南 北 統 一

重 村 智 計 


南北に分断された朝鮮民族の統一悲願の過去と展望を知る

 
小学館文庫 (書き下ろし)

定価 476円+税



 毎日新聞の元ソウル特派員で、論説委員を昨年退職され、現在は拓殖大学国際開発学部教授の重村氏の書き下ろしである。この本は昨年秋に出版されたが、読んだのは最近になってからである。数年前に毎日新聞の社説で、「朝鮮半島の専門家で戦争が起きるという人は、軍事を知らないから無責任に言うのである」という記事を読んだことがある。社説だから書いた論説委員の名前は書いていない。しかしすぐに重村さんだと想像した。

 私もつねづね、「なんで北朝鮮が戦争できるの!。そんな余裕がどこにあるの。何のための戦争? 勝算は? 朝鮮半島で戦争が起こると言う人は、バカなあいつらならやりかねないという差別意識があるんじゃない」と考えていたので、重村さんの分析にホッとした思いがある。

 今回もこの本でひとつの発見をした。それは北朝鮮の体制が崩壊しないのは、国民の間に儒教社会主義が確立されているからだという分析である。すなわち自立をしめす主体思想(チュチェ)こそ、年長者を大事にする儒教精神の北朝鮮版という説である。北朝鮮の国民は金日成・金正日を親方と敬い、それに尽くすことが最も尊い生き方だと信じているからだ。今はどんなに苦しくとも、やがて親方様が救ってくれる。親方さまは私たちのために、最善の解決に向かって尽くされているという意識である。重村さんは書いていないが、これは別の本で金日成が日本の天皇制(戦前)から学んだと読んだことがある。

 しかしブッシュ政権の朝鮮政策見直しと、米中関係の緊張が高まってきた環境で、朝鮮半島の状況も大きく変化してきた。しかしこの本で書かれているように、北朝鮮が南北交流の主導権をとっていることは間違いない。また米朝関係が正常化しなければ、朝鮮半島の統一が促進するわけがない。

 ブッシュ新政権が対北朝鮮政策を決定する前の静かな時代に、この本で基礎知識を養っておくことをお奨めする。今の朝鮮半島は嵐の前の静けさなような気がする。(2001年5月23日)