双葉社刊 『 アフガン戦略とアメリカの野望 』

柴 田 三 雄 著
アフガン戦争の初期段階を描いたノンフィクション

タリバン攻撃・ブッシュの戦略と米軍の戦術

 
2002年3月発売  定価 1500円+(税)

 昨年の911同時多発テロが発生して、アメリカがどのような戦略と作戦でアフガン戦争を始めたか。それを部隊や作戦の動きから描いた一冊である。米海兵隊がカンダハル近郊のキャンプ・ライノー基地に展開するまでが描かれている。

 しかしフォト・ジャーナリストの柴田三雄さん著となっているが、ちょっと今までの柴田さんとはタッチが違いすぎる。柴田さんは超一流の軍事写真家だが、芸術家らしく書くことと、話すことが苦手な人である。これほど兵器や特殊部隊のことを詳しく話す人ではない。

 それに数箇所、想像を膨らませて書いたと思われる部分があるが、その想像もかなり高度な軍事知識の人でしか想定できないことを描いている。もし軍事の専門家なら、明らかに情報や資料の出所を提示しなければいけないところだが、この本はさらりと書いてすましている。むしろ小説家のテクニックである。しかしこれが悪いとは思わない。だからこの本が面白いのである。軍事の常識から逸脱していないから、多くの読者なら凄い情報と思って読んでいくはずだ。米軍に強い柴田さんの名前ならそれが許される。

 特にそのことを思ったのは、空母キティーホークが9月21日に横須賀を出港して、9日後に、帰港してきたことを謎解きしている部分だ。あの時のキティーホークは本来の作戦を偽装するための出撃だったという。実はキティーホークはひそかに四国沖に行き、韓国に配備していた特殊作戦ヘリMH-47Eを、岩国基地経由の四国沖で受け取り、艦内に収納してからそのまま横須賀に帰港したと記述している。そして横田基地に米本土から輸送機で飛来したデルタフォースの隊員を空母キティーホークに収容し、今度は本当にアラビヤ海の作戦海域に出発したとしている。この説は確かにすごい話である。正体がすべて秘密部隊のデルタの隊員を、マスコミの目から遮断するために考えられる作戦である。

 しかしそのことを確認するために、米軍に問い合わせても何も答えてくれないことを知っている。デルタの作戦に関することは高い機密性が保持されているからだ。否定も肯定もしない。ノーコメントである。しかしアメリカ内情に通じた軍事専門家でも、今の段階でこれほどデルタの動きを詳しく書くことはできない。やはりこれは想像なのであろうか。と、考えつつも「ありえる事」と専門家でもうなずける想像である。

 このほかにも、はっと驚くような情報が何箇所かにさらりと書かれている。それが本当の話として読んでいくから面白いのだ。とにかく、この本の一読をおすすめする。柴田本が新天地を開拓した軍事本である。私は軍事評論家のオウさんのエキスを全体に感じた。軍事小説としても読める本である。昔、新ジャーナリズムという表現方法があった。事実であったことを取材し、小説風に描き出す文芸テクニックのことだ。このタイプの作家としては沢木耕太郎氏が有名である。この本は新ジャーナリズムではないが、なんと分類すればいいのだろうか。まあ、そんなことより本は面白いほうがいい。