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この情報の最も新しい更新日は11月30日(木)です。

米有力メディア

「イラク内戦」表現広がる

「ベトナム戦争時と酷似」

(毎日 11月30日 朝刊)

[概要]イラクの治安状況を「内戦」と表現する米報道機関が増えている。NBCテレビ、ニューヨーク・タイムス紙、ロサンゼルス・タイムス紙などの有力メディアだ。しかし「イラク人は内戦と言っていない」(ハドリー大統領補佐官)とブッシュ政権は認めていない。

 内戦という言葉を使うと判断したのは、社内で担当編集者が議論したり、専門家の意見を聞いて判断したという。しかし複雑な現場の状況を慎重に判断して使用するという。

 クリスチャン・サイエンス・モニター紙なども「内戦」という言葉を使用しているが、「明確な表現ではないので、追加説明を加えている」(インターネット・サイトで編集幹部)。ボストン・グローブ紙は「他の報道機関の動向を見て検討中」としながらも、「ベトナム戦争で米国が勝てないという見方を米メディアが報じ始めた時の状況に似ている。世論の動向に影響を与えそうだ」との専門家の見方を報じている。

[コメント]米軍のイラク駐留を内戦に巻き込むというのは元もとアルカイダ(外国武装勢力)の作戦であった。イラク国内でシーア派とスンニ派の武力対決を煽り、そこに出てきた米軍の治安部隊をIEDや待ち伏せで攻撃するという作戦である。しかし今ではアルカイダが片方に自爆攻撃を仕掛けなくとも、双方の憎しみが高まって攻撃が拡大し激化している。

 またシーア派が警察などの治安組織に武装組織のメンバーを入れ、「殺人部隊」を暗躍させていることで取り締まりは期待出来ない。火事はどんどんと延焼しているのに、消防活動は何も出来ないという状況である。

 双方に明かな指導者や統一した組織がいないから、これはイラク内戦ではないという意見もあるが、一部勢力間の小競り合いという域は越えていると思う。すでに国内難民は数十万人を超えたという情報もある。宗派の違いを理由に、従来からの場所に住めないという国内難民である。

 そうなると今のイラク政府の位置づけが変わってくる。これが内戦となればシーア派、スンニ派、クルド人の今の連合政府は意味のない政府になる。3つの勢力が分裂して新しく3つの政府が誕生し、その政府間で停戦交渉を始めることになる。そうなれば今のイラク政府はますます米国の傀儡(かいらい)としての特徴が目立つ。

 その後の展開を予測すると、北部のクルド人はトルコのクルド人と組んで建国運動を始めるだろう。南部のシーア派はイランとの軍事同盟を強化する。すると西部のスンニ派は強力なシーア派に対抗するために、隣国シリアとの軍事同盟関係を強化することが迫られる。

 穏健といわれるヨルダン、サウジ、トルコなどは、今後、イラク内戦の影響をもろに受けることになる。そんなことを推測するだけで、中東の近未来が恐くなってくる。

露の政商事務所

 ポロニウム痕

保安局元幹部毒殺

(産経 11月29日 朝刊)

[概要]ロシア連邦保安庁(FSB)の元幹部、リトビネンコ氏が毒殺された事件で、ロシアの政商ベレゾフスキーの事務所からポロニウム210の痕跡を発見した。

[コメント]政商ベレゾフスキー氏はロシアから英国に亡命中である。殺されたリトビネンコ氏はそのベレゾフスキー氏の警備を担当していました。

 ここで英国在住の方に質問があります。私はポロニウム210は煙草に仕掛けられた可能性があると思います。すでにリトビネンコ氏が立ち寄ったホテル、すしバーなどでポロニウム210の痕跡が見つかっています。微量のポロニウムが煙草に仕掛けられ、数回にわたって喫煙で吸引した可能性があります。ですからリトビネンコ氏に喫煙の習慣があったか調べて頂けませんか。ポロニウムの痕跡は煙草の煙を吐き出した時に、部屋に壁や床や天井に残った可能性です。とにかく喫煙の習慣があるかないかが重要です。そのことを調べるだけの価値があると思います。

 もし煙草であれば新品の煙草を加工して、未開封のパケージの箱に入れれば、ポロニウムを数回に分けて吸わせることは簡単です。

市場規制に抗議

北朝鮮 住民の乱

死者情報も

(朝日 11月29日 朝刊)

[概要]北朝鮮北部でロシアや中国の国境に近い会寧市で、自由市場の管理を巡って住民達が当局に抗議行動をとる騒ぎがあった。今年9月には当局とのもみ合いで女性一人が死亡したという情報もあり、住民20人が拘束されたという。北朝鮮で当局への抗議行動が明らかになるのは異例だ。

 会寧市には「南門市場」と呼ばれる自由売買の市場があり、住民が食糧などを持ち込んでいる。当局はこの市場の利用時間や時間外取引の規制を強化している。これに反発して住民が抗議行動を起こしたという。

 11月上旬には住民数十人が市場管理当局に押しかけ、住民18人が拘束された。またこの抗議を扇動したとして別の2人が人民保衛部に拘束された。これに先立ち9月にも抗議行動があり、女性1人が当局者に殴られて死亡したという。

 北朝鮮では02年からの「経済改革」を受け、公認市場の開設と管理強化が進められている。ただ食糧事情が悪化し、住民の間には不満が高まっている。

[コメント]私は北朝鮮ではクーデターは起こりにくいと思っている。あまりにも強固な独裁支配体制が築かれ、クーデターが起こる前に通報体制で潰される(粛清)からである。しかし有力側近同士の権力争いは起きる。例えば金正日の後継者をめぐる確執などから、側近同士の激しい対立が起こる場合が考えられる。また各地の軍隊の部隊間で、食糧や待遇などを巡っての対決が起きると予測する。隣の部隊にはトラックで肉が運び込まれたのに、我が部隊には肉どころか米も配給されていないという不信感が争いの原因になる。

 さらに各地の住民が飢餓に苦しみ、地方政府機関の食糧庫を襲うという飢餓暴動も考えられる。事実。このような地方暴動が90年代後半に起きたという情報もあった。しかし住民が襲った食糧倉庫の中には、本当に食糧が備蓄されておらず、危機感を持った地方政府が緊急に中央政府から取り寄せて住民に食糧を配ったという。

 やはり北朝鮮で大規模な暴動が起きる原因になるのは食糧問題だと思う。今までは老人や子供など、社会的弱者が飢餓の犠牲になっていた。これからは若くて体力があり。意思の強い階層にも飢餓が広がっていく。今までのように北朝鮮当局は飢えるものを放置することはできない。しかし北朝鮮には配るべき食料や燃料がないのである。

 それと今回の騒ぎが米が収穫される秋の季節に起きた点である。秋は米や芋などの保存食料が収穫できて、北朝鮮の社会では比較的に落ち着く季節である。秋という時期でも騒動が起きるなら、秋の保存食料を食べ尽くした春先なら多発することになる。

 はたして北朝鮮は今年の冬と来年の春を乗り切れるか。北朝鮮は早く核実験の成果と、食料や燃料援助と交換したいところだが、六カ国協議で北朝鮮が援助を得られる見通しはついていない。むしろ5カ国の対応は北朝鮮の期待とは逆になりつつある。

 更新は午後に行います

   (11月28日)

  今朝は早朝から、ロシア軍のスペッツナズと、ロシア連邦保安庁(FSB)のアルファー部隊のことでバタバタしています。一段落して、午後に更新を行います。せっかくアクセスして頂いたのに申し訳ありません。ロシアの元スパイ暗殺事件の絡みです。

 午後からも、断続的に仕事関係の電話や取材(インタビュー)が続き、結局、更新できませんでした。すいません。これはメディアが年末進行に入ったためと思われます。年末・年始を休むために、その分を12月の始めに予定原稿(番組)を作っておくのです。ですから取材内容も北朝鮮ものから、イラク戦争とかUFO関連や、中国海軍の潜水艦と米空母など、多岐にわたるテーマが特徴です。

 年末・年始に制作現場、印刷所、編集プロダクション、輸送会社、書店などがゆっくり休むための知恵だと思います。

中国

核関連輸出の罰則強化

(毎日 11月27日 朝刊)

[概要]華僑向け通信社「中国新聞社」(電子版)の25日付によると、中国政府は核関連物資の輸出規制条例を改正し、条例違反者に最高で取引額の5倍の罰金を課す強化を改正したという。

 厳格に輸出規制する対象に「ウラン濃縮・重水生産関する設備や技術など」を追加し、輸出相手国が中国政府の同意なくウラン濃縮関連の施設や技術を利用しないことを保証するように求めている。

[コメント]これが相手国として北朝鮮を対象としていることはいうまでもない。北朝鮮に中国の濃縮ウラン施設や技術を悪用活用されないように警告している。またこの強化には重水という北朝鮮では未開発の技術分野も含まれている。この重水という部分はパキスタン向けの言葉と考える。これには中国が北朝鮮の核兵器開発を、パキスタンのように背後で協力しているという国際批判をかわす意味が込められている。

 それにしても最高が取引額の5倍という罰金だが、仮に1000万円の取引額なら罰金は5000万円となる。本来なら中国で違反者は死刑が妥当と思うが、そのあたりの軽さが北朝鮮への強い風当たりを避けている。しかし違反すれば罰金以外に、死刑同様の実刑が執行されると思う。

 はたして胡錦涛主席は金正日体制を崩壊させる気があるのかという点だが、私は北京オリンピックまでに金正日体制を崩壊させると考えていた。しかし昨日、近所の図書館で読んだ月刊のオピニオン雑誌では、外務省出身の岡崎久彦さんは北京オリンピック後と推測されていた。韓国の盧武鉉大統領の長い任期を考えると、北京のオリンピック後の可能性もあると思うようになってきた。

 しかしそれでは北朝鮮国民の苦しみはまだまだ続くことになる。北京オリンピックの前後といわず、早ければ北朝鮮が最大の食糧危機を迎える来年春頃までに、金正日体制が崩壊することを切望している。

ロ情報機関元幹部毒殺

露政権は防戦躍起

「政治利用を危惧」

(産経 11月26日 朝刊)

[概要]ロシアのプーチン政権を批判していた連邦保安庁(FSB)の元幹部、リトビネンコ氏が毒殺された事件で、プーチン政権は「ロシアを陥れようとするもの」と関与を全面否定し、ロシア批判への防戦に躍起である。しかし毒殺に使用されたポロニウム210がロシアで開発されたものから、同政権は苦境に立たされている。

 プーチン大統領は24日、ヘルシンキでの欧州連合(EU)とロシア首脳会談後に記者会見して、死亡したリトビネンコ氏に哀悼の意を表し、「死因が確定されない中では、英国がその死を政治利用しないように求める」と牽制した。さらにロシアのヤストルジェムスキー大統領補佐官は、著名なジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんの先月の暗殺では、ロシアを陥れようとする者たちが主導したと述べ、政権にとっては逆にダメージになっていると立場を強調した。

 殺されたリトビネンコ氏が倒れる前にロンドンで会っていた元KGB将校、ルゴボイ氏も事件の関与を否定した。ルゴボイ氏はプーチン政権に指名手配され、現在英国にいるロシアの元政商ベレゾフスキー氏の警護を担当している。

 ロシアのラジオ放送エホ・モスクワブイが25日に行った世論調査では、同事件にプーチン政権が関与しているとみる視聴者と、関与していないとみる視聴者は半々となった。

[コメント]ロシアではすでにKGBが復活し、KGBの伝統を引き継ぐFSBは、暗殺や謀略の活動を全面的に再開している。元KGBメンバーはロシア政権の中枢ばかりか、経済・産業界や金融や、石油・天然ガス業界まで、プーチンを中心にした元KGBメンバーが中枢を占めている。

 そして今回の暗殺であるが、私が聞いたところではポロニウム210が毒薬として使われたのは初めてである。ネットで調べたところ、ポロニウム210の毒性は致死量が1兆分の7グラムとわかった。昨日、友人のTV記者が東工大の教授にインタビューをしたとき、ボロニウム210の1グラムで1000万人から1億人の人を殺せる猛毒といわれたそうである。ただサリンやVXのように皮膚から体内に吸収されない。だから口や鼻から、食べ物や飲み物に混ぜるとか、あるいはガス状や煙草などに混ぜて呼吸で体内に吸飲するや、注射器などで体内に注入する方法がある。

 私が特に注目したのは、死亡後に尿や血液からポロニウム210の放射能物質が検出されたことである。もしFSBのエージェントが暗殺を実行したなら、事故死、自然死、あるいは銃などによる狙撃など、その暗殺テクニックは高度なものがある。しかしあえて毒薬のポロニウム210を選択したのは、確実に死に至らせる猛毒であり、死亡後に死因が確実に特定出来ることである。だから今回の暗殺には「見せしめ」の効果を狙っていると推測する。

  ロシア政府やプーチン政権に反抗したり批判する者への見せしめである。逆らえば殺すというメッセージを込めた暗殺である。とてもではないが、FSBからポロニウム210を使って暗殺を仕掛けられたら、そこから逃げることは不可能に近い。

 それにポロニウムはアルファー線だから金属の缶で簡単に運搬できる。アルミ箔に包んでも運搬出来ると聞いた。

 今回の事件によって核物質の殺戮範囲が拡大した。@水爆や原爆の様に熱核爆発で大きな被害を与えるもの。Aダーティーボムの様に核物質を特定の場所に散布して人体などの被害を与えるもの。Bそして今回登場したポロニウムやプルトニウムなど猛毒の放射能物質で暗殺させるもの。 などでである。いままでの細菌兵器(例 ボツリヌス菌)の毒性とは比較にならないほど猛毒が殺戮兵器として登場した。これを”見せしめの暗殺”と言わずして何というのだろうか。

 そして蛇足ながら付け加えると、頭髪が抜け、唇がはれて、裸でベッドに横たわるリトビネンコ氏の写真を誰が公開したのか。あれほどポロニウム210の”見せしめ効果”を高めたものはなかった。

久間長官答弁

米の核搭載艦 領海通過

 「緊急時 やむを得ぬ」

(朝日 11月25日 朝刊)

[概要]久間防衛庁長官は24日の衆院安全保障委員会で、政府が非核3原則で禁じている核兵器を搭載した米軍艦船の日本の領海通過について、「緊急事態の場合はやむを得ない」と答弁し、海底火山の爆発などの災害時に限っては、事後報告でもかまわないとの見解を示した。

 政府は核搭載の艦船が領海通過は核の国内持ち込みにあたるとして、米国の事前協議で拒否するという立場をとっていた。久間長官の「緊急時は事後報告でも構わない」という政府答弁は初めてである。

 麻生外相や中川政調会長が核保有議論の必要性を言及しているが、安倍首相は非核3原則の堅持を強調している。久間長官の発言は空洞化が指摘される「核を持ち込ませず」の解釈緩和につながる可能性もある。

[コメント]これで核の持ち込み(領海通過)が該当するのは、米海軍の中でもロサンゼルス級攻撃型原潜である。米海軍の空母や駆逐艦などには、平時にも核兵器が搭載されているわけではない。冷戦が終結した後の1991年9月に、米ソ大統領が話し合って平時では海軍艦船に搭載している核兵器を撤去することに合意した。これが「ブッシュ・ゴルバチョフ・イニシアチブ」である。さらに米海軍は94年に「核態勢見直し」を行い、空母を含むすべての艦船から核兵器を扱う施設(保管・組み立て・調整)を撤去している。ただし2つの例外がある。

 2つの例外とは、戦略型弾道ミサイル発射潜水艦(SLBM)の場合と、攻撃型原潜のロサンゼルス級に核弾頭つきの巡航ミサイル・トマホークの配備である。しかし核弾頭着きのトマホークを平時に緊急運用する可能性が極めて低いことから、米海軍の攻撃型原潜には核弾頭トマホークは搭載されていないという証言がある。

 だから久間長官の発言は、平時で米海軍・艦船の「核通過」は考えられないが、北朝鮮「核」有事などの緊急事態の際に、攻撃型原潜に核弾頭トマホークが搭載された、事前通告無しの「核通過」があるという意味である。

 だからこれは明らかに、非核3原則をなし崩しにするものである。政府はどのような場合でも「核の通過は事前通告の対象になり、事前通告すれば日本は非核3原則で拒否をする」でよかった。米軍は北朝鮮「核」有事になれば、グアムやハワイから飛来させた核爆弾搭載のステレス攻撃機を使うことは明白である。

 今の時期に久間長官がこう答弁した目的は、日本で米軍の核の存在感を示し、日本で広がる核議論を沈静化させたい目的を感じる。北朝鮮の核実験直後、ライス国務長官がすぐに来日して、「アメリカはこれからも日本に核の傘を提供する」と再確認したようなものである。

米標的のミサイル迎撃研究

集団的自衛権

 正面から議論を

解説部

 勝股秀通氏

(読売 11月24日 朝刊)

[概要]「米国を標的とする弾道ミサイルを撃ち落とせるか」。この問題の発端は米国のシーファー駐日大使が、先月、講演での発言だった。「米国はミサイルの標的が日本でも撃ち落とす義務があるが、日本は同様の義務を負っていない」という不満を日本政府に述べた。

 しかしこの重要問題は、政府の中では決着した経緯がある。昨年の国会で、弾道ミサイルを迎撃するために自衛隊法が改正された。しかし米国を狙った弾道ミサイルを迎撃するためには、集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈を変更する必要がある。しかしそんなことを望むべきもないと、防衛庁は”逃げ道”を考えた。それは「弾道ミサイルとその他が日本に飛来する恐れがあり、落下による被害を防止するため」を迎撃要件とした。”その他”にはミサイルの部品が入るとした。すなわち北朝鮮がハワイやグアムを狙えば、弾道ミサイルは日本上空を通過することになる。その場合、途中でミサイルの推進部分が切り離されると、日本に落下して被害が出る可能性がある。そこで米国(グアムやハワイ)に向かう弾道ミサイルでも、日本の個別自衛権で迎撃出来るという理屈が成り立つとした。当時の防衛庁幹部は「集団的自衛権の議論を避ける妙案」と評していた。しかし米国がこれで納得するわけがない。

 来年末から配備が始まるイージス艦のSM3ミサイルは、北朝鮮のノドンミサイル(射程1300キロ)の迎撃を想定している。グアムやハワイに向かう弾道ミサイルには、高度や速度から迎撃出来ない。しかし日米が開発中の能力向上型・迎撃ミサイルでは迎撃ができる可能性がある。だから日本は米国を納得させるために、集団的自衛権の行使を容認する議論や研究をすることが政治の責任である。

 日本は過去の法案審議で、戦場を「前線」と「後方」「非戦闘地域」とどと、日本でしか通用しない理屈で無理やり区別してきた。しかし政府は、同盟国に集団的自衛権の行使を容認するなど、国民にわかりやすい形での議論することを覚悟すべきだ。

[コメント]この議論をレベルアップすると、現在、日米で共同開発の能力向上型・迎撃ミサイルは集団的自衛権の行使(解禁)を前提にしていることになる。集団的自衛権を正面から議論することは賛成であるが、すでに集団的自衛権の行使を前提に国家戦略が始動し、そのことを後追いで認知させていく政治に危うさを感じる。そんな具体例がいくつもあった。その最も顕著な例が、「自衛隊がいるところが非戦闘地域だ」(小泉首相 イラクの陸自派遣で)という居直り発言である。

 最近、各地の米軍基地で政府の基地対策が座礁している。政府はどうせ住民に知らせても理解出来ないし、それに、これは政府の既定方針で、地方が口を挟むことはできないという思い上がりが、政府の基地対策を次々と座礁させていると思う。

 そしてこんどは集団的自衛権である。北朝鮮はアメリカに向けて発射出来るミサイルは開発出来ていない。それを開発できたと仮定しようという。また日本は北朝鮮からアメリカに届くミサイルを迎撃出来る兵器を持っていない。しかし、もしかしたら出来る可能性があるかもしれないと仮定しようという。そうしなければアメリカが怒るし、日本はアメリカの信頼を得られないと仮定しようという。とにかく手前勝手にどんどんと仮定してすることばかりである。

 これからは、イラクやアフガンに自衛隊の戦闘部隊を送らなければ、アメリカは怒るし、日本はアメリカの信頼を得られないと仮定して、集団的自衛権をアメリカ軍に限って解禁しよと提案する。どんどん仮定の範囲が広がっていく。

 昔、中曽根首相は日本の武器輸出禁止3原則を、アメリカに限って軍事技術を解禁したことがある。その結果、中曽根政権はレーガン大統領の庇護を受けて長期政権を獲得した。小泉前首相はインド洋とイラクの戦場に自衛隊を送ってブッシュ大統領の庇護を受けた。こんどは安倍首相が集団的自衛権・行使を次期米大統領に献上して、自分の政権の庇護を受けたいと願っている。そして一部の知識人といわれる人が、そのアイディアを安倍首相(権力者)にささやいて庇護を得たいと願っている。それで迷惑なのは、戦場に手を縛られて派遣される自衛官たちである。

 私は反米ではなく親米だが、ここまでアメリカへの軍事協力を強要されると嫌になることがある。とにかく憲法が禁じた集団的自衛権なら、憲法を改正して集団的自衛権の行使がよいか議論をすべきである。憲法改正を待てなくて、仮説ばかりで”正面からの議論”しましょうはおかしいと思う。これは飲酒運転が禁止されているのに、飲酒しても運転出来る車の研究をしないと、急いでいる時に間に合わないと主張しているのと同じだ。

 シーファー駐日大使の発言は明らかに間違っている。どのような経緯の中で出た発言か詳しく知りたい。

日本版NSC

構想の実現重視

初会合開く

 権限強化焦点に

(毎日 11月23日 朝刊)

[概要]安倍首相が強い意欲を見せる日本版NSC(国家安全保障会議)の「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」が具体的な構想の検討に入った。委員は首相、官房長官、補佐官3人、有識者11人で構成する。

 首相は就任前にイメージとして米大統領府のNSCをあげ、米NSCは政府関係機関の意見調整や大統領への助言を行うことを目指している。日本版NSCも、@外交・安保政策の総合的検討 A国家長期戦略策定 B情報収集・分析の強化 を目指すことで一致している。

 しかし委員の一人である佐々淳行元内閣安全保障室長は、「米大統領の絶大な権限のNSCを真似ても、日本では官僚の反対でつぶされるだけ。必要なのはポストではなく、権限」と指摘し、首相補佐官の権限強化が焦点になるとの話した。同会議は来年2月末までに報告書をまとめる予定。

【毎日社説】日本版NSC 司令塔強化の具体策を

 安倍首相は国会の所信表明で、「外交・安保の国家戦略を政治の強力なリーダーシップにより、迅速に決定できるよう、官邸の司令機能を強化、情報収集機能の向上を図りたい」と語った。しかし役所間の連携、調整不足はしばしば露呈する。例えば北朝鮮の核実験では、外務省は周辺事態を適応すべきという、しかし防衛庁は「まだそんな事態ではない」と異論を唱えた。最近はミサイル防衛(MD)で、官邸サイドから米国に向けた弾道ミサイルを迎撃することが、集団的自衛権に抵触するかを検討したいという発言が飛び出した。しかし防衛庁長官は、「それは技術的に困難だ」と困惑している。

 米国のNSCでは約200人のスタッフを束ねる国家安全保障担当の大統領補佐官は、政権の枢要メンバーである。しかし権限が集中する米大統領と違い、議院内閣制の日本にNSCがなじむのかという指摘もある。むしろ同じ議院内閣制の英国官邸の国防外政事務局などを参考にすべきとの意見がある。

 縦割り行政の解消と情報収集・分析の一元化は日本の国家戦略に欠かせない。しかし日本版NSCが、その解決策となるなら議論の方向は間違っている。日本版NSCは大風呂敷を広げないで、実現できることを整理して具体的な提言をして欲しい。

[コメント]官邸サイドからの発言で、「米国向け弾道ミサイルを日本のMDで迎撃できるか検討する」(安倍首相)という集団的自衛権・見直し発言を聞いた時、物理的に出来もしないことで”大見得”を切る低いレベルの日本版NSCの無能さを感じた。

 この程度の基本的な間違いなら安全保障問題担当を自認する小池百合子補佐官が、スタッフの助言を得て安倍首相にアドバイスすべきなのである。しかし小池補佐官は米大統領の安全保障担当補佐官のカウンターパートナーは私よと、塩崎官房長官とさや当てすることしか関心がない。むろんMDの知識や安全保障問題に関しても経験や知識はない。

 いったい誰が安倍首相に日本のMDで集団的自衛権を崩せるとアドバイスしたのか。誰が集団的自衛権の禁止を、米国に向かう弾道ミサイルを日本が迎撃すれば解禁できると話したのか。

 小泉前首相はブッシュ大統領支持のために、戦場のインド洋とイラクに自衛隊を強行的に派遣した。その結果、ブッシュ大統領から小泉政権は強い支持が与えられた。そのことで小泉政権は中国や韓国と靖国問題で対立しても、長期政権を維持することが出来た。このことを教訓にして安倍首相の日本版NSCは、2年後の米新大統領に集団的自衛権の解除をプレゼントすることが活動の主任務である。そして米新政権から強い支持を得て、安倍首相の長期政権と安定化をするためである。

 しかし自衛隊のイラク派遣にはアメリカ側にアミテージ国務副長官がいた。アミテージ氏は日本の憲法や自衛隊の制限を知り尽くしていた。その上での自衛隊のイラク派遣だった。だからなんとか自衛隊はサマワで切り抜けられた。

 今回は日本側から次期大統領に、日本自らが集団的自衛権行使を「献上」するというプレゼント作戦である。そこに政策レベルの浅知恵を感じてしまう。これでは詐欺師が安倍政権に取り入るために、悪い心の者には”見えない着物”を売り込むようなものである。

 集団的自衛権行使は憲法改正の中でも難題のひとつである。その最大の難題をわざわざ事前に引き出して、憲法改正前に集団的自衛権行使だけの解禁を探るということができると思っているのか。それが今回の安倍首相のMD発言につながっている。

 私は安倍首相がNSCで自らの墓穴を掘っているように見えてくる。まさしくハンカチを大風呂敷の如くに大ボラを吹いている。今の安倍氏は指導力を固める時なのに、それに逆行する愚行を行っていることは間違いない。むろん安倍氏にはそのような知識はないから、だれがそのようなデタラメを安倍氏に吹き込んでいるかである。

 ”安倍さん、集団的自衛権の行使を米新大統領に献上する様な愚策はやめないさい。堂々と憲法改正の正道を歩くべきなのです。このままでは安倍政権の命取りになります”ちょっと安倍新政権に期待した分、応援しておく。

潜水艦接触

スクリュー音 探知遅れる

海幕長

 「一歩間違えば大惨事」

(読売 11月22日 朝刊)

[概要]宮崎県・都井岬沖の海上で21日、海上自衛隊の練習潜水艦「あさしお」とパナマ船籍のケミカルタンカー「スプリングオースター」(4100トン)が接触した事故で、吉川英治・海幕長は「一歩間違えば大惨事になっていた」と話し、あさしおがタンカーのスクリュー音を事故直前まで探知できなかったことを「通常ならあり得ない」と語った。第10管区海上保安本部は、あさしお側が十分な安全確認をしていなかった可能性もあるとして、業務上過失往来危険容疑の適応も視野に、双方の乗員から事情を聞いている。

 タンカーは船底中央に2ヶ所の穴が開き、船内への浸水が確認された。タンカーは化学薬品を積み、中国に向けて時速22キロで航行中だった。

 潜水艦は船体の真後ろを除いて水中のスクリュー音などの音響を探知でき、上昇する場合は死角が生じないように船首の方向を変えながら航行する決まりになっている。あさしおの乗組員は「タンカーのスクリュー音を探知する前に、別のスクリュー音が遠ざかって行ったので、近くに船がいないと判断し、上昇を開始した」と説明している。スクリュー音の確認が遅れた理由について、「通常あり得ないことだが、いろいろな条件が重なると、あるのかもしれない」とあいまいな説明にとどまった。

[コメント]昨日の夕刊からこの事故が報じられているが、過去の潜水艦事故の例として、01年2月にハワイ沖で実習船「えひめ丸」に衝突し9人が犠牲になった米海軍の原潜「グリーンビル」事件や、88年7月に横須賀沖で遊漁船「第1富士丸」と衝突し乗客30人が死亡した海自・潜水艦「なだしお」の衝突事故が挙げられている。しかしこの2つの事故例は明らかに今回とは状況が違いすぎる。

 潜水艦「グリーンビル」は緊急浮上中の衝突事故で、潜水艦のソナー(音響探知機)は急浮上中は使えない。急浮上する前の段階で海上船舶の位置確認を怠った事故である。また潜水艦「なだしお」は浮上して航行中の衝突事故で、潜水艦と遊漁船のどちらかが海上で船舶の衝突を防止した航則法に違反したために起きた衝突事故である。今回の潜水艦「あさしお」はソナーで聴音・警戒中に発生した衝突事故である。

 今回の衝突事故で、過去の潜水艦の事故例で参考になるのは、81年4月9日に鹿児島県沖の東シナ海で米原潜「ジョージ・ワシントン」が日本の貨物船「日昇丸」と衝突し沈没させ、船員2名が死亡した事件である。この事件は「ジョージ・ワシントン」が当て逃げしたため、その方が大問題になった記憶があると思う。原潜ジョージ・ワシントンはグアムに逃げ帰って入港した時に、船体の傷を日本の記者が撮影して事件との関係が明かになった。また衝突時の詳細も生存者の証言で明らかになっている。

 まず日昇丸で生き残った日本人船員は、事故当時の海面は荒天でも、上空には航空機が旋回していたと証言した。次ぎにこの航空機は米海軍所属(三沢基地)のP3C対潜哨戒機であることが判明した。次ぎに米軍のP3Cはこの海域で、米原潜と対潜訓練を実施していたことがわかった。それでは原潜ジョージ・ワシントンは何をしていたかとすれば、海上の日昇丸の下に隠れて上空のP3Cの探知から逃れようと訓練をしていたのである。

 潜水艦は貨物船やタンカーの下に隠れることで、そのスクリュー音や機械音を雑音(海上の船の音)の中に隠すことが出来る。またP3Cのように海面上空の磁気を計測して、海中の潜水艦を発見する磁気探知機(MAD)からも逃れることができる。その訓練をジョージ・ワシントンは鹿児島沖で行っていた。しかしジョージ・ワシントンはポラリス発射戦略原潜(SLBM)を改装して訓練艦にしていた。改造しても通常の攻撃型原潜より大型で、運動性もはるかに劣っていた。そのため日昇丸の下に張り付いた時に、接近しすぎて衝突し沈没させた潜水艦事故であった。

 これを昨日の事故にあてはめるなら、練習潜水艦「あさしお」はタンカーに下に張り付く訓練を行っていたところ、海底地形や早い潮流の影響で予想外に船体が浮上し、タンカーに接近したために急潜航を始めたところ、潜水艦の船体後部の舵がタンカーに衝突したと考えるのがごくごく普通の考えとなる。むろんこれも推測だが、浮上訓練中の事故とか、他の船舶の音と混ざって混乱したなどという言い訳よりも、はるかに信ぴょう性が高い潜水艦事故の推測なのである。

 しかし民間のタンカーや貨物船を使って潜水艦が訓練を行っているとなると、71年に航空自衛隊のF86戦闘機(訓練機)が全日空機に衝突(墜落 死亡162人)した「雫石事件」を連想してしまう。海自はこのような比較になることを恐れているのではないか。

 これから今回の潜水艦衝突事故の本格調査が始まるが、もし意図的に訓練内容を隠したり、誤魔化せばさらに傷口を広げることになる。同じような衝突事故が起こることを防止するためにも、今回の事故解明は正確に行って欲しい。

注意・・・・・雫石事件では、最高裁で自衛隊機側の無罪判決が確定しています。事実関係は最高裁の判決文に従うとして、ただし当時の報道では民間機と戦闘機の特性から、視界が狭く動きの鈍い旅客機に、視界も広く運動性の高い戦闘機が衝突したという記事が大半だったと思います。この件の質問メールが「メールにお返事」に届いています。

塩崎恭久官房長官

解釈見直しを検討

「ミサイル防衛」

  福田康夫元官房長官談話

(毎日 11月21日 朝刊)

[概要]塩崎官房長官は20日の記者会見で、福田元官房長官がMD(ミサイル防衛)導入時に、集団的自衛権とMDの関係と否定した福田元幹事長談話(03年12月)を、「談話の真意はどこにあるのか、議論を本格的にやっていかなければいけない」と述べ、福田談話の解釈を見直すことが可能か検討する考えを明らかにした。

 福田談話はMD導入で、「第3国の防衛のために用いられないから、集団的自衛権の問題は生じない」としていた。日本政府は米国向けの弾道ミサイルのMD迎撃は、集団的自衛権(憲法違反)の行使にあたるという考え。しかし安倍首相はこの政府解釈を疑問視し、集団的自衛権行使の解釈変更を研究テーマにすることを表明した。塩崎長官の発言は日本のMDで迎撃を可能にするには、福田談話との整合性が問われることから、談話自体の解釈を検証する必要があるという判断だ。

[コメント]安倍首相はワシントン・ポスト紙のインタビューで、日本の上空を通過して米国に向かう「米標的ミサイルを迎撃」することが、日本の憲法が禁じた集団的自衛権行使にあたるか研究すると述べている。(産経 11月15日 朝刊)。同日に中国海軍のソン級潜水艦が米空母キティホークに接近・浮上する事件が報じられたので、このHPには空母関連の記事とコメントを掲載したが、安倍首相のMD発言を奇妙な気持ちで読んだ記憶がある。

 アメリカに向かう弾道ミサイルを日本が迎撃するといっても、イージス艦搭載(予定)のSM3対弾道ミサイル(射程500キロ程度)で迎撃することになるが、これはノドンのような中距離弾道ミサイル(IRBM)で飛翔高度(ミッドコース)で高度200キロ〜300キロ程度に有効といわれている。しかし北朝鮮や中国からアメリカに向かって発射されるのは長距離弾道ミサイル(ICBM)は、高度が800キロ〜1000キロ以上を飛翔する弾道ミサイルである。どうしてイージス艦搭載のSM3で迎撃できるのか。また北朝鮮からアメリカ本土(西部カリフォルニア州)を狙って発射すれば、その軌道は北海道よりも北の上空を飛翔することになり、日本上空を通過することにはならない。ハワイやグアムの米軍基地を狙えば北海道上空を通過する可能性があるが、北朝鮮が滅亡をかけて発射する弾道ミサイルが、ハワイやグアム攻撃ではちょっと威圧効果が薄すぎるように感じてしまう。

 すなわち日本で米国向けの弾道ミサイルを迎撃することは、テポドン1(98年8月発射)やテポドン2(06年7月発射)の発射失敗例を無視しても、軍事技術的には不可能に近いことなのである。

 それなのに安倍首相が日本から米国向けMD迎撃の可能性を検討するというのは、軍事的な意味ではなく集団的自衛権の解釈を変えるために行う極めて政治的な検討ということになる。これは憲法を改正する前に、集団的自衛権行使の禁止を崩したいからである。

 いくら走っても時速40キロ程度しか出ない自転車が、高速道路で時速100キロ以上の速度で走った場合のスピード違反の取り締まりを検討する様なものである。そもそも高速道路に自転車は乗り入ることができないのである。この奇妙さを産経新聞の11月15日の記事で感じた。

更新、休止のお知らせ

11月17日より、20日の間

 親戚の慶事のため休止

広島に帰郷します

(11月17日)

   郷里の広島で、私の甥(おい)が結婚式をあげます。その結婚式に出席するために帰郷します。ホームページの更新は4日間ほど休止します。20日(月)の正午には帰京します。広島には携帯電話を持参しています。仕事関係の方は自宅に電話を頂ければ自動的に携帯に転送します。

 せっかくアクセスして頂いたのに申し訳けありません。久しぶりに郷里の料理(”かき”や”おでん”や”お好み焼き”)を味わってきます。それからちょっとお酒も・・・・)。

 最近、ちょっと疲れ気味です。自分でも体調が変だと思う時があります。久しぶりに仕事を忘れてゆっくりしてくるつもりです。

シーア派とスンニ派、街を二分

バグダッド「市街戦」

砲弾の雨、避難20万人に

反米派も「軍駐留続けて」

(朝日 11月16日 朝刊)

[概要]イラクの首都バグダッドでシー派とスンニ派の対立が激化し、11月に入って市街戦の様相を帯びている。シーア派とスンニ派は過去数ヶ月の「報復合戦」で、チグリス川をはさんで両派の住み分けが進んだ。しかし双方の地域から迫撃砲弾が飛び交い、11月初旬だけで100発を越え、犠牲者も増えている。

 シーア派地区では4日、警察のパトロールを狙った自動車爆弾が爆発して、市民や警官に犠牲者が出た。しかし容疑者の捜索はサドル派民兵組織のマフディ軍だった。マフディ軍はすぐにスンニ派2人を拘束し、その日のうちにサドル派の住むアダミヤ地区に迫撃砲弾4発(市民4人が死亡)を撃ち込んだ。その後も砲撃を続け、9日には9発を撃ち込ん(3人が死亡)だ。

 スンニ派もシーア派地区に報復の砲撃を行い、7日にはシーア派地区のサッカー場に撃ち込んだ砲弾で8人が死亡した。9日のアダミヤ地区への砲撃に対する報復では、シーア派地区に迫撃砲3発が撃ち込まれた。6日にシーア派地区のカフェで自爆テロで20人が死亡。12日にはシーア派が集まる警察官募集所で自爆テロが起き36人が死亡した。

 マリキ首相は6日、「迫撃砲弾の発射地点を把握」を治安部隊に命じたが、8日に発表されたのはスンニ派地区だけだった。政府の治安機関に多く入り込んでいるマフディ軍への言及はなかった。反米的といわれるスンニ派だが、米軍が撤退すればマフディ軍が全面攻撃を仕掛けてくると言い、米軍の駐留継続を望む声も起きてている。

 バクダッドで起きたイラク高等教育省から多数の職員が拉致された事件では、当初100人以上が連れ去られたとされたが、シーア派主体の首相府や内務省は、「人質は45人にすぎず、大半は救出された」と発表。しかしスンニ派のアジリ高等教育相は「70〜80人がなお拘束されている」とし主張し、救出まで大臣職務を自ら停止すると宣言した。この事件でイラク政府は異例の対応をとり、早々とシーア派民兵組織の犯行と認め、警察署長ら幹部5人を拘束した。そして前例がない「救出作戦」や「人質解放」を発表している。

[コメント]当初、イラク高等教育省の襲撃事件が報じられた時、犯人たちは10台以上の警察車両で同省を包囲し、警察官の制服を着た者が付近一帯を封鎖し、それから4階建ての建物内にいた職員や外来者など100人以上を、省外に待機させていた車に乗せて拉致したという。その理由は高等教育省がスンニ派の勢力だというだけである。これがバグダッドの現実である。すでにスンニ派とシーア派の市街戦が行われていると考える方が対応策がとりやすいと思う。

 アメリカの中間選挙で民主党が勝って、ラムズフェルド国防長官が更迭され、議会ではイラク戦争の見直しが始まった。見直しといっても、単に出口をさぐるための方法が検討されるだけのことである。その出口とは言うまでもなく、駐留米軍をイラクから撤退させる時期と方法である。だからイラク内戦はさらに激しくなることが予測される。

 その米軍撤退をめぐって、マフディ軍は優位な位置を占めようとスンニ派を攻撃する。スンニ派にとってもう反米どころではなくなった。米軍撤退後にシーア派武装勢力からの全面攻撃を回避させることが最重要の課題になった。だからシーア派が多数を占める警察官を襲撃する。それも警官募集所や訓練中(バスで移動中)の弱い警官が大量に襲われる。そして駐留米軍が治安回復に出ていけば、今度はアルカイダなどの武装組織が自爆テロなどで米兵を襲う。そのような戦闘の構図がバグダッドで出来上がった様である。

 そのイラクで治安を回復させるためには、イラク情勢を対テロ戦争と位置づけることを早くやめて、宗教・宗派や部族間の対立として内戦を沈静化させるしかないと思う。出来るだけ早く米軍はイラクから撤退し、国際的な治安回復部隊(イスラム国主体)を投入するしかないのではないか。またイランやシリア問題とイラクを切り離し、10年、20年、30年と長期間かけて関与し、イラクの社会体制を築き直す必要があると思う。

 それにしても同時多発テロ(01年9月11日)から5年しか経っていないのに、ブッシュ大統領を支配(コントロール)したネオコンは世界をこれほど混乱させた。アメリカ大統領が声高く軍事力を使って正義や自由を叫ぶ時ほど恐いものはない。

沖縄近海

中国潜水艦が追跡、射程に

米空母 気づかず

中国潜水艦 静粛性向上か

(産経 11月15日 朝刊)

[概要]沖縄近海の太平洋上で、米海軍の空母キティホークが中国海軍の通常型潜水艦の追跡を受け、魚雷などの射程圏内に接近されていても探知できなかったことが14日にわかった。中国海軍は軍備の拡充を進め、潜水艦などの海上兵力の近代化を目指している。

 13日のワシントン・タイムス紙によると、空母キティホークが先月26日、中国潜水艦の追跡を受けた末、哨戒機が後方約8キロの海上に浮上した潜水艦を発見するまで探知できなかったと報じた。

 14日のAP通信は、クアラルンプールを訪問中のファロン米太平洋軍司令官はメディアのこの報道を確認した。その上で、「中国の潜水艦が訓練水域の中に入っていれば、不測の事態にエスカレートすることもあった」と語り、危険な状態であったことを認めた。

 この潜水艦は中国海軍のソン(宗)級ディゼル潜水艦(涙滴型)で、中国海軍では今までに8隻のソン級潜水艦が確認されている。ソン級はロシア製の誘導魚雷の他に、対艦ミサイルを搭載して、エンジンの静粛性を高めた可能性がある。

 米中間では、信頼醸成措置として、中国沿岸での米中合同救難訓練のため、キティホークも所属する太平洋艦隊の幹部が13日から訪中している。

[コメント]米空母機動部隊には海中に攻撃型潜水艦1隻が配置されている。また空母艦載機に対潜任務のヘリが配備されている。空母を警護する駆逐艦にはソナーなどが装備され対潜ヘリを搭載している。すべて海中から忍び寄って、空母を狙う潜水艦に対処するためである。だから中国の潜水艦が魚雷の射程内まで追尾したという言葉に驚いた。(本当か?)

 あらかじめキティホークが演習予定の南シナ海で待ち構え、空母に接近して、”勝利宣言”を行うために浮上して見せたのか。あるいは空母機動部隊が先に海中の潜水艦を探知し、国籍不明の潜水艦にアクテブ・ソナーをガンガンとぶっつけ、無理矢理、潜水艦を浮上させたのか知りたい。潜水艦が浮上したという意味が不明である。

 この記事で思い出したことがある。80年代後半(レーガン大統領時代)の日本海で、米空母機動部隊がウラジオのソ連軍基地(軍港)を攻撃目標に想定して演習を行っていた。するとソ連海軍は数カ所の陸上の航空基地から、バックファイアー超音速爆撃機(Tu−22M)を次々と発進させた。空母機動部隊はその機影を対空レーダーで捕らえ、次々と空母の迎撃戦闘機や駆逐艦などの対空ミサイルで撃ち落(想定)とした。しかし後日、その演習データを解析したところ、ソ連軍機が放った対艦ミサイル(想定)が米空母に命中していたことが判明した。すなわちソ連軍機が米海軍の大演習を無力化していた。このときの反省からイージス艦が開発される原因となり、空母機動部隊の対空戦闘能力の強化が図られた。

 また中国のソン級潜水艦であるが、95年からの公式テストを始める前から、あまりの粗悪さが判明して、ロシアからキロ級潜水艦の購入を急ぐ原因となった潜水艦である。99年に1番艦が進水して1年にほぼ1隻づつ建造されていた。しかし95年にはロシアから購入したキロ級潜水艦が中国に到着しているから、その際にキロ級潜水艦を技術的な問題を解決するための見本艦にした可能性がある。

 この記事や情報が正確であるなら、ソン級潜水艦(通常・攻撃型)は想像していた以上に改良されている点が驚きである。米海軍は深刻な課題が生まれたことを認識したと思う。しかし米海軍が今後、何も対策の動きがないなら、海中の中国海軍の潜水艦を探知し、無理矢理、浮上させた可能性もある。

 米海軍も調査権を持つ議会への影響や、兵士の士気に与える影響から、このまま放置できるほど簡単な問題ではない。しかし今は続報を待つしかない様だ。

※訂正・・・・先ほど信頼している方から、イージス艦の開発は70年代に始まり、83年にはイージス艦の一番艦「タイコンデロガ」が就役しているというメールが届きました。80年代後半のアメリカ海軍の日本海演習で、空母がソ連軍のバックファイアー爆撃機に模擬攻撃を受けて、その対艦ミサイルが命中した可能性があったということは事実ですが、そのために空母機動部隊の対空能力を向上させたことと、米海軍がイージス艦を開発・配備したこととは関係がないようです。間違えて申し訳ありませんでした。頂いたメールは「メールにお返事」に掲載します。

カブール陥落5年

アフガン 遠い再建

復活タリバン攻勢

治安悪化

  進まぬ外国投資

米、泥沼イラクが重荷

(朝日 11月14日 朝刊)

[概要]アフガンは13日、タリバン勢力がカブールから撤退して5年目を迎えた。しかしささやかな変化を享受できるのは一部の裕福層だけで、多くの国民はまだ戦乱の混乱から解放されていない。地方では息を吹き返したタリバンの攻撃は激しさを増している。

 国際通貨基金(IMF)によると05年の一人あたりのGDP(国内総生産)は300ドル。雇用が広がらず、麻薬の原料となるケシ栽培を始める人が増えている。9月の国連報告では、南部ヘルマンド州の作付け面積は6万9千ヘクータルで、昨年比162パーセントと驚異的な増加率だ。援助による復興事業を除けば、リスクが高くて海外からの投資はほとんど進んでいない。

 今年5月から始まったタリバンの攻撃に、国連は「タリバン政権崩壊後、最大の危機」と情勢悪化に危警鐘をならした。アフガンでは以前ではあまりみられなかった自爆テロが昨年末から増え、今年8月以降、全土で40件になった。タリバンは自爆テロに多額の報奨金を出すといい、警察当局は9日、モスク爆破を企てて捕まった24歳の男が、「タリバンから1万6600ドルを家族に払うと持ちかけられた」と発表した。

 今年7月、NATO指揮下の国際治安支援部隊(ISAF)が米軍から南部の指揮権を引き継いだ。その南部のヘルマンド州ムサカラ地区(人口5万人)では、10月までに300回の戦闘が繰り返された。今まで米軍とISAF軍とは、任務や受け持ち地区を明確に「住み分け」ていた。しかしイラク情勢の泥沼化から、アフガンでは米軍からISAF軍が「肩代わり」をすることになった。

 今年10月にはアフガン東部の米軍1万2千人をISAFの傘下に収めて全土への展開を完了した。これで37カ国の3万1千人が、1万以上といわれるタリバンと対峙する。今年10月までのISAFの戦死者は計55人だが、そのうち41人が今年に集中している。

 カブールのはずれにある広大な岩山にアフガン軍の訓練施設があるが、「出身部族に関係ない。同じ国の兵士だ」(アフガン軍大尉)として数週間の新兵訓練が行われている。しかし2010年の兵力7万人の目標だが、現在は3万5千人。兵士の靴は米軍の新品ブーツが支給されているが、扱うカラニコフ銃はロシア製、ウクライナ製、中国製とまちまちである。

[コメント]この記事に書かれていたが、10月24日にISAF部隊がバンジュワイ地区の行った戦闘で、タリバン兵48人を戦死させたと発表したが、地元の行政責任者や州政府関係者が民間人も60人〜85人が死亡と訴えたという。この死亡者数の多さから、ISAFの戦闘は米軍のように武装勢力を包囲(追跡)して、そこに攻撃ヘリや攻撃機から爆弾や対地ロケット弾を投下する作戦と考えられる。高い高度で無人偵察機を多用して、密かにタリバン兵士の移動や集結を探知する。そして一気に空からの攻撃である。そして逃げ出したきた兵士を、待ち構えた地上部隊が攻撃する。いわばベトナム戦争時代からの基本的な対ゲリラ戦術である。変わったことといえば、無人偵察機の役割が増えたぐらいだろう。

 しかしこの戦術では、ゲリラ兵と一般人の区別がつきにくく、戦闘に無関係な民間人を多数殺戮して住民の恨みを高めることである。

 この記事を読んで気がついたことだが、今までISAFが米軍を傘下において指揮権をとったと思っていたが、この様相では米軍がISAFに指揮権は渡したが、逆にISAF部隊をアフガン南部や東部の激しい戦闘に引き込んだと考えるようになった。今まで思っていたこととは逆なのである。

 これでは欧米でイラクと同様に、アフガンでも戦争の見直しが始まるだろう。ブッシュ大統領はアフガンでも米軍が勝てない戦争を行っているように見えるからだ。

 もしアフガン戦闘で失敗をすれば、それは冷戦後の米国が考えた世界新秩序確立が失敗したことを意味する。まずは米軍が大規模攻撃で既存の軍事基盤を破壊し、その後にNATO軍など多国籍の治安支援部隊が乗りだし、その地域の治安と復興に努めるという世界戦略の失敗を意味する。旧ソ連邦という主敵を失ったNATO軍の新活用戦略の挫折なのである。

 まだアフガン戦争の最終の結論は出ていないが、ヨーロッパでは今後この論議が高まることになると思う。米国の世界戦略とNATO軍との同盟関係である。

 そして東アジアでは今までの日米、米韓の軍事同盟と、朝鮮半島統一後の新軍事同盟のあり方である。中国の存在感が増す中で、東アジアでの安全保障が模索されている。

米軍 離着陸訓練

岩国180キロ圏外に移転

政府方針

  米の要求 応じず

九州など複数候補

(読売 11月12日 朝刊)

[概要]政府は11日、在日米軍再編の一環である米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機を岩国基地(山口県)に移駐させるが、艦載機の夜間離着陸訓練(NLP)は岩国基地から180キロ以上離れた圏外で行うことを決めた。

 日米両政府は5月にまとめた在日米軍再編の最終報告で、艦載機を2014年までに厚木基地から岩国基地に移転させると明記している。しかし訓練施設については「09年7月またはその後の出来るだけ早い時期に選定することを目標にする」とするにとどめている。これに対して米側は岩国基地から180キロ圏内の訓練施設を求めていた。通常、艦載機が1時間30分程度の燃料を搭載して基地を発進した場合、約180キロ圏内に訓練施設があれば、10回余りの離着陸訓練をして帰還できる。

 日本政府は瀬戸内海の無人島・大黒神島(広島県)や航空自衛隊の築城基地などを検討していた。しかし地元の反対や地形的な制約から、いすれも訓練地として適切ではないと判断した。これを米側に正式につたえ、今年度末をめどに、九州南部を含む広域から複数の候補地を提示するとしている。

 候補地の条件は、@周囲に急峻な山がない A近隣住民に騒音被害が少ない B天候が1年を通して比較的安定している。などが挙げられる。選定作業は難航することが予測されている。

[コメント]空母艦載機のNLPを岩国基地ではなく、180キロ以上離れた基地で行うことを決めたといっても、どこにそんな基地があるのか考えてしまう。新基地建設と離島振興と組み合わせても、かつての三宅島の反対運動のように泥沼にはまる危険がある。メガフロート(人口浮体)も安定性に欠ける問題が指摘されている。巨大タンカーや米空母などの廃船(艦)を瀬戸内海に浮かべるアイデアも聞いたことがあるが、まあアイデア程度のものでしかなかった。

 すでにNLPについては、30年以上の宿題が延々として検討されてきた。試せるものはすべて試してきたように思う。また強引に政治力で決めても、普天間代替え基地のように動きがとれなくなる。

 今回のこの記事は、沖縄県知事選(19日)、防衛庁省昇格問題などを控え、猫騙し(ねこだまし)のような気がしてならない。とても現実的な方向に進んでいるとは思えない。

北朝鮮貨物船

インドで拿捕

(読売 11月10日 朝刊)

ロイターES時事

[概要]イランに向けて航海していた積み荷のない北朝鮮の貨物船を、インド当局が拿捕(だほ)していたことが9日までにわかった。この貨物船は10月29日にインド領海に迷い込んだという。インドに拿捕された後、ムンバイ港にえい航され、乗員は情報当局や税関に事情聴取を受けた。

 調べに対し、乗員らは「船は新造船で試験航海中だった」と主張したが、インド当局者は「イランまでの航海が必要なのは奇妙だ」との見解を示した。

[コメント]インドの領海に迷い込んだのではなく、おそらく北朝鮮の貨物船は給油のために立ち寄った可能性が高い。そこを領海侵犯を理由にインドが拿捕したと思われる。北朝鮮とイランの間を航行する貨物船は、途中で給油のためにどこかの港に寄港する必要がある。

 国連の安保理で北朝鮮制裁が決議された時、北朝鮮近海で海上における船舶検査の実施も考えられた。先月はペルシャ湾でPSI訓練も実施された。しかし中国の慎重姿勢などで船舶検査の実施が遅れている。そこで北朝鮮の貨物船が給油のために寄港する香港やミャンマーなどの港で積み荷検査が行われている。

 北朝鮮がカラ荷の貨物船をイランに派遣したのは、イランから荷物を持ち帰るためか、あるいは給油可能な港を偵察する目的が考えられる。

 それでは北朝鮮はイランから運んでくるものとは何か。なぜ国際社会は北朝鮮の貨物船にこれほど緊張しているのか。それはイランが行っているウラン濃縮で生成した濃縮ウランが北朝鮮に運ばれることを警戒しているのだ。

 北朝鮮がプルトニウム原爆の核実験に失敗したことはすでに書いた。精密な起爆装置(爆縮)の製造に失敗したのである。そこで精密なTNT火薬を使った起爆装置に代わり、濃縮ウランを核分裂させてプルトニウムの起爆に使う方法がある。TNT火薬の爆縮装置では高速爆薬と低速爆薬を64個組み合わせ、32個の雷管を使って”爆縮レンズ”を完成させなければいけない。そして100万分の1秒の誤差なく同時に雷管を爆発させる。北朝鮮はこれに失敗した。

 しかしプルトニウムの起爆に濃縮ウランを使えば、高速爆薬(TNT火薬)と2つの雷管でウランの一部が核分裂を起こすのである。その核爆発エネルギーでプルトニウムが核分裂を起こす。さらにプルトニウムの核爆発エネルギーでのこったウランも核分裂を起こすという核爆弾のシステムである。

 このように濃縮ウランとプルトニウムがあれば、完成度の高い核爆弾が作れ、また小型化した核弾頭として核兵器への転用が可能になる。弾頭重量が約1トン未満のノドン・ミサイルに搭載することが可能になる。

 北朝鮮はプルトニウムを持っているが、濃縮ウランはパキスタンから入手したウラン濃縮装置(遠心分離器)の設置に失敗している。一方、イランは濃縮ウラン(原発の燃料として)の生成作業を行っているが、プルトニウムの原料になる使用済み燃料棒はまだ持っていない。

 北朝鮮の核実験後に世界が緊張しているのは、北朝鮮のプルトニウムとイランの濃縮ウランが結びつくことである。だから北朝鮮とイランを行き来する貨物船の動きを厳重に警戒しているのだ。

 さらに付け加えれば、イランはイラクとの戦争(80年代)でイラク軍から化学兵器(びらん剤・マスタードガス)の攻撃を受けた。しかしイランはイラクに報復することができなかった。イランは化学兵器を保有していなかったからだ。だからイラクはイランに化学兵器を使用したという理由も成り立つ。

 いつも言うことだが、現在、北朝鮮は生物・化学兵器を大量に保有している。これが貨物船でイランに運ばれる可能性もある。イランのウラン濃縮に怒った欧米諸国や中東の穏健派イスラム国からの軍事攻撃を抑止するためである。このことも国際社会が北朝鮮とイランの間を行き来する貨物船を警戒する要因になっている。

 アメリカは01年9月11日の同時テロで、世界戦略を転換して対テロ戦争に突入した。日本は06年10月9日に実施された北朝鮮の核実験で、今までの国家戦略の有効性が問われ始めている。北朝鮮がイランから濃縮ウランを入手し、ノドンに搭載できる核兵器を完成させて、日本海に核ミサイルを撃ち込んで核爆発を起こしたとしたら、日本人はどのように反応するのだろうか。想像することさえちょっと恐いような気がしてくる。 

アメリカ中間選挙

米民主党 下院は圧勝

       上院は拮抗

イラク政策 批判

ラムズフェルド国防長官辞任

(各紙 11月9日 朝刊)

[概要]7日に投票が行われた米中間選挙で、下院は12年ぶりに民主党が過半数を奪い返して圧勝した。上院でも49対49と拮抗しているが、残り2州でも民主党候補が逆転する可能性がある。今回の中間選挙では、主にブッシュ政権のイラク政策に対する賛否が大きく作用したが、選挙で国民はイラク戦争の現状に対する不満や批判を表明する形になった。この選挙結果を受けて、ラムズフェルド国防長官が辞任することになった。

 ブッシュ大統領は残り2年の任期期間中に、米軍駐留のイラク政策の見直しを迫られることになった。

[コメント]私はブッシュ政権のイラク占領統治に批判的で、民主党が今回の中間選挙に勝利することを願っていた。しかし期待通りの成果が出たことで、逆にこれからの中東情勢に恐怖心が高まったと感じている。

 それはベトナム戦争の末期と比較することで、アメリカが全てを捨ててイラクから逃げ出すことへの不安である。ベトナム戦争では南ベトナムには北ベトナムという受け皿があった。しかしイラクではそのような受け皿がないからだ。

 アメリカ軍がイラクから全面撤退の姿勢を見せれば、イラクにいる親米的なイラク人は国外に逃亡をするか殺される。イラクに独自の治安部隊が育っていない以上、それからのイラクを支配するのは隣国イランと強く結びついたシーア派武装勢力である。すなわちイラク南部とイランを合わせた中東の中心地域にシーア派の巨大勢力圏が誕生する。これにはイスラム穏健派(親米)と呼ばれるサウジ、ヨルダン、エジプトなどに強い恐怖心を与えるだろう。同時に新しい中東戦争の危機が誕生する。

 逆にイランにとっては、新しく誕生した広大なシーア派支配地域を、軍事上防衛することは不可能に近い。そこでイランはウラン濃縮で核武装を考えているような気がしてきた。イランにとってはイラクから駐留米軍が敗退することは予測済みで、イランの核兵器開発はそのための準備(抑止力)という推測が成り立つ。

 なぜ私が民主党の圧勝に恐怖心を持ったかと言えば、いくらブッシュ政権の共和党が中間選挙に破れても、勝った民主党がイラク和平の展望を描ききれないと思ったからだ。民主党はこれからイラク和平をどのように進めるのか。

 思い出すのは、ケネディー大統領の暗殺で誕生したジョンソン大統領はベトナム戦争をエスカレートさせた。しかしベトナム戦争の情勢悪化で次期大統領選挙には出馬しないことを表明した。次ぎに誕生したニクソン大統領はパリ和平会議で北ベトナムと和平交渉を行いながらも、ベトナム全土では政治交渉を有利にするための戦闘が激化した。そして最後にアメリカ軍は一斉に南ベトナムから逃げ出した。

 いったいこれからイラクの安定と復興を誰がどのようにするのか。ロシアやフランスは米軍がイラクから逃げ出すのを虎視眈々と待っていると思う。イラクのシーア派の宿敵であるスンニ派はさらなる内戦をシーア派に仕掛けてくるだろう。一方、イラク北部のクルド人は豊富な油田地帯を支配下に置いて独立への動きを加速させるだろう。すると当然の様にトルコの軍事介入を招くことが考えられる。トルコはイラクのクルド人がトルコのクルド人勢力と連携強化で分離独立するのを恐れている。

 ・・・・・・・・・・ イラクの占領統治に否定的な民主党が勝ったのはいい。しかしこれから中東和平に民主党は確実な成果が出せるのか不安が大きくなってきた。今までの対米追随型外交では日本の存在を示すことはできない。

米韓次官合意

核保有国として

  北朝鮮を認めず

(毎日 11月8日 朝刊)

[概要]韓国外交交通省の柳 明ファン(ユ ミンファン)第1次官は7日、バーンズ米国務次官(政治担当)と戦略対話を行い、「北朝鮮を核保有国として認めない」との立場を再確認する報道文を発表した。

[コメント]すでに日本政府も米韓と同じように、北朝鮮を核保有国として認めないと公表している。中国やロシアも北朝鮮を核保有国として認知することは、核兵器の特性からも無理である。しかし日本では多くの人が、核実験をした北朝鮮はすでに核保有国と思っている人は多い様だ。そのことを実感したのは一昨日である。6日(月)、汐留の日本テレビで10日(金)放送の「私(太田)が総理大臣になったら・・・・秘書田中」というテレビ番組の収録が行われた。国会議員や有名タレント、アイドル、文化人などが多数出演していたが、私も軍事分野の者として出演を誘われた。その時に出演者(タレント)から、「すでに北朝鮮は核保有国でしょう」という発言を何度か聞いた。「これからは、いつ北朝鮮が暴走して日本に核攻撃をしかねない」という発言もあった。

 私はその発言を聞いて、”やはり多くの人がそのように信じているのか”という虚しい気持ちになった。北朝鮮の核実験が失敗したと思っている人は多いいが、それでも核実験をやるような国だから、すでに北朝鮮は核兵器を配備していると思っているのである。これから、なぜ日本や米韓が明確に”北朝鮮は核保有国ではない”と断定するのか。その理由を日本のメディアははっきりと国民に説明することが大事だと思う。核保有国の条件についてである。

 北朝鮮は初めてのプルトニウム原爆の実験に失敗した。事前に予定(約20キロトン)した5パーセント(1キロトン以下)の核爆発しか起きなかった。これは典型的な起爆装置の失敗で”完全な爆縮”を起こすことが出来なかった。結果、95パーセント以上のプルトニウムが核分裂を起こす前に飛散してしまった。また核爆弾の小型化(弾頭化)の実験も行われていない。プルトニウムだけの原爆では起爆装置を含めると直径が約2メートルの球体で、重量も4トン前後とミサイルの弾頭に搭載できない。プルトニウム原爆を小型化するためには、起爆装置に濃縮ウランなどを使い、少量のTNT火薬で一部の濃縮ウランの核分裂を起こし、それでプルトニウムの核分裂を起こさす。さらにプルトニウムの核分裂で、残ったウラン全体の核分裂を起こさすのである。このためTNT火薬のウラン起爆は2ヶ所のポイントで爆発を起こすだけで可能になる。これが小型核兵器の原型で、北朝鮮はそこまでの核技術に達していない。

 そのような核兵器を北朝鮮は作る能力はない。能力があることを数回の核実験で証明できなかった。だから北朝鮮は核保有国ではないのである。核兵器保有国である中国、ロシアもそのことは無論知っている。だから6カ国協議では中ロも北朝鮮を核保有国と認めることはない。当然ながら、日米中韓露の5カ国は北朝鮮の核兵器の放棄を迫ることはない。ただ北朝鮮の核開発施設(計画)の廃棄を求めても、核兵器の廃棄を求める理由はない。

 しかし唯一の例外が北朝鮮政府である。北朝鮮政府は「我が国は核兵器保有した偉大な国家」と国内で宣伝している。だから北朝鮮は6カ国協議で核開発の放棄を求められても、自国民の手前、それに応じることができないのである。これをもって北朝鮮が最終の崩壊過程に追いこまれたジレンマなのである。核兵器はそんな魔力も持っている。

フセイン判決

欧州 死刑反対の声

栄首相 執行否定の原則表明

米有力紙「公正さ疑問」

(読売 11月7日 朝刊)

[概要]イラクのフセイン元大統領に死刑判決が出たことで、欧州各国から人道上の理由で死刑を廃止しているすう勢を背景に、死刑執行に反対する声が相次いで出ている。

 ブレア英首相は6日、「裁判によってイラクで数十万人が殺害された過去に目が向けることが出来た」と述べ、裁判を評価した。しかしその一方で、「英国はサダムであろうと、死刑に反対する」と述べ、死刑を否定する原則的な発言をした。英ガーディアン紙は、「死刑には例外なく反対をする」と原則論に加え、イラク国民和解のためにも死刑を執行しない方がよいと主張した。英ザ・タイムス紙も死刑執行を急ぐべきではないと指摘した。

 またEU議長国のフィンランドは、「死刑執行をすべきでない」とする声明を発表した。フランスのフィガロ紙社説は、「イラク高等法廷は最善を尽くした」と賛辞したが、死刑についてはイラクのスンニ派住民に屈辱になるとして、終身刑にすべきと提案した。

 米ニューヨーク・タイムズ紙は、「イラク政権中枢のシーア派やクルド人勢力は、フセインへの懲罰を彼らの政治目的のために利用した」と断じ、「完全な正義も公正さもなかった」と激しく批判した。ブッシュ大統領が5日、「イラクの民主主義にとって大きな成果」などと評価したことも「言い過ぎだ」とした。一方、ワシントン・ポスト紙は「イラク建設の遅々とした努力の里程標かもしれなと、一定の評価を下したが、「米ブッシュ政権や多くのイラク人が望んだ公正さの模範にはならなかった」と指摘し、イラク情勢に及ぼす影響は「短期的に内紛を悪化させるだろう」と悲観的な見方を示した。

[コメント]アメリカの中間選挙の直前にイラク高等法廷がフセイン元大統領に死刑判決を下したことは、ブッシュ大統領が率いる共和党候補者に「イラク戦争の正当性」という追い風を送るためだと思う。しかしこのように欧米メディアの反発をみると、かならずしも期待した政治的効果は生まれなかった様である。あまりにも露骨すぎる政治利用に嫌気がする。これがブッシュ流というかネオコン流なのだろうか。普通の人々をバカにしているようにも感じる。

 この裁判が公正さのためにイラク人による高等法廷で行われたというが、イラクはアメリカ軍の占領統治下であり、アメリカ占領軍と武装勢力との戦闘に加え、国内のシーア派とスンニ派間で激しく戦闘が行われていることを忘れてはいけない。この裁判はフセイン大統領を死刑にして、あくまでイラク戦争の正当性を立証するための政治的な報復裁判である。

 これを人道に対する犯罪を裁く国際司法裁判所(ハーグ)で行われ、そこで下された判決であれば、まったく価値や意味が違ってきたと思う。

 昨日、ある国内の活字メディアから、この裁判の行方を聞かれた。私はフセイン裁判の持つ政治性から、絞首刑執行は1年後の米大統領選挙期間中に行われ、執行後に事後発表される可能性が高いと話した。フセインの遺体は親族に返還せず、秘密裏に埋葬され、その場所はイラク占領軍と戦った英雄の聖地になることを避けるために秘されると思うと話した。

 私が疑問に思ったのは、日本の各メディアがフセインの”死刑判決”をどのように報じたかである。単に判決の事実だけ伝え、死刑判決に喜ぶシーア派住民の映像と、死刑判決に怒るスンニ派住民の映像を報じただけのような気がする。また死刑判決に抗議するフセイン元大統領の表情だけである。

 私が特に聞きたかったのは、勝者の裁判と言われた東京裁判と比較してどのように思うかという点である。東京裁判に批判的とか否定的な方は、このフセイン裁判も否定されるのか知りたいと思った。占領軍の統治下にある国で、戦争の破れた指導者を裁くことが”報復”や”正当性の獲得”にされないかという説明である。

 私はフセイン大統領を裁くのであれば、人道に対する罪「大量虐殺」でハーグの国際刑事裁判所で行うべきだったと思っている。

訂正です。・・・・・先ほどまで、ハーグの国際司法裁判所と記述していましたが、読者の方からメールが届いて、人道に対する個人の罪を裁くのは同じハーグでも国際刑事裁判所と指摘がありました。国際司法裁判所は国家間の紛争を扱います。明らかに私の勘違いです。その部分を訂正して赤字で記述しました。今日、頂いたメールは明日、メールにお返事に掲載します。昨日、アフリカで中国が影響力拡大の件でメールを頂いた方、申し訳ありませんがしばらくお待ちください。必ず掲載してお返事を書きます。 

中国

艦上戦闘機 調達へ

露製50機

 空母計画に関連か

(産経 11月6日 朝刊)

[概要]戦力の近代化を進めている中国軍が、ロシア製の艦上戦闘機スホイ33(SU−33)を最大50機購入する方向で最終調整していることがわかった。防衛庁は中国の空母建造計画と密接な関係があるとして事実確認を始めた。

 中国軍の動向を追っているウェブサイト「チャイナ・ディフェンス・トゥデー」などが、ロシア兵器輸出公社ロソボロン・エクスポート社と中国当局の交渉が最終段階に入ったと報じた。情報によると中国はまず2機を試験導入し、技術・能力評価を行い、その後12機を追加導入してパイロットの本格的な習熟訓練を行う。最終的には50機を調達する予定という。

 SUー30機はロシア空軍の主力機SU−27戦闘機を艦載機用に改造した戦闘機。主翼や水平尾翼が折りたためるほか、対艦攻撃の兵装が搭載でき、空母での運用が可能な艦上戦闘機。中国は08年頃に空母の実戦配備を目標に空母建造計画を進めているとされ、香港の「東方日報」は、中国が空母に中国国産艦載機やSU−33を搭載すると伝えている。しかし財政面や技術面から空母建造が大幅に遅れていると言われている。軍事専門家は中国の空母建造が見えてこない現状では、SU−33の配備が周辺国に脅威を与えるものではないと見ている。

 一方、「中国の空母保有は中国の海洋戦略を根本的に変える」として、防衛庁情報本部や海上自衛隊では警戒心を持ち、米軍などと情報交換をしながらSU−33の導入の意図や背景を情報交換するという。 

[コメント]私は現状では中国が本格的な空母を建造しないと見ています。中国が空母を建造しない理由で”財政や技術的な問題”が指摘されたのは15年以上も前の話しです。それよりも今はアメリカの軍事技術や兵器が、中国の空母建造をすでに”無力化”しているからであると思います。現状では中国がいくら頑張って空母を造っても、米軍の対艦ミサイルなどの攻撃兵器がはるかに優勢で、あらゆる想定でも中国・空母は米軍の脅威が存在する海域では運用できない。そしてその米海軍が優勢な海域とは全世界の海を影響下に置いている。

 たとえば米軍のステレス・巡航ミサイル(画像識別誘導)や、超音速(終末誘導)・対艦ミサイル、対艦用の巡航ミサイル+深深度魚雷兵器などで、もし中国の空母が本土の母港を出れば、グアム上空から攻撃可能な対艦兵器を米軍が製造出来る軍事技術がある。また、あらかじめ中国の空母が係留されている母港周辺海域に、スマート(偉い)機雷を密かに海底に施設し、指令を受ければ空母の音響(音紋)でホーミング(追尾・攻撃)する海中兵器もある。

 ならば中国はなぜSU−33を導入するのか。これは対艦兵器が搭載できることに意味があると思います。SU−33は中国の沿海部の陸上基地から発進し、海上の敵艦船を攻撃するためとではないでしょうか。その想定する海域は1位が台湾海峡で、海中のキロ級潜水艦とともに空からSU−33で攻撃できる制圧体制をとる。そして2位が東シナ海となる。日・米・韓の海軍艦船が東シナ海を支配することを拒否する戦力となります。さらに空中給油機が中国軍に導入されれば、SU−33の哨戒海域はさらに広まる。南沙諸島を含む南シナ海で、余裕の対艦作戦を実施することが可能です。

 このように中国が導入するSu−33機を、空母建造計画(新戦略)と連動して考えると判断を誤ることになる。中国海軍は大洋(オーシャン)に戦力を展開するにはまだまだ時間がかかる。しかし中国沿海に関しては、キロ級潜水艦の増強(12隻体制)と、このSU−33攻撃機の50機体制で支配力を強めることができるのだ。

緊急・・・・・・・先ほど、中国の空母建造を示す資料がメールで送られてきました。メールには中国は大国としての証明として、空母を持ちたがっていると書かれていました。その添付されていた資料をここに掲載します。頂いたメールは、「メールにお返事」に掲載しています。

http://www.sinodefence.com/navy/surface/aircraftcarrier.asp  

 こちらも参考にしてください。ウクライナから買った軽空母は、遊園地、カジノ、廃艦、スクラップにされたのではない様です。軽空母に生まれ代わっていました。

新戦略を求めて

核増殖の印パ

  北朝鮮へ連鎖

署名記事

  竹内幸史・編集委員

(朝日 11月4日 朝刊)

[概要]パキスタン中部の山中にある町クシャブ、軍が管理する円形構造物を米国の民間衛星がとらえた。米シンクタンクの科学国際安全保障研究所(ISIS)は、プルトニウムを年200キロ生産できる重水炉とみる。核弾頭40〜50個分にあたり、弾頭を小型化できるプルトニウム開発を強化するためとの見方が強い。パキスタンは80年代から中国の指導を受けて核開発を進めてきた。首都イスラマバードのホテルには中国の原発技術者が宿泊し、原発増設を指導している。今月11月にパキスタンを訪問する中国の胡錦涛主席は、一層の原発支援を協議するとみられている。

 一方、インドは今年3月に米国と合意した「原子力協定」で原発を軍事活用と切り離すことを約束。また国際機関の査察を条件にウラン燃料と技術供与を受ける。しかし国内産ウランを軍事用に回し、核兵器生産能力を高める可能性がある。アメリカの対印協力には英仏ロも追随しつつある。大国が原発協力をカードに勢力争いを繰り広げている。

 パキスタンの東アジア専門家は、「98年に核実験した印パが、核の力で国際社会から威信を得た。北朝鮮はその効果を見て核実験した」と話した。

 パキスタンのムシャラフ大統領は最近の自伝で、「カーン博士が二十数基の遠心分離器を北朝鮮に提供し、ウラン濃縮を技術指導した」と明らかにした。経済発展で世界の牽引車になることが期待されているアジア。しかし新たな核の不安の震源地にもなっている。

[コメント]すでに書いたことがあるが、カーン博士が北朝鮮に提供したウラン遠心分離器は中国から供与されたものである。同時多発テロを受けた直後、アメリカはパキスタンのムジャラフ大統領に、アフガンのタリバン攻撃でアメリカに協力するか、爆撃で原始時代に戻るのかと迫った。(ムジャラフ大統領の自伝)。それまでパキスタンは中国と核開発で組み、北朝鮮とは弾道ミサイル・製造で組んでいた。それが同時多発テロで一気に親米的な国に豹変したのである。そのような経緯を知って、パキスタンのカーン博士が一存で北朝鮮にウランの遠心分離器を提供したと信じられるだろうか。パキスタンが北朝鮮にウラン濃縮器を提供したのは、中国も深く関与していたと私は確信している。

 いくら北朝鮮がプルトニウム原爆を完成させたしても、濃縮ウランがなければ核兵器の小型化は不可能であるからだ。中国は北朝鮮の核兵器開発に強く関与していた、そのような気持ちが深まるばかりである。だから北朝鮮の核実験後に中国が行った国連での動きや、アメリカ、日本、韓国、ロシアで行った中国外交が真意とは思われないのである。

 私が北朝鮮の核実験は中国の老獪な外交戦術という理由はそれである。結果、中国は北東アジアで盟主の座をものにした。ブッシュ大統領も、安倍首相も、今回の件で中国に感謝して、これからも中国が北東のアジア盟主として北朝鮮をコントロールすることに期待感を表明した。中国が北東アジアで勝利した瞬間である。

 11月1日夜、北朝鮮が六カ国協議に復帰し、間もなく北京で再開されると聞いた時、私は中国が今回の北朝鮮・核実験を誘導したと感じたのはこのためである。

 もちろん北朝鮮に中国の真意(策略)を分析できる外交能力はない。ライス国務長官が訪中する前夜の平壌で、金正日は平壌訪朝中の温家宝首相首相から激しく叱責された。これが中国外交の最終幕だった。同時に金正日が中国から切り捨てられた”最後通牒”でもあった。

 これほど中国の外交術を露骨に現したことはなかった。その辺の国際謀略小説などは足下にも及ばない。まさに凄いの一言に尽きる。ドタバタの日本の政界など、二世・三世議員が通う幼稚園のお砂場に見えてくる。

 中国はアフリカにも覇権を拡大するために虎視眈々と動き始めた。日本はそのような隣国とどのように付き合うか。「米への協力 太く長く」とあい変わらず、対米追随一本で問題が解決できる時代ではない。危機に向かって”思考停止”ではなく、新たな”日本主義”を模索すべき時である。

中川昭一政調会長

 止まらぬ「核保有」発言

与党混乱の火種に

首相「黙認」で拍車

(毎日 11月2日 朝刊)

[概要]自民党の中川政調会長が核保有論議に関する発言を繰り返している。非核三原則の順守を強調する一方で、「憲法の政府解釈では必要最小限の軍備の中には核も入る」と踏み込み、安倍首相の「黙認」姿勢も相まって、核をめぐる論調に制約がなくなったかのような印象さえ受ける。与党の中にも中川氏の確信的な言動への懸念や反発も根強くあり、発言がエスカレートすれば政府・与党の混乱材料となる可能性も出てきた。

 中川氏は昨日(1日)も都内の日本記者クラブで会見し、「この時期に核議論をしなければいつやるのか。北朝鮮が核カードを出してきている以上、核抜きの議論は出来ない」と発言した。麻生外相も中川氏がテレビ番組(10月15日 サンプロ テレ朝)で”核議論の必要”を発言した後の先月18日に、衆院外務委員会で「議論をしておくのも大事なこと」と同調。安倍首相は「自由な議論だから封殺することはできない」と黙認するとした。

 こうした状況に、自民党の山崎拓前副総裁は1日、山崎派総会で「北朝鮮の核開発を悪とみなして制裁を講じる時期に、核武装の議論はまったく矛盾している。発言を阻止しなければならない」と語気を強めた、公明党の太田代表も「与党のしかるべき立場の人が、そういう議論をすることを結構ということにはならない」とクギを刺した。

 しかし中川氏は核論議の中止に応じる様子はなく、さらに核保有を議論する下地が広がりつつある。

[コメント]私が中学生の頃、小説「夜明け前」を読んで部落差別に関心を持ち、その関連の本を読み始めたことがある。すると父が「寝た子を起こすな」という言葉を説明し、部落差別に関心を持たないことが差別を無くすと話した。しかし私が読んだ部落差別の本には、「寝た子を起こすな」という言葉が部落差別を助長すると書かれていた

 また、私が20代後半に軍事の勉強(独学)を始めた時、先輩や友人は平和ではなく”戦争や兵器”の勉強することは軍国主義者に繋がると批判した。私が被爆2世のくせに核兵器の作り方や使われ方を研究するのは反道徳的という人もいた。

 私自身の体験では、この2つは明らかに間違っていたと確信できる。部落差別をなくすためには、寝た子を起こすなという対応ではなくならない。また確かな平和を求めるためには、軍事、戦史、戦略、兵器、戦術、戦時法制、軍制などを勉強することは避けられない。仲間を集めてデモ行進をして、「核実験をやめろ!」と叫ぶだけでは、世界の核兵器はなくならないのである。

 しかし中川氏の発言を聞いていても、核の議論が必要というだけで、日本に核兵器が必要かどうかの主張がない。北朝鮮が核実験をしたから、日本も核議論をしなければいけないと言うだけである。格好ばかり気にしないで、早く核武装の本質を語れと言いたい。「だから何が言いたいのか」。

 また中川氏に反対する側も、議論の土俵に上がらずにヤジを飛ばしているだけだ。そんないい加減な政治家で恥ずかしくないのか。もし平和の党や反核・平和主義者を自称する政治家なら、積極的に核論議の土俵にあがるべきである。むしろ今の現状は、核兵器や核戦略論の知識がないために、核議論から逃げるために「止めろ」とヤジを飛ばしているように見えてくる。

 北朝鮮の核実験実施で日本の非核3原則は無力さをさらけ出したのか。日本は北朝鮮からの核攻撃に備える必要が生まれたのか。北朝鮮を非核化するとはどういうことなのか。しかるべき立場の政治家には、この機会にいっぱい聞きたいことがある。その時に責任ある政治家が、的はずれな核議論や、基礎知識不足の核論争だけは見せないで頂きたい。今でもこれからでも、日本で核議論は常に必要なことである。北朝鮮が核実験を実施した今こそ核議論の質を高めるチャンスである。日本で核議論すれば核武装に近づくと考えるのは偏見である。

 私は若い頃から、被爆体験に強く依存する反核運動を疑問視していた。広島や長崎に世界の人を招いて、その悲惨な被爆体験を知らせ、それで平和運動が完結するという姿勢に疑問を持った。私が初めて海外(アフリカ 27歳)に出た時、荷物の中に多くの原爆関連の写真や資料を詰めて行った。地元の中国新聞(本社 広島市)は「被爆2世(私)がアフリカで原爆写真展を企画し、本日、日本を出発した」と報じたことを帰国後に知った。

 また米兵捕虜が広島で被爆したことを取材したのも、広島や長崎市民だけでなく、米兵にもヒバクシャがいることを知って欲しかったからだ、今では当たり前のことだが、当時としてはそのような視点は平和運動では異端だった。

 私が陸上自衛隊の少年工科学校で2年生(17歳 40年前)の時だった。ある日曜日の午前中、当直生徒として勤務するために当直室にいると、教育隊に1台だけあるテレビで中国が核実験をした映像を放映したのを覚えている。テレビ画面の巨大なキノコ雲を見て、「こんな敵と戦うのだ」という当直幹部の言葉を聞き、率直に核兵器は「恐い」と思ったことを覚えている。

 今回の北朝鮮の核実験で、日本では多くの人がそんな恐怖を感じているのではないか。だから核の議論から逃げてはいけない。中川氏も安倍首相も、堂々と正面からの核議論を行うべきである。むしろ核議論を封じることによって、逆に核兵器の支配を容認(黙認)する怖さを感じる。

中米朝が非公式協議

「6カ国協議」再開合意

無条件、11月にも再開

(各紙 11月1日 朝刊)

[概要]中国外務省は31日、中国、米国、北朝鮮の6カ国協議の首席代表による非公式協議が北京で開かれ、近く6カ国協議を再開することに合意したと発表した。

 非公式協議には米国のヒル国務次官補、北朝鮮の金桂寛外務次官、中国の武大偉外務次官が同席した。ヒル次官補は合意後に記者団に対し、「北朝鮮は6カ国協議への復帰に条件はつけなかった」と述べ、米国が求めていた無条件での復帰を受け入れたと述べた。また追加核実験についてヒル次官補は、「北朝鮮の追加核実験は本日の会合の趣旨に完全に矛盾する」と語り、当面の核実験はないという見方を示した。同時にヒル次官補は北朝鮮の金次官が、北朝鮮が核廃絶を確約した昨年9月の共同声明について「順守する」と述べたことを明らかにした。

 ただ米側はこの話し合いで、北朝鮮が強く求めている金融制裁について、「作業部会を作る用意がある」とヒル次官補は表明したという。しかしロイター通信によるとワシントンの米当局者は同日、北朝鮮への金融制裁を継続する方針を示した。

 ブッシュ大統領は6カ国協議の再開合意を受け、ホワイトハウスで仲介役の「中国に感謝する」と記者団に語った。

 日本政府は協議再開を歓迎するとしながら、北朝鮮の核保有は認められないという立場は変えず、独自制裁や国連決議による制裁を解除しない方針だ。

 6カ国協議が再開しても北朝鮮が核を放棄することは考えられず、米朝の不信の深さから先行きが不安視されている。

[コメント]これは中国の強い圧力に北朝鮮が押し込まれた様に見える。中国の強い圧力とは「北朝鮮への送金停止や、輸出入貨物の制限、それに下段にある石油供給の停止など」が挙げられる。まさに北朝鮮を”生かすも殺すも中国次第”なのである。その中国が最大限の反発をすることを覚悟して北朝鮮はミサイル発射(7月5日)と核実験(10月9日)を行った。その結果、すでに1年間も膠着状態になった6カ国協議を、北朝鮮の激震が襲って再び動き始めた。しかし、これは最初から老獪な中国の考えた外交戦術ではなかったか。

 中国は北朝鮮の弾道ミサイル技術や核武装(核実験)の水準を熟知している。中国は北朝鮮がテポドン2発射を失敗することも、核実験が失敗することも知っていたのではないか。そのことを知っていて、6カ国協議の膠着状態を打破するために、あえて北朝鮮を放置していたのではないかと私は疑う。

 中国はこれでアメリカに大きな恩を売った。北朝鮮には中国の大きさを思い知らしめた。日本、韓国、ロシアには、北東アジアでは中国が主導権を執っていることを実証して見せた。この4ヶ月間(7月、8月、9月、10月)で、中国の国際的な地位は飛躍的に高まった。これこそが中国の老獪な外交戦術ではないのか。中国は世界でも最貧国に位置する北朝鮮を使って国際的な地位を高めた。

 日本はアメリカが北朝鮮への制裁を継続させるのかという問題よりも、中国が6カ国協議で見せる老獪な外交戦術に注目して分析すべきと思う。若い安倍首相も就任直後の北京詣(もう)でをまんまと仕掛けられた。中国は日本の新首相に、ワシントンDCよりも先に北京を詣でさせることに成功した。

 あまりにも鮮やかに騙されると、騙された方は指摘されても気がつかないことがある。北朝鮮の金正日も、今頃は中国に踊らされたと地団駄踏んで悔しがっているかもしれない。すでに中国は6カ国協議で金正日の役割を見捨てている。中国が今まで金正日を生かしておいたのは、今回のように最後の最後に、中国のための踏み台にさせるためであった。そんなことを平然と行うのが中国流の深謀遠慮(しんぼうえんりょ)である。

 中国にとって朝鮮半島の核武装化は、絶対に許容できない政治状況なのである。またパキスタンの核武装化は中国が演出・監督して、北朝鮮も参加した中朝共同の核武装プロジェクトだった。北朝鮮の核やミサイル技術を中国が誘導することは容易だったのだ。日本はそのような中国の隣に位置する国なのである。



※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。