スパイ事件は本物か?
『ロシア武官が論文指南』
田岡俊次 朝日新聞編集委員 著
週刊「AERA} 00,9,25号
朝日新聞社 360円 (税込み)
| この記事は、まず萩崎3佐がボガテンコフ大佐に手渡した情報について、防衛庁(自衛隊)の関係者の証言を載せている。事件発覚後に、警察に呼ばれて資料の重要度を点検した防衛庁関係者は、渡した資料は「取り扱い注意」のものばかりだったことを明らかにした。 次に防衛庁で指定を受けている「秘密文書」の説明を行い、法的にも「秘密の漏洩」にあたらない資料であったことを説明した。また二人が会った状態も、スパイ同士の密会というにはほど遠く、そのことに違法性がないことを説明している。田岡氏は二人の関係を、スパイ同士といったものではなく、萩崎3佐の修士論文「ロシア・ソビエトの海軍戦略の変遷」のアドバイスを受けるのが目的だったと分析した。 自衛隊の幹部(特に海自)たちは、ロシア海軍に対しては過去のような敵対意識はなく、交流で友好海軍のような意識が芽生えているという。だからそのような新しい意識と、警察公安部が「ロシア大使館員と個人的に接触する公務員はスパイ」という旧態依然の体質が、今回のスパイ事件を生んだという、自衛隊側(実は田岡氏の主張のような気がする)の見方を紹介している。 最後に、萩崎3佐が子供のお見舞いや香典で、ボガテンコフ大佐から金品を受け取ったことを、相手に付け入られるスキを与えたと批判している。そしてスパイ事件を、「放置すればさらに巻き込まれるのを防いだ」か、「ロシア海軍に精通した情報将校の芽を摘んだ」かの二者択一をすれば、前者のほうに軍配があがるという。品位に欠けた将校を次々と生み出す自衛隊の体質と社会背景が大きな問題だと締めくくっている。 これは大変すばらしい記事だと思う。さすがに田岡氏だけのことはある。しかし私の感覚と違うのは、最後の二者択一をあえて選ぶなら、私は後者を選ぶだろう。萩崎3佐が若い頃から夢見て、今までに頑張ってきた苦労を思えば、まだ萩崎3佐の罪を罰する気持ちにはなれない。あくまで許容の範囲だし、修正が十分にきく活動であったと思う。ちょっと不器用な人間か、それともちょっと愚直な人間なのかもしれない。これを萩崎3佐が被った災難だったで片づけたくはない。 (2000/9/20) |