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    この情報の最も新しい更新日は12月31日(土)です。

スイス最高裁

元露原子力相の

本国送還を決定

(毎日 12月31日 朝刊)

[概要スイスの最高裁は29日、スイスに拘束されているロシアのアダモフ元原子力相をロシアに送還することを決定した。ロシア政府は原子力事情の機密事情を知るアダモフ氏に関して、自国への身柄引き渡しを強く求めていた。アダモフ氏は米政府がロシア核施設の安全改善のために、93年〜03年に拠出した900万ドルを横領したとして、米司法当局から国際手配され、スイスのペルンで今年5月に身柄拘束されていた。スイス当局は当初、アダモフ氏をアメリカに身柄を引き渡す方針だった。

[コメント]スイス政府がアメリカに身柄を引き渡すと報じられたとき、このホームページでロシアの核事情がアメリカに筒抜けになると書いた。しかしその後、アダモフ氏の情報が途絶えたので気にしていた。アダモフ氏はロシアの国内事情ばかりか、ロシアがイランに行っている原発施設建設の裏事情にも通じていたからだ。ロシアが必死でアダモフ氏の引き渡しを求めていたのは容易に推測できる。最悪の場合は、ロシア情報機関によるアダモフ氏の暗殺も予測していた。

 ともあれ結果的に身柄はロシアに送還される。ロシアで簡単な取り調べを受けた後に、アダモフ氏は最悪の事態が襲うだろう。他のロシア人科学者に対する見せしめのためである。

 まあハリウッドのスパイ映画なら、ここで最後のどんでん返しとして、アメリカのCIAがスイスからアダモフ氏の身柄を強奪して、アダモフ氏からイランの機密情報を得てハッピーエンドとなる。奪還する時と場所は、アダモフ氏の身柄がスイス側からロシア側に移された直後である。

 まあ、現実的な疑問として、スイスの最高裁がアダモフ氏の身柄をアメリカからロシアに移す決定を変更した理由である。もしこのあたりの事情をヨーロッパに新聞などが報じていれば教えて頂きたい。

※ 今日で2005年が終わる。今年もいろいろあったが兎に角も年越しである。皆さん、本当に今年1年ご苦労様でした。そしてお世話になりました。来年もいい年になるように祈っています。

 来年もよろしくお願いします。

 これからお風呂と台所を大掃除(私の担当)して、夕方には手巻き寿司で夕食にです。深夜の11時頃に年越しそばを食べて就寝します。目が覚めれば、新春の朝がきます。

 皆さんのご多幸をお祈りします。よいお年をお迎えください。

          ありがとうございました

                                        12月31日 大晦日

1975年英機密文書公開

「日本は3ヶ月以内に

核武装可能」?

科技庁課長発言で大騒ぎ

(読売 12月30日 朝刊)

[概要29日に公開された英機密公文書「日本の核潜在能力」によると、1975年(昭和50年)、日本の科学技術庁(当時)の原子力担当課長が在京の英国大使館に、「日本は3ヶ月以内に核兵器の製造が可能」と語り、英政府が一時大騒ぎになったことがわかった。この課長は核兵器搭載については「複数の装置を製造できる」と示唆した。また韓国についても「2年以内に核武装できる」と説明したという。英公電では、「もし事実なら、日本はすでに核兵器の綿密な設計図、重要部品を作れる特別な機械、プルトニュームの抽出技術を持っている」と分析している。

 この情報を受けて英外務省は日本の核能力の調査を指示し、半月後に「日本は中国やソ連への抑止力として核兵器の製造に着手できるが、現在の日本の外交政策や、核物質を安定的に確保できないので、核武装化は考えられない」と評価している。しかし当時は日本の核武装が国際的に警戒されていたことをうかがわせる。

[コメント]この記事では年代を公表し、当時の科技庁の原子力課長と特定しているので、ちょっと捕捉説明をしないと大騒ぎになる可能性がある。この核兵器開発の調査を指示したのは中曽根氏である。中曽根氏は昭和45年(1970年)に防衛庁長官に就任している。中曽根氏は長官就任直後に、極秘に日本の核兵器製造能力を調査させた。調査に費やした時間は1年程度ではなかったか。結果、確かに原料や製造技術は可能と判断された。しかし核実験場が確保出来ないことと、日本人の核兵器嫌悪から核武装は出来ないと結論が出たと聞いている。(そのあたりのことは中曽根氏が昨年(2004年)に出版した自著「自省録」に書いてある)。

 それから4年後にこの課長は英国大使館員に話したことになる。だから課長はこの情報に関して機密意識は薄く、また日本が核武装を否定したことから英大使館員に話したのではないか。それにしても英国政府の大慌てぶりが面白い。

 とにかく日本の核武装については、単に技術論だけではなく、安定的に核武装体制を継続できるかとか、国際世論や軍事的な外圧に耐えられるかという点も重要である。また非核政策も、国民の核戦争嫌悪感だけに頼るほど危険なことはない。論理的な非核論を日本から世界に発信することが大事である。

中国海軍

露の新鋭駆逐艦を導入

(産経 12月29日 朝刊)

モスクワ 時事

[概要タス通信によると、中国がロシアに発注していたソブレメンヌイ級新鋭駆逐艦がサンクトペテルブルクの造船所で完成し、28日中国側に引き渡された。中国側はこれでソブレメンヌイ級駆逐艦は3隻目になる。4隻目も来年秋に引き渡される予定。この駆逐艦の価格は1隻7億ドル(805億円)。今回引き渡された駆逐艦は対艦巡航ミサイルを装備するなど、攻撃力が強化されている。中国は23日にロシアからキロ級ディーゼル潜水艦2隻を引き渡されたばかり。

[コメント]中国海軍は90年代に自国潜水艦と駆逐艦の自力開発に失敗した。そこで駆逐艦はロシアからソブレメンヌイ級を購入し、潜水艦はキロ級を購入している。だから国内生産している中国製潜水艦は性能が劣り、限定した作戦しか使えないと推測されている。最近の軍事専門誌の中では、ロシア製のキロ級と中国製潜水艦を同列に扱う記事を多く見る。ちょっと違和感を覚えてしまう。

 中国海軍はしキロ級は4隻+8隻で合計12隻体制をとることが確実だ。ソブレメンヌイ級駆逐艦は4隻という隻数が推測されてる。この中国海軍の新戦力で台湾は米空母の行動圏(艦船)から除外されたといえる。しかし空母艦載機や日本の対潜部隊(海自)が、その圏内の海域をパトロールすることは不可能ではない。それに対しては、新たにロシア軍の超音速攻撃機のバックファイアーを購入し、陸上基地から沿海に向かい航空攻撃を強化する作戦を検討している。

 だがそのように水中(ディーゼル潜水艦)、水上(ミサイル駆逐艦)、空中(バックファイアー攻撃機)といった立体的な作戦を実現するためには、短くともあと20年はかかることは間違いない。しかし日米の軍事水準ではその程度は今でも現実している。そこで日米の軍事能力がさらに20年後に、どこまで強化されているかは想像できないほど技術分野の進展が著しい。

 日米は探知できないステルス攻撃機やステルス駆逐艦、長射程超音速の対艦巡航ミサイル、無人化された攻撃潜水艦、無人偵察機と情報ネットワークの接合などを現実化させ、中国軍は気が遠くなりそうな脅威を体験すると思う。だから中国軍は無理な軍拡競争には出てこない。中国政府は軍拡競争でアメリカに敗れたソ連軍を教訓にしているからだ。

 ここまではわかっている。その上で、中国軍は何をどのように動かすか。誤報、誤認、過剰といった軍事見積もりをしないで、冷静に中国軍と向き合う姿勢が大事と思う。

北の核保有宣言に

韓国大統領激怒

 「宥和策放棄だ」

側近反対で見送りに

(読売 12月27日 朝刊)

[概要今年2月に北朝鮮が「核保有宣言」をした際、韓国の盧武鉉大統領は対北朝鮮融和策の放棄を検討していたと、26日付の朝鮮日報が報じた。盧武鉉大統領は核保有宣言に対し、「米韓同盟に亀裂が入るのではという非難を押しのけて好意的に接していたのに、水を差すとは」と激高。さらに北朝鮮政策の全面転換宣言と、国民に南北融和の期待を抱かせたことに対する謝罪を側近らに打診した。しかし側近らは「まだ時期ではない」といさめたため、宣言発表は見送られたという。その後、盧武鉉大統領はすぐに対北融和政策に戻り、経済支援を拡大し、8月には南北共同行事を開くなどの交流を進めていった。

[コメント]側近がどのようにいさめたかと想像すれば、「北は『核保有宣言』を行い『核兵器保有宣言』を行ったわけではない」と言ったと思う。これこそ北朝鮮が相手国(アメリカ)を挑発しながら、有利な条件で援助を引き出す伝統的な手口(外交)だと説明したと思う。それにまんまとのった盧武鉉大統領は自分の激高を恥じたのではないか。

 しかし大統領側近はこの出来事を北側に話しと思う。北に伝えることで、本当に北朝鮮が核武装した場合に、韓国は融和策の転換を行うことを通告したのだ。それを聞いて、逆に北側は震え上がることになる。韓国が北朝鮮への経済支援を中止すれば、北朝鮮は中国に呑み込まれるしか道がなくなるからだ。北朝鮮は昔、ソ連と中国を天秤で操りながら、自分への援助を維持拡大させていた。今、北朝鮮が天秤にかけているのは中国と韓国である。その片方である韓国が降りれば天秤の役割はできない。それを北朝鮮は恐れたのである。

 いくつかの忘年会で、「北朝鮮は本当に核兵器を持っているのか」と質問されることが多い。「とても北朝鮮に核兵器を持てるような体力はない」と答えることにしている。「北朝鮮は核弾頭を持っていない」。核兵器を持ちたくとも、持てる体力が北朝鮮にはない。

膨張中国 特別座談会

矛盾抱え続く成長

自信と不安の拡大

(読売 12月26日 朝刊)

[概要中国に関する見開き2面の特集記事である。高村正彦氏(元外務大臣)、小島朋之氏(慶応大総合政策学部長)、関志英氏(野村資本市場研究所 シニアフェロー)の3人が中国について話し合っている。中国の政治、経済、社会、軍事、外交など、現代中国が持つ将来の可能性や問題点などを討論している。非常に長文なので、小見出しだけを解説して概要とする。

 「膨張する中国経済はバブルである」(小島氏) 「今の社会主義体制からますます乖離するだろう」(関氏) 「中国の軍事は他国を侵略しない」(高村氏) 「中国には米国と並ぶ超大国への願望がある」(高村氏) 「胡錦涛政権の外交は調整型である」(小島氏) 「中国で民主化は避けられない」(関氏) 「反政府意識を招く『反日』意識」(小島氏) 「これからも日中関係の改善は難しい」(関氏) 「中国ではこれから疑似多党化が進む」(高村氏)

[コメント]先週の金曜日、娘のクリスマス・プレゼントに音楽CDを買いに行ったついでに、書店に寄って3冊の新書を買った。「米軍再編」(久江 雅彦著 講談社現代新書)、「中国激流」(興ろ 一郎著 岩波新書)、「中国経済のジレンマ」(関 志雄著 ちくま新書)の3冊だ。久しぶりに3冊共に面白かった。特に関氏の「中国経済・・・・」では、中国経済が2050年を待たず米国を抜いて世界一の経済大国になるという推測に興味があった。その関氏がこの座談会に参加している。逆に小島氏は中国の社会矛盾が拡大し、内部崩壊に突き進むという分析である。一見、互いが違う分析をしているように思えるが、実は非常に近い考えであると思った。要するに関氏は今の社会矛盾を克服して、中国はさらなる大国になるという。しかし小島氏はそれが中国に出来ないというわけである。要するに中国が深刻な社会矛盾を抱えていると点では共通しているのだ。

 果たして今の中国で都市と農村の経済格差のように、社会矛盾を解決する自己能力があるかという分岐点である。法治国家として法を整備し、社会主義から民主主義に転換し、警察や軍事力に頼らない政治を行い、効率的な社会インフラを整備できるかということだと思う。

 そのような疑問を解くため、特に最近は中国のことをもっと知りたいと思うようになった。また、多くの人が中国の軍事は不透明というが、私は以前と比べかなり軍事の全体像がつかめるようになってきたと思っている。例えば、よく中国の軍事費は公表額の3倍というが、公表額の3倍とわかっただけでもいい方だ。20年前はまったくわからなかった。駐屯地で牛や豚を飼い、お菓子の工場や縫製工場まで持ち、自給自足率が高かったからだ。

 今年8月に行われた中露合同軍事演習も、ロシアのメディアを通じて「中国軍の非効率ぶり」が明らかになった。この演習で公開された空挺部隊は、航空機から空挺降下(パラシュート降下)する空挺部隊と、地上戦闘で攻撃する空挺部隊と、最後にパレードする空挺部隊が別々に準備されていたという。当然ながらロシア軍の空挺部隊ならば、空挺降下から最後のパレードまで、1つの部隊が流れとして展示するのが普通である。しかし中国軍はシステム的に統制ができず、3つの空挺部隊で1つの流れを展示することしか出来なかったようだ。

 そのような意味で、中国軍は現状を公開することに躊躇(ためら)いがあると思う。要は中国軍を秘密にすることで神秘性を高め、相手に恐怖心を与える心理作戦なのである。

 はっきり言って、米軍や自衛隊の中国軍事情報の専門家を含めてだが、そのあたりのことはかなり的確に掴んでいる。しかし日本の政治家やメディアの中に、中国と親しすぎる者が多いため、詳しい説明や情報を公表をしないだけの話しである。どこまで実態を掴んでいるかを隠すのが情報戦のイロハであるからだ。

 ともかく軍事の世界で北朝鮮はすでに終わった。ほぼ北朝鮮軍の実態が明らかになったからだ。これからは中国軍の戦略と実態に世界の注目が集まることは確かである。個々の兵器や動きに目を奪われないで、総合的な評価をしなければ中国軍の姿は見えてこない。

ミサイル防衛(MD)

日米共同開発を決定

政府「武器輸出 厳格に管理」

武器輸出「なし崩し」懸念

ミサイル防衛開発

「第3国移転」も不透明

(毎日 12月24日 夕刊)

[概要政府は24日の安全保障会議と閣議で、ミサイル防衛(MD)システムの次世代迎撃ミサイルの日米共同開発へ来年度からの参加を正式に決めた。閣議後、官房長談話が発表され、「(開発する武器の対米技術は)厳格な管理の下に供与する」と表明した。具体的には来年4月にも米側と交換公文を交わし、米国に輸出される兵器部品が、第3国に渡る場合や、当初の目的以外に使用される場合は、日本の同意が条件になることを米側に確約させる。

 次世代の迎撃ミサイルは海上配備型(イージス艦搭載)のSM3を、直径34センチから53センチに大型化し、防衛範囲(射程)の拡大を目指すという。開発は15年ごろに終了する予定。

 ここで日本から米国に輸出された兵器技術は、例え日本の合意を得て第3国に移転されても、その後の移転は追跡できにくい。また日本のロケットモーターなどは他のミサイル技術への転用も可能で、「なし崩し」的に日本の武器輸出3原則が崩れることが懸念される。

[コメント]次世代の弾道弾迎撃ミサイルは射程を2倍にして、囮(おとり)などの偽弾頭にも対応できるという。しかし、そんな紙に描いた餅を信じることはできない。次世代MDでも対抗策はいくらでも考えることが出来る。また次世代MDはこれから開発するものだから、なんとでも高性能を誇示することができる。しかし過去の対弾道ミサイル防衛開発のように、結局、開発が中止された実例を無視するわけにはいかない。いつも最初は夢のような構想をぶち上げ、莫大な開発資金を投入させる。そして結局、開発に失敗して誰も責任を取らない。そのような歴史が何度も繰り返されてきた。

 そのようなMD開発費の奪い合いと、同時に問題になるのはも日本の民間技術が奪われることである。日本の軍事技術はアメリとは比べものにならないほど低い。しかし日本の民間技術でありながら軍事(兵器)に転用できて、アメリカの軍事技術より勝っているものは意外と多い。そのような民間技術をMDの共同開発を口実にアメリカに奪われる可能性が高いといえる。逆にある面で、アメリカはMD日米共同開発を、日本がアメリカの最新技術を盗むために仕組んだと考えている。だからアメリカは兵器部品の至るところで「ブッラクボックス」を作り、最新技術が日本に漏れることを防いでいる。しかし日本にはそのような技術防衛に関する認識がない。日本が「ブッラクボックス」を作ることなど、まったく日本側は想定していないだろう。だから昨日の官房長談話のように、「交換公文で確約」という曖昧な対応になってしまう。

 日本政府は兵器技術に関する国益保護という概念は薄いと思う。しかしMD共同開発で日本側の最先端技術がアメリカに奪われれば、日本の重要な国益を失うことになる。地下資源がない日本で、民間企業が持つ世界最先端技術は国の宝である。

 今後日本は、次世代MD開発費に06年から14年までの9年間で1170億円〜1400億円を分担する。これは開発費全体の約半分である。しかしその金額以上に日本が世界に誇る最先端技術をアメリカに奪われる可能性が高い。しかしアメリカは最先端技術が日本に盗まれないようにあらゆる場所に「ブッラクボックス」のカギをかけることは忘れない。

 次世代MDの日米共同開発には、そのような危険な罠が日本に仕掛けられていることも忘れないで欲しい。

イラク駐留米軍

13万1000人規模に縮小

米国防長官

ファルージャ訪れ発表

(読売 12月24日 朝刊)

[概要ラムズフェルド国防長官は23日、イラクのファルージャを電撃訪問し、現在16万人体制の駐留米軍を「06年の春までに13万8000人以下になる」と話し、年明けから兵力を削減することを明らかにした。ラムズフェルド国防長官はイラク国内の米陸軍17旅団のうち2個旅団をイラク外に再配備し、削減幅は約7000人(米国防総省)になるという。米軍は先にアフガニスタンの1万9000人を2500〜3000人削減すると発表している。米国内では特に州兵の派遣期間が長期化し、犠牲が多く出ていることから、えん戦気分が広がっている。イラクやアフガンで兵力削減を示すことで、イラク政策に対する理解を求める狙いがある。

[コメント]米政府はクリスマスの時点で撤退に関する重要な発表を行うのではないかと推測していた。その点ではまさにラムズフェルド長官のファルージャ演説が重要発表だったようだ。これが駐留米軍のイラク撤退の本格的な開始宣言として受け止めていいような気がする。しかし来年になって撤退するイラク駐留の外国軍を見て、反米勢力や宗派間闘争が勢いづくと米軍の撤退は難しくなる。だから半分本気で、のこりの半分は様子見といったところか。

 ところでサマワからの陸自撤退だが、最大の問題はだれが撤退の「しんがり」を勤めるかということだ。自衛隊がサマワから撤退するとき、恐いのは反米勢力よりも、自衛隊が宿営地に残す備品の略奪である。武器や車両や無線機などは兵員とともに引き上げるが、小型冷蔵庫やクーラーなどの日用品は宿営地に残すことになる。そのような備品を宿営地の自衛隊員の人数が少なくなると、付近の住民が略奪に来るという危険である。単に住民の略奪といっても、中には銃を持った者がいる可能性が高い。残った自衛隊員や略奪者同士が銃撃戦をおこす様な場合もある。

 本来なら、新政されたイラク軍と駐屯地で交代することが望ましいが、イラク軍にそのことを期待しても無駄なような気がする。彼ら自身が略奪者になる可能性があるからだ。

 そこで少しずつ地元にわからないようにサマワから撤退し、しかし宿営地には大部分が残っているように偽装する。そして最後は「しんがり」を勤めた部隊が、夜陰にまみれて一気にサマワを脱出(撤退)する作戦もある。そのような高度な撤退作戦を行える部隊は、あらかじめ日本で「しんがり」の訓練を繰り返し行うことが大事だ。

 私は戦闘行動で「しんがり」が最も難しい作戦と考えている。敵の包囲や追撃から味方本隊を避難させつつ、自らは撤退を行いながらも敵を威嚇・攻撃して、敵の追撃を断ち切る戦闘を行うからである。

 しかし住民の略奪を避けるために、意図的に宿営地の備品を地元に配布する方法もある。そのような硬軟両面のサマワ撤退作戦が検討されていると推測する。今はサマワの自衛隊が見事な撤退を行うことを期待している。危険でも現地で取材したいぐらいの気持ちだ。

復活折衝

陸自に対テロ組織設置も

中央即応集団の設置決まる

(産経 12月22日 朝刊)

[概要財務省と防衛庁は21日、18年度予算の原案で局長級の復活折衝を行った。防衛庁が要求していたテロやゲリラ攻撃に対処する陸自の「中央即応集団」設置が認められた。中央即応集団はテロやゲリラ攻撃に対処する特殊作戦群(千葉県・船橋市)や、国連平和維持活動になどに派遣される部隊の訓練にあたる国際活動教育隊などからなる。

[コメント]中央即応集団の司令部は米陸軍第1軍団司令部が移転してくるといわれる座間基地(神奈川県)に創立される予定だ。そして陸自としては初めて指揮官(陸将)に「司令官」という呼称が使われる。さらに米軍の相模原総合補給廠(神奈川県)に陸自の「東方普通科連隊」を新設することも検討されている。これは「西方普通科連隊」(佐世保・長崎県)と同じように、レインジャー経験者や空挺部隊の出身者を多く集めて創隊されそうだ。

 西方(九州・沖縄方面を担当)の普通科連隊といえば、このコーナーの12月16日付けで書いたように、対馬、奄美、沖縄、南西諸島など、離島防衛を任務にしている特殊部隊の色彩が濃い部隊である。新設される東方の普通科連隊は関東の首都圏を担当しているから、市街地戦闘を重視した任務を与えられると推測する。しかし首都圏には木更津(千葉県)に第1ヘリ団がいる。この機動力を使えば、空中機動で本州規模の展開も可能になる。さらにこの推測を広げていくと、北方(北海道)にも第3の北方普通科連隊を作り、こちらは輸送機を使って関東展開任務の特殊部隊を作ることも考えられる。(戦闘車両は輸送艦や民間のフェリーで輸送)

 これら各地の方面普通科連隊が座間の中央即応集団司令部で運用される可能性が高い。これこそが陸自の将来型戦闘システム(組織)と考える。

※陸自の方面隊には、北から、北部方面隊(札幌市・北海道)、東北方面隊(仙台市・東北地方)、東部方面隊(東京都練馬市・主に関東・甲信越地方)、中部方面隊(兵庫県伊丹市・主に中部、関西、中国、四国地方)、西部方面隊(熊本市・九州や奄美・沖縄諸島)の5つに分かれている。

18年度予算 財務省原案

官邸主導で強硬決着

財政健全化まだ遠く

防衛 ミサイル防衛重視

(産経 12月21日 朝刊)

[概要20日、18年度予算の財務省原案が提出された。防衛関係費は17年度当初予算比0.9パーセント減の4兆8137億円で、4年連続のマイナス。在日米軍再編に伴う経費は当初予算案から外す一方、沖縄の普天間飛行場の移転先となるキャンプ・シュワブ沿岸部の6施設で、地元説明に必要な施設現況調査費として3億三千万円を盛り込んだ。

 ミサイル・デフェンス(MD)では201億円の大幅増となる1400億円の関連経費を計上した。その中には来年度から本格配備を始める新型地上レーダーFPS−XXの1基分の整備費189億円がある。イージス艦搭載のスタンダードミサイル(SM3)の後継となるミサイル開発で初年度経費として30億円を盛り込んだ。

 在日米軍の思いやり予算は、来年3月に期限切れとなる特別協定を2年間延長したので、前年度並みの1387億円が認められたが、別枠の日米地位協定に基づく隊舎などの提供施設の整備費は過去最大の170億円の削減となった。

[コメント]米軍隊舎などの整備費が170億円減となったのは、米軍再編で在日米軍が日本から撤退をするので当然なことである。それに米軍の思いやり予算が延長されたことも、最初に日本政府の提供が始まった金丸元防衛庁長官時代を知るものとして複雑な気持ちである。当時はアメリカの経済が悪化し、米政府の財政難が報じられていた。同時に起きた日米の経済摩擦で日本が日米安保にただ乗りをして、日本が国防費にまわす分を産業育成に使っているとアメリカから非難された。それでアメリカの怒りを回避するために、金丸氏発案の「思いやり予算」が組まれたのである。当時の私の考えは、「思いやり予算」以前に、「日本は日米安保にただ乗り」という考えに反発していた。ただ乗りとは冗談ではないと思った。日本は戦争に負けたためにアメリカの占領で基地を提供させられ、アメリカに都合のいいように活用されていると思っていた。ベトナム戦争では日本という戦略拠点なくして、アメリカは東南アジアで戦争をすることはできなかった。

 今でもアメリカは中国、ロシア、朝鮮半島でプレゼンスを示すには、日本という米軍の軍事拠点無しには考えられない。日本が財政の健全化に苦しむ今こそ、アメリカは「思いやり予算」の返上を申込む時期と思う。

 それからMDにいては、私は今でもMDは「裸の王様」と考えている。MDが現実に有効的な兵器システムにはならないからだ。MDにはあまりにも多くの対抗手段がありすぎる。日本ではMDに北朝鮮のノドンを想定しているが、ノドンが地下サイロで発射準備を始めれば、事前に発射の兆候を捕らえることはできない。だから予想される迎撃海域(キルポイント)にイージス艦を配置することはできない。また対弾道ミサイルのパトリオットのPAC3も、迎撃範囲は広く見ても半径5キロ程度で、米軍基地を防衛するぐらいの性能しかない。関東防衛とか日本防衛にはほど遠い。それなら徹底的な報復力を持つことが弾道ミサイルの抑止に活用できる。自衛隊が整備すべき戦力はMDdさけではない。

 また北朝鮮が崩壊すれば、日本のMDは中国やロシアの中距離弾道ミサイル(MLBM)を迎撃できない。政府や防衛庁がいくら王様の服は豪華絢爛(ごうかけんらん)と言っても、私には裸の王様としか見えてこない。ちょうど大艦巨砲主義が終わっているのに、世界最大の戦艦「大和」を建造し、新たな航空勢力の攻撃に敗れた事例と同じである。平成の3大バカ予算にMD構想が挙げられることは間違いない。

 「裸の王様」の話しは過去の話ではない。現在進行形のMDこそ大人が豪華絢爛と信じて疑わない裸の王様の姿である。

「脱霞が関」進めるはずが・・・

動かぬ?

政党シンクタンク

不要論強く大幅縮小

資金難、シンポ程度

(朝日 12月20日 朝刊)

[概要政策立案での「脱官僚」を掲げて自民、民主両党が進めるシンクタンク構想だが、集めたい専門家が政党色を嫌うことや、資金面の不足から専任研究員を置かず、シンポジューム程度の「看板倒れ」を心配する声が出ている。自民党はシンクタンク構想を結党50周年の今年、党改革の目玉として設置が検討された。しかし党内には政策立案に各省庁に対応した政調部会があり、ベテラン議員は「屋上屋だ」「我が党はずっと与党で、本格的なものは必要ない」という声が強い。自民党では構想を縮小し、来春までに数テーマの研究を外部の民間機関に委託する。

 民主党も前原代表が掲げる「対案路線」を後押しするために、「公共政策プラットフォーム(略称・プラトン)」を立ち上げ、港区の雑居ビルに事務所を設けて、来年度予算として1億二千万円を計上する。当面は@外交・安全保障 A分権改革 B医療・教育分野でのコミュニティー・リソューション(地域の共助)  の分野で基本政策を検討する。シンクタンク理事の松井参院議員は、「霞が関に依存せず、現場や消費者の声を政策に反映させる」という。しかし党関係者は、年間1億二千万円の予算では足りず、政党色がつくのを嫌う学者も多いのが現状だという。当面は学識経験者や首長、官僚らを集め、定期的に勉強会を開く。ただし、その研究テーマも未定で、当面は外交・安全保障のシンポジュームを予定する程度だ。

[コメント]確かに専門家は特定の政治色を嫌うと思う。党利党略ならまだ許せるが、低俗な権力闘争や金権体質と混同されることに耐えられない嫌悪感がある。しかし政治は政治である。日本という国家をどこに進ませるかは、日本の政治家に重い責任がかかっていることも確かだ。

 だから強欲官僚や悪徳事業家は権力や予算で政治家を無能にしてきた。その腐敗体質は骨の髄までしみわたっているようだ。

 そのような構造を改める気がなければ、政党のシンクタンクを形だけ作っても意味はない。この記事を読むと、まだまだ日本には政党系のシンクタンクは無理のようである。

 しかしここで諦める訳にはいかない。政党系が無理なら、別のやり方を考えればいい。果たしてどのように動くか。これからヒマになる年末年始で考えてみたい。

、ウクライナ

兵器320億ドル分 紛失

戦術核250発も

調査委議会報告

(産経 12月19日 朝刊)

[概要旧ソ連邦のウクライナから1990年代に大量の兵器が外国に密輸された問題を調査するセンチェンコ議会調査委員長は、92年から5年間にウクライナの全兵器(当時)の36パーセントにあたる320億ドル相当の兵器が紛失したと報告した。密輸先としては内戦が続いていたボスニア・ヘルツュゴビナやクロアチアが挙げられ、この報告書には兵器の種類は明らかにされていないが、戦車、装甲車、砲撃システム、航空機、ヘリコプター、ミサイルなどと見られている。

 ウクライナに配備されていた戦略核兵器と戦術核兵器は米露両国の主導で、ロシアが一元管理することがウクライナ側と合意されていた。しかしセンチェンコ委員長はウクライナが引き渡した戦術核とロシアが受け取った数に250発の開きがあると指摘した。ロシアはこれまで移送された核管理は厳格に行われており、問題はないとの姿勢を示している。

 こうした不正取引はソ連邦崩壊後に誕生した新議会議員ら旧政権の官僚が深く関与していると指摘した上で、全容を知る立場にあったゴルブリン元国家安全安保会議書記兼国防相の証人喚問を求め、刑事捜査のために調査資料を検察当局に提出する意向を示した。

[コメント]兵器の輸出入には最終使用者(エンド・ユーザー)が、あくまで政府機関であることが書類上では重要な意味がある。ところがエンド・ユーザーが署名した書類がくせ者なのである。書類がニセものと言うわけではなく、書類も政府高官の署名も本物でも、密輸された兵器はヤミの世界を通じて国際兵器市場に流れていく。

 日本はそのような世界と無縁というかも知れないが、25年前に、私が追っていたものに香港の武器ヤミルートがあった。極東ロシアのソ連軍や中国軍からヤミ(国際援助を装うこともある)で兵器や弾薬を入手し、それを東南アジアなどの武装勢力に横流しする日本商社が香港に存在していた。香港の小さな日本商社は双方から紙(ペーパー)が行き来するだけで、密輸武器は無関係の貨物船や漁船を使って送られた。私はたまたまその商社が通信に使っていたパーパーを入手したことがある。そのペーパーには注文を受け、発送した兵器の名前と数量が記載されていた。しかしその中心人物の日本人は戦後右翼の大物で、日本の政界や財界に太い人脈を築いているといわれていた。その人物はすでに故人だが、あまりにも堂々とした武器の取引に驚いたことがある。(今はその商社は武器を扱っていないと思う)

 さてこのウクライナの調査で重要なのは、誰もが行方不明になった核弾頭250発だ。しかし私は次の2点でパニックになる必要はないと思う。それはまず、ウクライナ側で核弾頭の数を意図的に多く見積もり、引き渡し費用を多く受け取る工作をした可能性があるからだ。旧ソ連邦では数や量を多く申告し、その処理費用をアメリカや日本に多く負担さすことがよくあった。同じようにウクライナで多めの核弾頭を申告して、多額の協力費を外国から受け取った可能性が高い。だからウクライナの書類とロシアの書類を引き算するだけでは真相はわかならい。

 次の2点目は、さすがに核弾頭となると、武器の密輸業者とエンド・ユーザーは核兵器の入手に尻込みするからだ。昔、東南アジアに拳銃を買い付け(密輸)にきた日本のヤクザと話しをしたことがある。彼になぜ安い機関銃やRPG−7を買わないかと質問した。すると「そんなものに手を出せば組織を壊滅させられる」と話していた。あくまでヤクザは金儲けが主体で、武器を使った抗争はヤクザ・ビジネスの範囲内だという。そこで日本の警察が手出しができない機関銃や対戦車ロケットを使えば、組織全体が警察の集中攻撃を受けて壊滅させられるから入手はできないそうだ。それと同じように核弾頭となると、もし入手しようと図れば、国際的な情報機関の集中攻撃を受けることになる。それほど危なくては武器ビジネスとして成立しない。武器のヤミ市場の世界でも、アメリカやロシアや中国の情報機関を敵にまわすことはできないという、これはヤクザ世界と同じ論理が働いていることでもある。

 核弾頭の密輸を取り締まる情報機関の者には、あらゆる手段を使ってでも阻止することが許されていると考えていい。そこらの映画や小説よりも、核兵器の密輸をめぐる国際取り締まりは熾烈である。もし本当にゴルブリン元国防相が核弾頭の密輸を行っていれば、すでに残忍な殺され方をして生存している訳がない。

米政府検討

マレーシアに新基地

沖縄の負担軽減視野に

(琉球新報 12月18日

 朝刊)

[概要米政府がフィリピンと境界を接するマレーシア・サバ州のパンギ島に新基地建設を検討していることがわかった。米軍はフィリピンのイスラム勢力のいるミンダナオ島南西部のダウィダウィ島に、在沖第31海兵遠征隊所属の高速輸送船(HSV)で兵員や物資の輸送を行っている。しかしフィリピン現憲法は「外国軍の駐留禁止条項」を定めているため、長期の米軍駐留への障壁になっている。そこでバンギ島で新基地を建設出来るようにマレーシア政府と交渉している。

 米軍はフィリピンのダウィダウィ島と、マレーシアのバンギ島で、東南アジアのイスラム勢力に抑止するとともに、沖縄で米軍基地の負担軽減を実現する意向と見られる。

[コメント]手元の地図帳で東南アジアのページを開いて頂きたい。サバ州のバンギ島はボルネオ島の北端にある島である。イスラム勢力が支配するフィリピンのミンダナオ島南西部から西に700〜800キロの距離にある。というよりも、半島や島の多い東南アジアの海洋部で、ちょうど海洋の中心にあたる戦略要衝にある。ここに米軍が策源(作戦の拠点)を築けば特殊作戦機(MH53・写真上やMC−130)や空中給油機、対地攻撃機(ACー130・写真下など)で、ゲリラ対策の特殊部隊を速やかに戦場に投入できる。すなわち東南アジアにおける特殊作戦拠点として使うことが可能だ。さらにバンギ島に軍港を整備すれば、特殊部隊ばかりか高速輸送船(HSV)で即応体制の海兵隊を送り込むことも可能になる。

 そこでこの米軍新基地を作れば、沖縄の基地負担が軽減するかといえば、そうとばかりは言いにくい事情もある。というのは元もと、沖縄の海兵隊基地は東南アジアに常時出撃できる体制ではないからだ。沖縄はバンギ島の新基地のような役割は果たしていない。だから米軍は沖縄を出てグアムやオーストラリアやフィリピンに移駐するのだ。バンギ島に米軍の軍事拠点が出来ても、沖縄の基地の代わりにならないのである。それならば沖縄の米軍基地の役割といえば、あくまでロシアや中国に向いた西太平洋で、北海道、本州、九州、奄美諸島、沖縄諸島から、台湾やフィリピンを結んだ防波堤の一部という位置づけである。

 それならばキャンプ・シュワブの沿岸を埋め立てる新ヘリ基地は必要ないかといえば、米軍が絶対に必要あると言えば必要だが、いらないと言えば他のやり方で米軍のプレゼンスを示すことは可能だ。まあ米軍としては、軍民共用の那覇港はいらない代わりに、米軍専用で使える軍港としてヘリ基地と隣接する辺野古新軍港は欲しいところだ。新しいヘリ基地よりも軍港として欲しい施設である。那覇港のような軍民共用港は自爆テロに狙われる危険が高いからだ。

 ともあれこの記事で、米軍が描く東南アジア新戦略のジグゾーパズルがまたひとつ埋まった。米軍が東南アジア向けの出撃基地をグアムに置くのは東南アジアから遠すぎると考えていた。しかしフィリピンに基地を置く構想は、先の米海兵隊員の婦女暴行事件やフィリピン憲法で米軍基地は難しかった。そこをどうするのかと思っていたら、この記事である。

(神浦・・・・この記事は沖縄在住の方から、FAXで先ほど届きました。もし地方在住の方で、地方紙に軍事記事が掲載されたとき、FAXで送って下されば、重要だと判断した場合はここに掲載してコメントします。このようなさり気ない記事がスクープになる可能性があります。またスクープにならなくとも、これからの軍事を考える参考になります。よろしくお願いします)

来年1月、米西海岸で

日米が離島奪還訓練

軍事増強の中国を意識

(読売 12月16日 朝刊)

[概要陸自の西部方面普通科連隊(総勢700人 長崎県)と、米海兵隊第1機動展開部隊(カリフォルニア州)が、来年1月、サンデエゴ(カリフォルニア州)近郊の演習場で離島への潜入や奪還訓練を共同で行うことになった。米軍はこれまで中国に配慮して、離島での作戦を想定した日米共同訓練を差し控えてきた。しかしここ数年、中国が急速に軍事力を増強させているので、中国に対して日米の連携や、沖縄・南西諸島でのプレゼンスを示すために共同訓練に踏み切ることにした。

 実動演習は九州近海の離島に「中国軍の特殊部隊」が侵入し、島を占領し始めたと想定。陸自・普通科連隊と米海兵隊はともに、ゴムボートや上陸用舟艇などで夜間潜入する。さらに図上演習で、「中国軍の特殊部隊」と交戦し、離島を奪還する内容である。九州の離島で陸自が駐屯しているのは沖縄本島と対馬だけで、南西諸島は防衛の空白になっている。(神浦・・・・記事で「敵」という2カ所の言葉を、演習が敵と想定している「中国軍の特殊部隊」と言い換えました)

[コメント]この記事ではことさら中国向け(中国脅威論)で初の日米演習と強調している。しかし現実問題として、中国が日本との全面戦争を決意しないで、石垣島や宮古島や与那国島などの離島を武力占領する可能性があるだろうか。また武力占領するとすれば、何のため(戦略的な必要性)に中国は南西諸島の離島を占領するのか。

 かつて米ソ冷戦時代に、極東ソ連軍が佐渡島を占領する研究をしたことがある。しかし何のための佐渡島占領かという疑問と、ソ連が佐渡を占領して守りきれるかという問題がでてきた。言い訳程度にソ連軍は佐渡を占領し、上越から関東に進攻する橋頭堡を築くという意見があったが、それなら佐渡ではなく新潟平野沿岸に橋頭堡を築くという話しになる。さらに新潟平野から中部山岳地帯を通過して関東に進出すのは至難の業だった。はっきり言って無理である。

 またソ連軍は佐渡を占領しても、上空の航空優勢(制空権)を確保できるかという課題が生まれてきた。昔も今もまったく無理である。それなら日本本土の航空基地や航空部隊を壊滅させる以外に、ソ連軍が佐渡上空で航空優勢を確保することはできない。もし日本全土の航空基地や部隊が壊滅させられた状態では、日本では佐渡奪還よりも大きな戦争目的が発生している。

 だからソ連軍の特殊部隊が奇襲で佐渡を占領しても、直ちに日米両軍の攻撃機が空から群れをなして襲ってくる。そのような理由で佐渡占領という想定はバカバカしくて話しにならないというのが結論だった。そのような過去の事例と、この南西諸島・離島での演習と比較して欲しい。

 まあ、自衛隊が離島を防衛するというのは理解できる。しかし台頭してくる中国軍に備えて離島防衛というのは「幼さ」を感じる。中国軍が演習で「日米両軍の特殊部隊が『青島(チンタオ)』に攻め込んで来る」と想定した様な場合の「幼さ」と同じ程度である。

 だったら離島の脅威は中国軍と言わないで、大規模な海賊や集団脱走した武装兵士と想定した方が現実的であった。あえて脅威を中国軍と想定すれば、中国軍なら航空優勢や補給などの後方支援体制を整えて攻めてくる。自爆テロのような特殊部隊だけの攻撃は行わない。であるなら、航空優勢を奪われた離島上空の航空優勢をどのように奪還するのか。あるいは中国軍の海上補給をどう切断するのかといういう問題が重要である。これは陸自の普通科連隊や米海兵連隊が対応できる演習規模ではない。

 日本のような先進国の軍隊は、安易な動機で「戦争ごっこ」を始めてはいけない。この日米共同演習に中国の名前を出したことで、米軍側はこの情報をリークした日本側に「いい加減なことを勝手に言うな」と嫌悪感を持つと思う。この規模の日米共同演習なら、想定は日本海に浮かぶ隠岐島に、K国から集団脱北し武装した特殊部隊(400人程度)が乗った貨物船が漂着し、隠岐の島民を人質にとって立てこもったというのでよかった。

 今なら中国軍の脅威を言えば、何でも許され、流行に乗れると思うのは間違いである。この程度の発想では、本当の中国の脅威は見えてことないと思う。

ユニセフが「世界子供白書」

3人に2人は出生登録なし

「途上国でのい保護体制を」

(毎日 12月15日 朝刊)

[概要国連児童基金(「ユニセフ)は14日、06年版「世界子供白書」を発表して子供の出生登録率を集計した。後発開発途上国(LDC)では登録率が32パーセントで、3人に2人が行政上の記録に「存在しない子供」になっていることがわかった。ユニセフは保護が行き届く体制作りが急務としている。この白書では、LDCで5歳未満の子供の死亡率が6人に一人で、うちシエラレオネでは紛争の影響で5人に1人と最も多かった。ユニセフでは15年までに5歳未満の死亡率を2/3に減少するように目指しているが、今のペースでは到底到達できないと支援を求めている。

[コメント]日本では戸籍や税制や教育や武器の所持禁止が普通になっているが、LDCではそれが整備されていないので、外部の援助も現地の権力者に奪われ、本当に援助を必要としている人に届かない現実をいくつも見てきた。これは現在進行形で最も急務な人道問題であると思う。まさに内戦やテロの温床になる大問題である。

 広島の女子小学生殺人事件では、ペルー人犯人が母国で簡単に戸籍を買い、パスポートを偽造して日本に入国していることが判明した。それを聞いて多くの日本人が驚いた思う。ペルーではなぜ簡単に戸籍を売り、偽造パスポートの取得が可能なのかと。だがアフリカや南米に限らず、アジアでもそのような国の方が多いのである。もともと戸籍簿が整備されていないからだ。また戸籍の登録によって国家から受ける益よりも、国家に奪われる益(国民にとっては害)のほうがはるかに大きい。だから貧しい人は戸籍を平気で売り買いする。

 カンボジアでポル・ポト派がプノンペンを占領したとき、当時のカンボジアでは法的な税制がなかっと聞いた。公務員は自分の利権で勝手に稼ぎ、人々からお金を集めていたという。海外からの輸入も、お金のあるものは貨物船を雇い、港の官吏にワイロを渡して大量に運び入れていた。お金のない者は国境に出向き、頭の上に物を載せて密輸をしていた。その時も国境警備と称する者たちが、各地で裸足の密輸者から少額のワイロを強奪していたそうだ。だから人々にとっては、役人や警官はワイロの温床でしかなかった。当時の公務員と都市生活者は、農村の富を奪って生活する悪人のように見えたと聞いた。そこでカンボジアでポル・ポト派による大虐殺が起きたのである。せめてカンボジアで政府によって戸籍が整備され、原始的であっても税制が確立していれば、あの大虐殺は起きなかったと思ったことがある。

 しかしそのような支援は日本のODA(政府開発予算)になじまない。ODAによって現地の工事を受注する日本企業や、現地の政治家や官僚に協力金(ワイロ)が届けられないからだ。日本のODAは道路や橋を作るだけの援助ではなく、生まれてきた子を健康に育て、教育や医療を受けさせ、将来の国作りを担う人材を育成するために使えないか。

 紛争や内乱で混乱した地域を見て、そこで遊ぶ子供達の笑顔は将来の希望と思った。あの子供達を飢餓や病気で死なせてはいけない。日本人はあの子供達を救える最もいい場所(ポジション)にいることに気がついて欲しい。

8人懲戒処分

陸自警務隊 カラ出張

99年〜01年

470万円不正受給

捜査費用などに充当

(朝日 12月14日 朝刊)

[概要陸上自衛隊で警察機構にあたる警務隊で、組織的なカラ出張が繰り返され、約470万円を不正受給していたことがわかった。これは演習場内の違法射撃事件(空挺・普通科群長)などが起きた99年〜01年にかけて、捜査費を捻出するために組織的に95回のカラ出張を行ったというもの。今年2月、東方警務隊員から内部告発があり、陸自で調査していた。

 捻出された金の半分は警務隊の捜査費に充て、残りはプリンターを購入したり現金のままプールしていた。防衛庁は、隊員らによる私的流用はないと説明した。この件では13日、不正受給に関わった陸自警務隊本部と陸自東部方面隊警務隊の計8人を停職などの懲戒処分にし、また上司の指示でカラ出張に名義を貸していた隊員ら40人を注意処分にした。

 不正受給した金は当時の本部警務隊長など4人が、不正受給分に5パーセントの金利を加えて国庫に返済した。

[コメント]この不正受給事件では2つの問題が指摘できる。@は自衛隊における内部告発のことである。Aは自衛隊で適切な必要経費が準備されているかということだ。

 @について言うと、おそらく私は自衛隊員の内部告発を最も多く受け取っていると思う。ベストセラーになった「裸の自衛隊」(宝島社刊)で私が書いた「疑惑の爆殺計画を追え」も最初は内部告発が出発点だった。その後も自衛隊関連の記事を書いた雑誌の編集部や、このホームページに実名や匿名の内部告発が多く届く。

 ある時は隊内のいじめが原因で退職したいがさせてくれないので、これから自殺するという隊員の手紙を受け取ったこともある。直ちに自衛隊関係者(当時は二佐 陸将で退職)と連絡をとり、この隊員を円満に退職させて自殺を防いだこともある。内部告発には上司と部下の不倫や、隊内の暴力事件、カラ出張の実態や、出入り業者との癒着など、それこそ自衛隊の暗部を現していると思う。だが私のところには人事の不満を訴える内部告発は来ない。

 なぜ自衛隊で内部告発が多いかといえば、今までは自衛隊が階級社会で閉鎖社会であるということで、内部で抱えた矛盾や問題を解決しにくい体質があったと思う。

 参考までに言うと、特に自衛隊で内部告発が多発したのは中曽根防衛庁長官時代(昭和45年)である。中曽根氏が防衛庁長官になると、「隊員で提案や不満があれば私に言って欲しい」と隊員向けの就任演説(無線回線を利用)をした。すると全国の自衛隊隊員の不満が防衛庁長官に殺到した。これは上司に対する意見具申ではなく、隊員の日頃の不満がトップの長官に集中したのである。その大部分は階級(人事)に対する不満だっという。「自分より能力の低い者が先に昇任した。私は上司から不当な扱いを受けている」というものだった。そのような昇任をめぐる内部告発で、自衛隊内の雰囲気が暗くなったことがある。自衛隊で内部告発のルーツはこの時に生まれたという人(OB)がいる。人事の問題は主観的な見方が強く影響するので、内部告発で扱うのは難し問題だと思った。

 さらに全国でコンビニが増え、コンビニにFAXが設置されると内部告発が増えた。またネットでメールが送るようになっても内部告発は増えたように感じた。

 最近の海自・潜水艦隊員の大麻事件のように、もう内部告発で自衛隊が閉鎖的な組織とは言えなくなっている。いくら上司や組織が隠そうとしても、自衛隊内で犯罪を隠蔽するのは不可能に近いと言える。

 Aについては、外務省の機密費流用事件と今回の不正流用はまったく異質の事件である。自衛隊では正当に公費を使うものまで予算が削減されている。以前、第1空挺団の部隊長から米軍の戦闘靴を買ったから、雨や川や湿地が気にならなくなったと聞いたことがある。しかし買ったのは軍用品のバーゲンで自費(2万五千円)だったという。そのような話しは野戦用の雨具や防寒具でもよく聞く話しである。本来なら自衛隊の専門調査機関が調べ、最高の物品を隊員に提供しなければならない。しかしそのような予算がないから、隊員は必要な装備を民間から自費で買って演習で使うのである。また今回のように部隊で故障したプリンターを、カラ出張した金をプールした資金から買っている。

 同じように、警務隊の捜査費が必要な額だけ使えるかということである。自衛隊の予算は年度で使い切るように設定されている。予算の持ち越しは許されていない。さらに与えられた予算を残せば翌年の予算額に影響してくる。すなわち年度末になると各地の道路工事が増えるのと同じ話しである。ところがたまに大事件が発生すると、警務隊はその捜査費用が捻出できないということになる。捜査費がないから捜査の遅れは許されない。これは個人の不正流用問題よりも、組織として必要な経費をどのように確保するかの問題である。

 幸い、今回は個人流用がなかっという。そのことでホッとした。しかしこれで問題が解決したわけではない。このまま組織的な問題を解決しなければ、再び、必要な経費をカラ出張で捻出することになる。これは機密費である必要はないが、予備費の扱いや、必要な経費を無理に削減しないように配慮が必要だ。 

前原氏発言  

中国で質問攻勢

「方針と違う」党内に反発

(朝日 12月13日 朝刊)

[概要民主党の前原代表が訪米中に主張した「中国脅威論」の波紋が広がっている。12日に訪問先の北京・中国外交学院で行った講演ではトーンダウンしたものの、会場内から前原氏の発言をただす質問がでた。「『中国が現実的な脅威』というのは、民主党の立場なのか」という質問に前原氏は、「空軍力や海軍力、ミサイルを中心に脅威が飛躍的に向上していることに、私は率直に脅威を感じている」と答えた。さらに、「皆さんから見れば、米国や日本の軍事力にそういう思いがあるかもしれない」と守勢に回らざるを得なかった。呉建民・院長が「中国の軍事費は日本より少ない。日本の軍事力は中国への脅威だ」と語ると、会場は大きな拍手に包まれた。

 また持論とはいえ、事前調整もないままの発言に党内から反発の声が上がっている。民主党の横路孝弘衆院副議長は札幌市内の会合で、「民主党の方針とはまったく違う。次の選挙で民主党は得票を減らしまけてしまうのではないか」と指摘した。

 前原氏は13日に胡錦涛主席など中国要人との会談を求めているが、前日夕方になっても相手が決まっていない。民主党関係者は「自身の発言で、会える可能性をどんどん狭めている。野党外交の成果どころではない」と漏らした。

[コメント]先日、前原氏がワシントンで「中国の軍事力が脅威だ」と講演した際、そのようなことは言わないで頂きたいと書いた。さらに前原氏は得意の軍事や外交というが、私は国会論争でそのようなことを感じたことは一度もなかった。むしろ得意の軍事や外交と誤信して、それが自身の最大の弱点になると思っていた。そのことがまさに現実化したような嫌な気持ちである。

 中国軍の空軍力や海軍力、それにミサイルが飛躍的に向上して、その脅威をひしひしと感じているのは台湾である。中国は台湾に関しては軍事的な圧力を強化している。しかし台湾との通商や交通や通信は拡大している。まさに片手にハンマー、片手に甘いパイを持って台湾と接しているのが現実である。

 しかし中国は日本に対しては、直接的な軍事的な脅威を与えず、日本に軍拡の口実を与えないように慎重に行動している。また日本も中国を軍事的な脅威と位置づけず、慎重に監視していく段階として、中国に日本の軍事力が直接向かないように配慮している。

 もし国家が相手国を軍事脅威と断定すれば、それに対して脅威を軍事的に相殺する兵器の配備や部隊の再配置を行う必要がある。さらにそのことによって相手の反応を招き、軍拡競争に陥る危険が生まれてくる。そこでさらに軍事的な危機が高まるのである。

 だから前原氏の発言の延長には、中国と日本が互いに軍備を向けあい、軍事的な緊張関係になるという国際関係に突き進むことを意味している。

 中国のポンコツ潜水艦がグアム1周の練習航海に出て、途中で日本の対潜部隊に追いかけられて日本領海を突っ切った。その程度で大騒ぎすることこそが、日本が軍事を知らないことを証明しているのである。

 今回の前原氏の訪米と訪中で、アメリカと中国に日本の若手政治家が、野党を含めて軍事を知らないことを知らしめることになった。防衛庁・自衛隊は与党(主に自民党)に遠慮して、民主党議員に軍事のレクチャーを行っていないようである。

 民主党はこの機会に、民主党系の軍事・外交政策のシンクタンクの創設を検討して欲しい。むろん私も微力ながら最大限の協力を惜しまない。これは民主党にとって緊急の課題である。民主党の横路氏、小沢氏を説得し、民主党が団結するには軍事・外交の違いを取り除くしか方法がないと思うからだ。まずは民主党の新人議員や落選議員(次回立候補予定者)、それに将来の日本のリーダーを目指す者に軍事を勉強する機会を作るべきである。

地球を読む

イラク撤退後の米

孤立主義を招く危険も

「民主化度」よりも「安定」重視

米政治学者

フランシス・フクヤマ氏

寄稿

(読売 12月11日 朝刊)

 本日は新聞休刊日です。そこで昨日の朝刊を掲載します。このフクヤマ氏の寄稿コラムは非常に長文で、この概要コーナーに引用したいところが多々あります。しかしこのコーナーでは大幅にカットして、要点だけを引用します。時間がある方は新聞に掲載された全文を読まれることをお勧めします。

[概要ブッシュ大統領とラムズフェルド国防長官が、先日、イラクからの出口戦略について公式演説を行って以来、民主党は迅速な撤退を求め、米国内の論議はもはや撤退の是非ではなく、どう撤退するかに移っている。しかし与党内にも早期撤退論が高まる今、アメリカはイラクの安定化計画を放棄するべきでない。

 ブッシュ大統領はイラクの警察と軍を急いで訓練し、それらが米国の指揮を離れて活動出来るようになって撤退する戦略だった。しかし今なお、イラク軍は米軍司令官が指揮し、イラク情報機関はイラク内相ではなくCIAに情報を上げている。これでは大幅な米軍撤退ができないのは明白だ。

 だが米軍はゆっくりだが戦術を変更し、反乱派の攻撃を抑え込み、そこを占領して敵の再結集を余裕を与えない「掃討占領」戦術で効果を上げている。(神浦・・・・これは先日紹介したクリーン・アンド・ホールド戦略のことと思う)

 またイラクの自爆テロに関しても、イラク国内ばかりか世界のイスラム教徒に嫌悪感が広がっている。それは自爆テロの対象が米軍ではなく、イラクやヨルダンのイスラム教徒(国民)を犠牲にしているからだ。

 3番目の特徴として、ジャファリ現首相やシーア派のサドル師らのグループが、自ら武装し軍や警察に忠実な党員を潜入させていることだ。イラクに新憲法が誕生しても、彼らが民主的な憲法に従い、人権を尊重することはない。彼らは自らが属するシーア派政党に従うからだ。しかしイラク内戦は短期間に終わるだろう。内陸部で産油地帯と無縁なスンニ派支配地区が、さらなる孤立を深めるだけだからだ。

 イラクに平穏を築くには、ブッシュ大統領が圧倒的な力で民主主義体制を保障し、米国民がイラクの安定化を放棄しないことである。しかし米国民は「アメリカが自分のことに専念すべきだ」という意見が、世論調査でベトナム戦争直後をやや上回った。

 それでも米軍が早期に撤退してイラクが大混乱に陥れば、米国ではイラク戦争の動機と手際に対する糾弾が続くことになる。そのことで米国がイラク撤退後に孤立主義に傾く危険がある。それでは今後、中国の台頭にアメリカの関心が向かなくなる。そのために多くの国はイラク撤退後も、米国が払ったイラクでの犠牲に敬意を払い、イラクの安定化に協力すべきである。

[コメント]このフクヤマ氏のコラムを読んで、アメリカの保守派はそこまで追いつめられているのかと驚いた。私は米軍のイラクからの撤退が確実になり、その撤退計画は整然と行われるものとばかり考えていた。すなわち数年間は4〜5万人の駐留部隊はイラクに残し、イラク国内の3〜4カ所に駐屯し、またクエートにも一カ所のイラク向け軍事拠点を作るという推測であった。

 ところがこのフクヤマ氏のコラムを読むと、イラクの米軍がベトナム戦争のように一気に瓦解し撤退するようなうな雰囲気に傾いていると感じた。そのような事態になれば、それこそ最悪の米軍撤退ケースである。

 ベトナム戦争とイラク戦争の大きな違いは、ベトナム戦争では米軍が去っても、北ベトナム政府が南ベトナムを制圧して統治することができた点だ。しかしイラクには米軍が去れば、イラク全土を統治できる勢力はない。北はクルド、南はシーア派、中部はスンニ派と分裂することは間違いない。そこで第4の勢力として、世俗派と呼ばれるジャファリ現首相がシーア派の一部とスンニ派の合体を目指して動いている。しかし若いアル・サドル師に率いられたサドル派はスンニ派との合流を絶対に認めない。どちらが政権を取っても、米軍がいなければ内戦は必至である。

 フクヤマ氏は米軍が撤退してもイラクの内戦が長くは続かないというが、私はそのような楽観論はイラクの混乱を増すだけと思う。

 ブッシュ政権の弱体化は米国内の厭戦風潮を受けて、ベトナム型撤退に急変する可能性も出てきたようだ。

 そこでフクヤマ氏は「それではアメリカが孤立主義になる」と、この撤退問題で国際世論の配慮を求めている。米国では立場が悪くなると、すぐに孤立主義への復古が語られる。しかし今の時代に米国が孤立主義に戻れるほど国際環境は単純ではない。ちょうど日本が鎖国時代に戻れないと同じである。フクヤマ氏の「孤立主義」の警告は単なる脅しでしかないが、その緊張した気持ちは感じとることができる。

 ともあれアメリカではそこまでイラク戦争に嫌悪が広がっているということだ。フクヤマ氏は保守派の論客として、イラクからベトナム型撤退にならないように危惧している。しかしアメリカの軍事は変わるときは一気に変わる。それに米軍は撤退が非常にヘタである。フクヤマ氏の心配は決して無駄ではない。

東アジアサミット

ロシア加入意欲「困った」

日本政府

拡大路線と板挟み

(朝日 12月10日 朝刊)

[概要ロシアが8日、東南アジア諸国連合(ASEAN)と首脳会談の定例化に合意した。日本政府はこれをロシアの東アジアサミット参加の布石と受け止めている。

 日本政府は東アジアサミットで中国の影響力をそぐ狙いから、「開かれた地域主義」を掲げてオーストラリア、ニュー次ランド、インドの加盟を後押しした。ところが3カ国の新規加盟の動きに弾みがつくと、ロシア、モンゴル、パキスタンも関心を示す結果となった。もし東アジアサミットで政治的に接近している中露が連携すれば、東アジアサミットで中国の影響力が盛り返す懸念があると日本政府は危惧している。

 日本の外務省幹部は「実態としてロシアとASEANは協力関係にない。ASEANは迷っている」と、当面、対応を見守る姿勢だ。

[コメント]これまでの経緯を簡単に整理すると、中国の経済攻勢で最初に悲鳴を上げたのはASEAN(10カ国)だった。ASEANは東南アジアに進出する中国を牽制するために、日本や韓国の影響力を活用することを考えた。それがASEAN+3(日本、中国、韓国)である。このASEAN+3で東アジア共同体構想が話し合うことになった。しかし日本は中国の影響力を下げるために、ASEAN+3にオーストラリア、ニュージーランド、インドを加える16カ国にするように提案した。これが日本の説いた「開かれた地域主義」である。それは受け入れられて東アジアサミットは16カ国になった。

 その東アジアサミットを中国との関係を強化するロシアが突いてきた。ロシアもこの東アジアサミットに参加したいと言い出したのだ。そしてASEANとロシアの定期首脳会談に合意したというわけである。これでますます東アジアや東南アジアで中国の影響力が増すことは間違いない。これが日本外交の大敗北になる。その大失敗に気がつかず、外務省幹部は当分は様子を見るという。

 日本の外務省がアメリカに追随し、その属国として従属して済む時代ではないことに気がついていない。日本をとりまく東アジアの国際環境は急激に変化を始めている。なにも反米である必要はないが、単純にアメリカの懐に頭を突っ込んでいては解決しない。アメリカがイラクの泥沼に足を奪われ、国際的な影響力が衰えると、そのスキをついてすぐに中国やロシアが拡大してきてくる。

 本当に日本の外務省は外交が出来ていない。何よりも、国家戦略というものがまったくわかっていないのだ。あえて名前を挙げないが、外務省出身で世界戦略を語るもので、軍事がまったくわかっていないものがいる。どうしてそのようなデタラメをいうのかと気になるが、それが外務省出身というだけで国家戦略を語る資格があると思っている。それでも最近は、「とにかくアメリカとの関係強化しかない」とだけ繰り返している。

 もし中国とロシアが組んで、東アジアサミットで影響力を行使するとどうするのか。アメリカに頼んで中国とロシアを軍事力で攻め滅ぼしてもらうつもりか。民主党の前原さんも「中国の軍事力が脅威」などと素人のようなことを言わないで、軍事力を使わない中国のアジア拡大戦略に注目して欲しい。前原さんのことを「得意の外交・安保」という言葉を聞くが、私が聞いたり読んだもので、前原さんが外交・安保に強いと思ったことは一度もない。そもそも日本の政治家で外交・安保に強い者がいるのか。・・・・・・・・・虚しい。

米に対抗

露「東のNATO]構想

上海協力機構が土台

(産経 12月9日 朝刊)

[概要ロシアは米に対抗するために、中国や中央アジア4カ国で作る上海協力機構(SCO)を「東の北大西洋条約機構(NATO)」ともいえる軍事機構の創設に動いている。ロシアのプーチン大統領は先月、カザフ、タジク、キルギス、ベラルーシといった親ロシア的な旧ソ連構成諸国で作る集団安全条約機構の参加国には、ロシアの最新型ミサイル防衛システムを提供すると表明している。また中央アジア各国の軍人教育やロシア製兵器を安価で供与したり、対テロの特殊部隊の創設と訓練や、集団防衛を目指す統一指揮系統の構築などを提案している。

 インドに対してはタジキスタンのロシア軍基地を使い、特別にインド空軍パイロットを要請する軍事施設を設置することを明らかにした。インドはロシア製兵器の輸出のうち25〜45パーセントを占める重要パートナーだが、最近はアメリカと軍事や原子力で協力関係を拡大している。そこでロシアはインドを懐柔することに必死になっている。ロシアはアメリカと対立するイランに関しても原子力分野で協力を継続し、ロシア製防空ミサイルの供与を締結している。インドとイランは今年からSOCにオブザーバーとして参加している。

 ロシア国内では、「クレムリンはSCOを経済的な協力機構から軍事同盟にしようと模索している」(ロシア・独立新聞)という見方が広まっている。しかしSCOの中核を成す中国は、同機構が軍事ブロックになることに慎重な姿勢を示している。

[コメント]下段の記事のように、アメリカが東欧に軍事拠点を移し始めたことで、ロシアには東欧や中央アジアにアメリカの覇権が押し寄せてきたという危機感がある。アメリカが唱える対テロ戦争というのは、まことに自分勝手な都合のいい言葉で、過激な民族主義や武装した山賊までテロリストとして敵にすることが可能である。要はアメリカが望む場所に、「対テロ」を口実にして精鋭部隊(特殊部隊)が展開できる拠点を築くことが出来る。その精鋭部隊は旅団程度の小部隊でもRMA(軍事革命)で編制された部隊だから、今の数個師団分の軍事力を発揮できる戦力となる。そのようなアメリカのテロ戦略で最も恐い思いをしているのがロシアである。

 もし将来、アメリカがイラクばかりかイランもアメリカの勢力下に入れ、インドもロシアよりアメリカの関係重視に動けば、ロシアの孤立は耐え難いものになる。同時にアメリカは中央アジアというロシアにとっての喉元にナイフを突きつけることになる。プーチン大統領が周辺国に最新式・対空ミサイルシステムの供与と、テロ対策用の特殊部隊の創隊に協力することは、アメリカがロシア周辺国に軍事拡大する口実を与えないためである。

 また中国がSCOの軍事機構化に慎重なのは、中国の軍事力が中国周辺国でまだまだアメリカに対抗できないからである。中国は今の段階では、危機感をつのらせるロシアから最新兵器や軍事技術を導入し、強力な軍事力を築くことが最優先課題である。まだまだロシアは中国に絶対の信頼を置いているわけではない。ロシアが軍事面で中国とインドに対する態度は明らかに違う。インドには優しく中国に慎重である。これはロシアと国境を接した国と、国境を接していない国の違いでもある。

 中国もそのあたりのことをよく知っていて、ロシアの危機感を利用するためにSCOが軍事機構化しないように構えている。中国はEUへ最新式の武器供与を働きかけることも、ロシアの危機感を高めさせ中国に依存させる作戦でもある。

 中国に最も近い巨大産油国は、世界第2位の産油国のロシアである。アフリカや中米から石油を中国に運んでくるよりも、シベリアの石油や天然ガスをパイプラインで中国に運ぶ方が安定かつ効率的だ。しかし中国はロシアに軍事力(戦争)は使えない。中国にとってロシアは敵として戦う相手ではなく、軍事(兵器など)やエネルギー(石油・天然ガス)で最大限に利用する国なのである。

 中国がこれからどのようにしてシベリアの地下資源を獲得するか。いよいよ中国の老獪さがロシアに向けて発揮されることになる。まずはそのためにも、ロシアが望むようにSCOにインドとイランを参加させ、しかし軍事機構の転換に慎重な姿勢をとることが中国の戦略である。

欧州米軍

ドイツから東欧へ

ルーマニアに拠点

中東・アジア テロ即応

ブルガリアも新設へ

(読売 12月8日 朝刊)

[概要米軍は冷戦時代に戦力を集中させていたドイツから駐留部隊を撤収させ、新たにルーマニアなどの東欧に軍事拠点を確保して、中東や中央アジアでのテロ組織の即応体制を強化する構えだ。6日、ルーマニアを訪問していたライス米国務長官は、ウンダレアーヌ外相と黒海沿岸の軍事空港の米軍使用を認める合意書に署名した。米国が旧ワルシャワ条約機構に加盟していた東欧諸国に軍事拠点を設けるのは初めて。来年3月には隣国のブルガリアとも米軍軍事施設の新設で合意する見通し。

 同日、ラムズフェルド国防長官はワシントンでルーマニアなど東・南欧州諸国の国防相と会談して、東欧諸国での米軍施設は、「かつてのドイツのように大規模基地にはならず、柔軟性のある施設になる」と述べ、訓練や演習など一時的な使用にとどめると繰り返し強調した。

 ブッシュ大統領は04年8月に、今後10年間に欧州とアジアから6〜7万人の兵士を本国に帰還させると表明している。欧州ではドイツに駐留している米軍部隊(6万9500人)が統合・再配置の中心になり、4万人程度が削減される見通しだという。

 同時に米国はイラクやアフガンなどでのテロ攻撃や大量破壊兵器の拡散に備え、「新たな脅威」に即応するために特殊部隊などが展開する協力国や同盟国の関係強化を模索している。しかし中央アジアのウズベキスタンでは駐留米軍の撤退を余儀なくされた。そこで隣国キリギスにはライス長官が10月に訪問し、じきじきに米軍基地存続の合意を取り付けている。

 (上図は読売新聞 12月8日付けに掲載されたもの)

[コメント]これが米軍の再編・強化(トランス・フォーメーション)の基本形である。米軍はドイツや韓国や日本の駐留から撤退し、海外の米軍を米本土(ハワイ・グアムを含む)に後退させる。しかし予測される対テロや大量破壊兵器の拡散には、同盟国や協力国の基地や訓練所を利用して、緊急展開(即応)して闘うという世界戦略である。そのためには情報ネット化された部隊や兵器の配備や、長距離での緊急展開が可能な機動力、さらに協力してくれる同盟国軍との関係強化が重要になる。

 米軍はトランス・フォーメーションによって、現地で不人気な米軍兵士を撤退させ、同盟国の基地負担を軽減させ、アメリカ自身も海外展開の経済的・兵士の精神的な負担を軽減させたいと願っている。

 だからラムズフェルド国防長官が繰り返し発言したように、ルーマニアやブルガリアに恒久的な米軍基地は必要としない。またそのことが米軍再編の狙いでもあるのだ。とは言うものの、軍事にはプレゼンス(存在感)ということも抑止効果として必要である。新しく開発した新軍事拠点のプレゼンスを示すために、当分は活発に米軍機や米軍部隊が飛来し、東欧の新基地を経由した演習や訓練を行うだろう。このような態勢のもとでトルコの米軍基地(1700人)やキリギスの米軍基地(950人 NATO軍)が連動して動くことは間違いない。さらにイラク、クエート、アフガン、カタールなどの米軍を加えると、対イランをはじめとしてしてアメリカの中東や中央アジア戦略の形が見えてくる。

 在日米軍の再編・強化や、沖縄からの海兵隊司令部のグアム移転などは、このような米軍の世界戦略を理解しないと本当の姿が見えてこない。その点から東欧や中央アジアでの米軍の動きに注目するする必要がある。

イラク派遣

陸自撤退へ条件明記

基本計画変更

(産経 12月7日 朝刊)

[概要自衛隊のイラク派遣延長で、政府が8日に閣議決定するイラク復興支援特措法の変更部分の全容がわかった。派遣延長期間は1年間の来年12月14日までだが、「英軍とオーストラリア軍をはじめ多国籍軍との活動状況と構成の変化を見極め、適切に対応」と明記し、陸自の具体的な撤退条件を盛り込んだ。イラク南部を担当する英・豪軍は来年5月の撤退を計画しているため、政府は陸自も来春に撤退させることを検討している。

[コメント]このホームページでは陸自のサマワ撤退は来年前半の後期(5月、6月)から始まり、小泉首相の任期が終わる9月までに撤退完了と書いている。また、そのための話し合いが先々月の初めにロンドンで始まり、日米英豪の政府間で撤退計画が練られていると報じている。

 しかしあまりにも早い報道は誤解や疑惑を招くことがある。私に対する誤解や疑惑とは、「神浦は防衛庁の情報本部と繋がっている」とか、極端なのは「CIAから情報をもらっている」というものまである。

 しかし情報というのは情報機関が抱きかかえていても役には立たない。情報機関が得た情報を、しかるべき場所に伝え、政治や経済の流れを作ったり、社会世論の形成に使う必要がある。すなわち情報の2次活用である。最近の私は現場取材の機会が少なくなり、1次情報に接する機会は少ない。そこで今は2次情報に注目している。すなわち情報機関が得た情報を活用するために、外部に出たところに注目している。これでも1次情報に劣らない情勢分析が可能になる。(新聞などのメディアも情報機関である)

 しかしである。2次情報には偽情報が多いのも大きな特徴である。今回のイラク派遣で言えば、イラクから陸自は撤退させるが、空自はイラクに残すというような情報である。その偽情報の特徴は、出てくる場所が1カ所(限定的)で、その他の関連情報が極端に少ないないことである。だから新聞記事の切り抜きを一生懸命頑張っても、いい情報を収集しているとはならない。

 それならばどのようにするか。やはり現場体験が重要になる。若い頃の現場(取材)体験が乏しいと、人為的に流される偽情報に振り回される危険が増すようだ。

 私は若い頃に「詐欺事件と手口」に強い関心を持った。今でいう「振り込め詐欺」や「架空請求」などの詐欺事件である。私がジャーナリストの勉強を始めた20代後半に、週2日間は国会図書館の新聞スクラップ室に通い、分類されている全国の新聞に載った詐欺事件の記事を読んだ。2年間で新聞のスクラップ20年間分は読んだと思う。これは今でも非常に役に立つ経験となっている。

 またそれ以前の20歳の頃には、法律の勉強をした経験がある。しかし大学の法学部で学ぶ系統的な法律の勉強ではなかった。古本屋に並んでいた有斐閣(出版社)から出ていた「ジュリストの判例100選」を、週刊誌の事件ものを読む気分で読んだ。例えば「刑法の判例100選」なら、最初に具体的な事件のあらましが書いてあり、つぎに刑法ではどのように裁かれるかという経緯と法的な解釈が説明してある。

 これが実に面白い。判例100選の憲法、商法、民法など、100冊以上は読んだ記録がある。なにも司法試験を受けるような気ではなかった。ただ法律を通して、世の中の仕組みを知りたかっただけの気持ちだった。本当に判例100選は、取り上げた事件がリアリティーがあるので、そこらの週刊誌と比べても負けないほどである。これで3年間ぐらいは夢中になった。

 私は大学には行っていないが、判例100選で得た法律知識と、国会図書館で読んだ詐欺事件のスクラップ記事は、ジャーナリストになるための助走になったと思う。それから報道カメラマンや軍事ジャーナリストの取材生活が始まった。

 これから軍事の専門家を目指す人は、朝から晩まで軍事の関係する本ばかり読んでいないで、歴史や文化や科学に関する分野も視野を広げて欲しい。無論、法律や事件なども、最低限の知識として必要になる。

 私は若い頃に読んだ判例100選で、「共同正犯」という言葉を知った時の感動は忘れられない。知識を広めることの楽しさを知った。

 知識と経験こそが、偽情報を見抜く力になると今でも信じている。決断力はそこから生まれると思う。

政府方針

防衛庁「省」格上げ

来年にも

自公、大筋合意

(毎日 12月6日 朝刊)

[概要政府は6日、防衛庁を省に昇格するために防衛省設置法案を、来年の通常国家に提出する方針を固めた。自民、公明の幹事長、政調会長が大筋合意したことから、来年にも「省」昇格が実現する可能性が高まった。公明党の冬柴幹事長は、「防衛国際貢献省」という名称を使うように要請した。自公は省に昇格すれば、国際平和維持活動(PKO)を自衛隊の本来任務に位置づけることで一致した。政府は名称に関する自公両党の調整をにらみながら、法案化の作業を進める方針だ。

[コメント]冬柴幹事長が求める「防衛国際貢献省」という名称は勘弁して欲しい。いくら国連平和維持活動が本来任務になっても、あくまで自衛隊という組織は最新の武器を持ち、日本を外国の軍事侵略から防衛するための武装集団である。その国防目的のために組織した集団が、海外の紛争直後の平和維持活動に使えるというものである。

 国家で軍隊という武装集団は、祖国を外国からの軍事侵略から防衛するためのもので、その目的で国民や世界各国から尊敬されているのである。また制服や階級という国際水準で、互いに敬意を払う存在理由があるといえるのだ。

 私は民主党の小沢一郎氏が主張している自衛隊と国際貢献部隊(国連待機軍)の分割案に反対であった。もともと国際貢献部隊は軍事組織のものが、国際貢献で軍事組織の旗を掲げ、制服や階級を持って、外国のPKO部隊と共同で行動できるものである。日本のPKO部隊が自衛隊と分離しては、PKO隊員の国際的な地位と外国部隊との共同任務は出来ない。

 同じように冬柴氏がいう「防衛国際貢献省」はあまりにも偽善的な名称で、国防という任務をオブラートで包み、自衛隊の存在意義を曖昧にする危険がある。こんないい加減な名称をつければ、日本政府が軍事を理解していないかを証明するようなものである。

 その点では「防衛省」でも曖昧である。ここは英語表記や国際水準からも、「国防省」にすることが正しいと思う。日本には防衛庁が「国防省」にすれば憲法との整合性を失うとか、侵略戦争を肯定するような意味になるというバカな意見がある。日本を軍事侵略から守るということは、単なる省庁の名前(名称)の問題ではない。国防省が侵略的であるという人は軍事を知らない非常識人である。

 普段は国防軍として侵略対処の軍事訓練に励み、その一方で国連平和維持軍や国際災害救難部隊として派遣される。だから国民や世界各地で尊敬されるのである。

 冬柴幹事長の「防衛国際貢献省」という言葉を聞くと、危険な自衛隊をこの機会に別な性格の組織に変えたいという思考を感じる。いわば小沢一郎氏と同質の思考である。自衛隊を信じていないから生まれる考えである。

 むしろ国際常識的な国家論に立つならば、防衛庁は名称を「国防省」と堂々と名のり、さらに組織を拡大して国際貢献的な活動を行う部分を加えるべきなのである。国連平和維持活動を行うものも、正規の国防軍兵士であることは言うまでもない。そうでなければ国際的に正当な付き合いができないからだ。

 日本でたとえ防衛省になっても、どこの国もそのことを歓迎しない。どうして国際常識の「国防省」ではいけないのか。冬柴氏はその点を説明して欲しい。

※この件に関する質問が今日の「メールのお返事」のコーナーに届いています。なぜ今、省昇格なのかを説明しています。質問の答えと合わせてご覧下さい。

サマワ・デモ隊

陸自車両に投石

額賀長官帰国

「治安に問題はない」

(毎日 12月5日 朝刊)

 

[概要イラク南部のサマワ郊外で、陸自の車両が移動中にシーア派サドル師派のデモに遭遇し、投石でサイドミラーが割られたが隊員にケガはなかった。デモ隊は、「ノージャパン」と叫んで投石していた。待ち伏せしていたかは不明。

 イラク南部のサマワなどを視察した額賀防衛庁長官は4日、関西空港に民間機で帰国した。サマワ近郊で投石が起きたことについて「初めてではない。サマワの治安はよくなりつつあるという感じを受けた」と語り、治安情勢に問題はないとの認識を示した。

[コメント]今朝のTVニュースで投石現場の映像を見たが、今回の投石騒動は計画性は薄く大規模ではなかった。しかし以前にサマワ駐留のオランダ軍が、このような場面で若い兵士が発砲し住民一人を射殺したことがある。あの時は事故で横転したトラックの荷物を、住民が群がって略奪を始めたのが最初の騒動発生だった。オランダ軍兵士が略奪群衆に対する威嚇射撃が、威嚇にならないで一人に命中したものだった。

 日本社会のように武器の携帯や保有が厳しく取り締まられ、法律でも暴動を厳しく罰せる国では、投石が銃撃に転化するまでには何段もの段階がある。棒でなぐるに始まり、火炎瓶を投げるから、車で突入させるなど、騒動も段階的を経て大きく激しくなる。しかしイラク社会のように銃器が飽和状態か過飽和であると、投石が一気に銃撃に発展する可能が高くなる。だから額賀長官の「治安がよくなりつつある」という発言は極めて政治的で適切な表現ではない。使うなら「注意深く見守りたい」という言葉が使うべきだった。

 現在では現地のサマワの警察とサドル派の対立が、銃撃やロケット弾や迫撃砲の攻撃にエスカレートしていることはよく知られている。それはサマワの警察には暴動鎮圧に対する知識がないからである。日本の治安機関では暴動や暴動鎮圧(制圧)の研究は高度に進んでいる。しかし日本の政治家が正しく理解しているとは思わない。サマワの自衛隊員の1発の銃弾と同じように、日本の政治家の無知な一言が大騒乱を引き起こす可能性がある。注意深く見守って欲しい。

米、レーザー計画中止検討

共同

(読売 12月2日 朝刊)

[概要ロイター通信は30日、米国防省はABL計画の中止を検討していると報じた。これは米国防総省が進めるミサイル防衛(MD)の一つで、発射直後の弾道ミサイルを航空機に搭載したレーザーで撃ち落とす「エアボーン・レーザー(ABL)」だが、ホワイトハウスはABL計画の中止を国防総省に要請した。ブッシュ政権による予算削減政策の一環と見られる。

[コメント]敵の弾道ミサイルが発射直後でスピードが遅い上昇時に、航空機に搭載したレーザービームで破壊するというものである。弾道ミサイルの飛翔コースを、@初期上昇時 A中間飛翔時 B最終落下時の3段階に分け、その@段階を担う予定のMD計画だった。

 しかしレーガン大統領時代のスターウォーズ計画(SDI)でも、ABLは計画されて中止された経緯があった。技術理論的には可能でも、まだ現実化できる基本的な問題が解決されていないのだ。それは巨大なレーザーエネルギーを発生させ、蓄え、発射するシステムの小型・軽量化であるといわれている。早い話が、地上に作るなら可能だが、航空機に搭載できるほど小型化できていない。しかし地上に巨大な施設を作っても、その場所を回避されれば存在意義はなくなる。

 軍事技術的な問題はそうでも、軍事戦術的にはそんな兵器に価値があるのかということになる。もし敵が弾道ミサイルを発射する場合、ABLを搭載した航空機が上空で待機できる余裕があるかということである。また弾道ミサイルが地下サイロやトンネルなどに隠されると、事前に発射の兆候を捕らえることはできない。発射の兆候が捕らえられなければ、ABL機を上空で待機させることはできないからだ。

 そのように考えていくと、ミサイル防衛でABLを開発することはあくまで建前であって、本当の目的は火砲やミサイルに代わる新しい破壊兵器を開発することにある。すなわち戦場で戦車や装甲車のように機動し、搭載したレーザービームで敵の戦車や航空機やミサイルを破壊できる兵器システムの開発である。その開発資金は莫大なものになる。それをミサイル防衛(MD)用と装って、国家予算から莫大な開発資金を何度も投入させているのだ。

 このような計画では脅威が現実的でなければ、莫大な開発予算は「汚職の温床」に使われる可能性が極めて高くなる。例えば第2次大戦におけるアメリカの原爆開発(マンハッタン計画)は、ドイツのヒットラーが原爆を開発中いう現実的な脅威で計画が促進した。もしナチが原爆開発という差し迫った脅威がないなら、アメリカの原爆開発は「汚職の温床」に使われたと思う。そこで今のABL計画はそれほどの現実的な脅威は存在しない。むしろ政治家や官僚たちの「汚職」に活用される機会が多くなる。なにしろ未知の兵器の研究である。開発時の失敗ばかりか、なんでもありの開発なら、潤沢な研究予算に政治家や官僚が群がるのは当然である。

 レーガン大統領時代から、ABL兵器の開発と莫大な開発算の投入、それから進展しない技術開発と実験、最後は計画の中止を決定する大統領命令を何度か見てきた。今回もまたかと思う。

 25年間にABL兵器開発に投入された全ての予算を、アフリカの貧困対策に投入されていたら、今のように不幸を抱えた世界にはならなかった思う。アメリカ人の戦争好きをコントロールすることが、人類の平和を守る時代になってきたのか。

松花江汚染

中国メディア、

異例の政府批判

「なぜ情報を隠蔽するのか」

(朝日 12月1日 朝刊)

[概要]中国東北部を流れる松花江の汚染をめぐり、一部の中国メディアが政府の「情報隠し」を厳しく批判した。また大規模な環境汚染は、中国の報道規制にあり方に飛び火しつつある。中国の時事週刊誌「財経」最新号は、「なぜ隠蔽するのか」という記事を掲載して、吉林省松原市では河川の汚染を知らせる前に、「水道管修理」を理由に断水が行われたと報じた。河川の汚染を知らない漁民は漁を行い、その魚は市場に並んでいたと指摘した。同紙によれば、政府の発表で河川の汚染は最大で基準の40倍とされたが、実際には水道の断水が行われた16日には60倍で、翌日には300倍に達していたといういう。

 「情報隠し」が問題になったのは03年の新型肺炎SARSが流行したときで、胡錦涛主席は市民の健康にかかわる情報は速やかに公表すると繰り返してきた。しかし時事週刊誌「中国新聞週刊」は関係省庁が早期の対策を取らなかったして指摘した。メディアが地方の政府を批判することがあっても、中央政府を批判することは異例である。

 中国政府は報道を許容する姿勢を見せていたが、今は態度を硬化させ、この報道は国営新華社通信の原稿だけを使うように求め、独自報道の禁止を指示した。

[コメント]報道の自由は社会の重要インフラのようなものである。情報が適切に公開されず、社会不安や知らされないままに実害が高まれば、それは社会全体が大きく混乱する危険な要因になる。それが環境や健康問題に関することだと衝撃度はさらに大きい。

 私が小学生の頃、小さな町内で赤痢騒動が起きたことがある。まず保健所の検査で数人が赤痢と診断された。すぐ隣町にある隔離施設に送れた。さらに保健所が検査を行ったところ、赤痢の疑いがある者が数名見つかった。さらに数日後に数人と数週間で赤痢で隔離された人が数十名になった。小さな町内でも特に商店街から隔離される人が増えていった。こうなれば地元のマスコミも黙っていない。地元の新聞は私の町を集団赤痢感染したと連日の記事で報じた。

 その当時は人通りの多かった商店街も、夏の昼間、だれ一人歩いていない白く輝く異様な光景を覚えている。おそらく赤痢騒動は1ヶ月ぐらい続いた。町の人は消毒や手洗いの励行など、あわただしい夏だった。ところがこの赤痢が間違いだったのだ。保健所が間違って誤認赤痢と気がついた。すぐに隣町に隔離されていた人たちが帰ってきた。そして昼間、だれ一人歩いていない商店街を、保健所の所長さんが謝罪に商店街の各商店を一軒一軒まわっていた。私たち小学生は所長さんを遠巻きにしてついて歩いた。

 当時、薬局をしていた私の家に来ると、私の父は所長さんに、「間違いでよかった。これからも間違いを恐れないでやってください」と話したのを覚えている。父は私に「間違いは正せばいいが、保健所が本当の赤痢が気がつかないで広がれば、それこそ町は大被害を被るからだ」と話した。

 もし中国の河川が薬物で汚染され、数百人、数千人の死者が出れば、まさに事態は当局が恐れる逆の様相を示すだろう。すなわち危機管理ができない未熟な国として、中国のカントリーリスクが高くなり、中国に投資やビジネスをおこなうのを控えるようになる事態を招くのだ。

 この問題は第1は有毒物質を扱う化学工場の安全対策だが、第2には毒物汚染事故を起こした場合の危機管理能力が重要なのだ。この危機管理(リスク・マネージメント)には情報をどのように統括するかという技術(ダメージ・コントロール)も含まれている。中国に危機管理という考えが普及していないので、メディアを単に統制(封鎖)するという反対の行動を引き起こす。このように中国が抱えている課題は多い。




※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。