海兵隊が嘉手納警備の支援に駆けつけます。しかしこれは海兵隊の辺野古沿岸新基地を自衛隊と共用することとは訳が違います。
 辺野古沿岸新基地は、キャンプ・シュワブ、北部訓練場、辺野古弾薬庫がセットになった一体運用ができる機能を持っています。それを自衛隊が共用するという構図になります。
 しかしキャンプ・ハンセンの自衛隊基地に、海兵隊が来ても、北部訓練場やキャンプ・シュワブは地元に返還されて、海兵隊が統一運用できる機能はありません。今の岩国基地と一緒で、あくまで海兵隊の一部の機能を運用するだけです。

私の案は、沖縄を防衛するのは基本的に自衛隊と考えています。しかしアメリカが今の沖縄に求めているのは第2グアム基地で、海兵隊を統一運用できる広大な基地を求めています。ですからキャンプ・シュワブや北部訓練場、それに辺野古弾薬庫がセットになった海兵隊基地なのです。

これはアメリカが北朝鮮崩壊後を考えた新たな戦略の海兵隊基地です。しかし日本側は今も15年期限説が出るように、北朝鮮崩壊までのものと意識しています。このあたりの考えのズレを修正する必要があります。

いっぱい書いてもわからなくなります。また機会をみて、質問してください。まだまだ時間がかかります。次は北朝鮮が崩壊した時に大きなチャンスが出てくると思います。

最後に、嘉手納基地からも米空軍が基地を残して撤退することを忘れないでください。将来の嘉手納基地には、那覇基地の空自(F15部隊)と海自(P3C部隊)が移駐します。

地元と共存できる基地を考えていくチャンスです。沖縄の繁栄と平和はこれしかないものを考えましょう。
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