『 強 襲 部 隊 』

世界最強の米軍・特殊部隊の弱点がよく理解できる

早川書房刊 2200円(税別)

 1993年10月、東北アフリカのソマリアに99人の米軍・特殊部隊が派遣された。デルタ、レインジャー、SEAL、空挺部隊などの精鋭混成部隊である。
 
 彼らの秘められた任務は、最大武装派のアイディド派のリーダーを誘拐して、国連の救援活動を支援することだった。むろんこれはアメリカ政府の勝手な言い分である。ソマリアの人々にとっては、突然ソマリアにやってきたアメリカ軍が、空からヘリで市街地に舞い降りて、無差別に銃や砲を撃ちまくって、見境なく子供や女性を巻き込んだ市民を射殺することであった。なぜなら、アイディド派は部族の名前で、同時に武装集団の名称であったからだ。

 市街戦は壮絶を極める。家が密集した場所に、突然数人の女性が現れる。その女性の集団の後ろに、銃を構えたアイディド派の民兵が続く。米兵に迫りながら、女性の後ろから銃弾が発射される。この民兵を倒すには、前にいる非武装の女性を打ち倒すしか方法はない。こうして市街地に孤立した米特殊部隊は動くものは何でも撃つという事態にはまりこんでしまう。

 先日のNHKのドキメンタリー番組で、この戦争で家族を失ったソマリアの少年が描かれていた。かれはソマリアの首都モガディシュが平和になればいいと言う。なぜなら、「平和になってアメリカの観光客が来るようになれば、家族の仇がうてるからだ」と語っていた。それほどアメリカ軍はソマリアの人々の心を強く傷つけてしまった。

 この本を読んでいくうちに、アメリカ兵の側に立って書かれた本なのに、どうしてアメリカ軍はこれほどの間違いをしてしたのかと腹がたってくる。世界最強の特殊部隊というのは、装備や訓練が世界のトップレベルであって、実は最強という意味ではないことに気がつく。少数精鋭の特殊部隊であるがゆえの弱点も多く持っている。そのウイークポイントに気がつかないで作戦を発動すれば、多数の市民をまきこんだ犠牲の山を築くことになる部隊でもあるのだ。

 この本はアメリカの特殊部隊がソマリヤで敗れた記録でもあるし、国連がソマリア型のPKFを放棄した実記録でもある。国連の平和維持活動や軍事活動の難しさを知る上で貴重な1冊になるだろう。

 それにしても、RPGの砲弾に時限信管のものがあって、武装ヘリとの対空戦用に活用できるとは驚いた。地上近くでホバリング中のブッラクホーク機が、地上から発射されたRPGの時限信管つきの砲弾が機体近くで破裂し、それで米軍ヘリの2機が撃墜されてしまうのだ。そろそろ無敵の武装ヘリやヘリボーン作戦にも、厳しい限界があることに気がつかなくてはいけない。

 ある戦車大隊の指揮官が言っていた。私「射距離2千でホバリング中のヘリが撃てますか」、大隊長「はい、それなら静止目標です」(要するに、1発で仕留めますということ)

 まだ特殊部隊が最強で、どんな作戦でも特殊部隊を投入されば解決すると信じている人には必見の1冊である。