検証・朝鮮戦争 金日成の勝算と誤算
神浦 元彰著
月刊誌「丸」 8月号
潮書房刊 1000円 (税込み)
| 南北首脳会で韓国と北朝鮮の本格交流が始まろうとしている。朝鮮半島地域の安定と、将来の統一を踏まえての交流開始である。しかし南北の両首脳が会談の席に着くには、半世紀の時間がかかってしまった。それは朝鮮戦争で120万人が戦死したり、1千万を越える人が離散家族になったという経緯と、米中ソ三大国の利害が朝鮮半島で激しく交差したからである。 そのような三大国の利害が朝鮮半島で対立する構図を、朝鮮戦争の発生要因で解説しながら、その地政学的な意味を探る記事である。その朝鮮半島の地政学的な意味は、交通や通信の発達や、戦略や兵器の進歩で若干は変化して この記事を要約すれば、極東アジアでアメリカの軍事的な進出を嫌うソ連(ロシア)は、南部朝鮮を統一して影響力を拡大し、日本や太平洋に進出する戦略を選択した。また中国は台湾に逃れた国民党軍が反攻をしてくるなら、一つは台湾海峡を逆に上陸してくるルートと、国民党の同盟軍(主として米軍)が朝鮮半島から北京に侵攻する2ルートと考えた。そこで朝鮮半島の米軍勢力を早めに封じて起きたかった。 ![]() 金日成は人民軍の装備をソ連から提供してもらい、中国人民解放軍の朝鮮人部隊(三個師団 約三万人)を密かに北朝鮮に招き入れて、徴兵で集めた人民軍の基幹要員にした。こうして金日成の人民軍は、ソ連の最新の兵器で武装し、中国人民解放軍の歴戦の精鋭兵士が配属され、アジア最強の軍隊となった。 これに対してアメリカでは、第二次大戦の終了で国防省の時代は去り、理想主義的な国務省の政治が始まっていた。 国務省は中国が台湾に進攻しても、アメリカは軍事介入しないことを宣言していた。東南アジアの地域紛争にも、アメリカは軍事介入しないで、国連にその任をゆだねると声明を発表していた。アメリカの防衛ラインはアリューシャン列島と日本で、朝鮮半島はアメリカの防衛ラインに入らないとさえ宣言を行った。 米国防省はソ連や中国で共産政権が誕生し、その影響力を世界に拡大するのを見て、危機を強く感じていた。そこに朝鮮戦争が始まったのである。予定通り、北朝鮮はソウルを四日で占領した。北朝鮮軍の奇襲を受けて、九州から太田(韓国)に緊急派遣された米陸軍二十四師団は、準備不足もあって戦線の構築に失敗し敗走した。こうゆう事態を受けてアメリカは朝鮮戦争に直接介入することを決定した。再び、アメリカは国防省が政治の表舞台に登場したのだ。アメリカは直ちに反共政策を打ち出した。日本に自衛隊(警察予備隊)を作り再武装させた。。中国軍が台湾に進攻してくれば、アメリカは軍事介入することを宣言した。アメリカはリベラルな国務省に代わり、強烈な反共を掲げる国防省が台頭するためには、金日成が始めた朝鮮戦争は格好のステップ台になった。 マッカーサーは北朝鮮の奇襲攻撃を知らなかったのか。答えは「ノー」である。マッカーサーの情報部は、北朝鮮軍南進の動きを正確に把握していた。しかし知らぬふりをした。金日成やスターリンや毛沢東に、アメリカが朝鮮半島に軍事的な野心を持っていることを気づかせないためだった。最近になって発見された当時の資料の中に、それを証明できる資料が多数見つかっている。 朝鮮半島はロシア、中国、それにアメリカの同盟国の日本が、互いにゴリゴリと音を立てて押し合う戦略の要衝なのである。別の言い方をすれば、グランド・パワーの中国とロシアが、シーパワーのアメリカと日本と、互いの影響力拡大を求めて覇権を競い合う地域なのである。 これから朝鮮半島で和平と統一が進めば、必ず、グランド・パワーとシーパワーが押し合ってゴリゴリと軋む音が聞こえてくるだろう。私にはすでにその音が聞こえているのだが・・・・・。 |