日本国防軍を創設せよ 

栗 栖 弘 臣著

小学館文庫 552円+税

 自衛隊の統合幕僚会議議長の時代に、『超法規発言』で金丸防衛庁長官(当時)に解任された栗栖氏の、久々の書き下ろし本である。いやー懐かしい。著者近影の写真をなつかしく見て、栗栖氏もすっかり老人になられたと思ったら、今年は80歳になられるという。しかし目つきの鋭さは、とても80歳の人には見えない。

 若い人はご存知ないかもしれないが、1977年に陸士・陸大(旧軍)の出身者でない東大出の統幕議長が自衛隊に誕生した。それが栗栖氏だった。しかし翌年の7月に、月刊誌「宝石」の雑誌インタビューに答えて、「現在の自衛隊法は不備があり、もし防衛出動が発令されれば、第1戦の指揮官は超法規的に行動する」と語った。この発言が国会で問題になり、金丸防衛庁長官が解任したと言う経緯があった。しかし栗栖氏は制服組の信頼が厚く、「よくぞ本音を言ってくださった」と、栗栖氏の周辺には退職後にも多くの人が集まった。その頃に、私はテレビの報道番組のインタビューで、栗栖氏の横浜の自宅を何度か訪れたことがある。

 ある日のことだった。そのインタビューが終わったときに、雑談で栗栖氏に歴代防衛庁長官でもっとも質が悪いと言う人の名前を聞いた。すると答えは金丸氏ではなく別の人の名前をあげた。その人物は、私も最低の防衛庁長官だと思っていたので、栗栖氏をさらに信頼するようになった。当時も今も栗栖氏は、インタビューには実に歯切れがよかった。

 この本をぜひとも読ませたいと思うのは、自民党の国防族の連中で、先日、防衛庁を国防省にしろとぶち上げた者達である。本当に自衛隊や国防の実態を知っていて、なおかつ国防省にしろといっているのか、と、聞きたい。今の防衛庁を国防省にできるほど、日本の国防の根幹はできてはいない。それをしなかったのは、政治家である国防族の連中であって、防衛産業や防衛予算や寄生し、選挙の時は自衛隊票を利用してきた者達である。その連中がやるべきこともやらないで、口当たりのいい「防衛庁を国防省に!」とは情けない限りである。自民党の国防族の連中は、この「日本国防省を創設せよ」を100回読んで、もう一度原点にたち帰って、日本の国防問題を考えてみろといいたい。

 と、過激なことをいっても、私は決して右翼思考や軍国主義者ではない。じつは栗栖氏に始めてであったのは30年も前のことである。当時、栗栖氏は広島の13師団の師団長であった。その栗栖師団長が広島市の中心地で、自衛隊のパレードを始めてやるということになった。岡山の日本原から戦車大隊を呼んで行なう、本格的な自衛隊の軍事パレードである。当時20歳の私は、そのような行為(被爆地での軍事パレード)を許せなかった。広島に住んでいた私は、県庁前の観客席から抗議の声を張り上げて、自衛隊の被爆地・広島軍事パレード反対を叫んでいた。その私の前を、ジープに乗った栗栖師団長は通過をしたのである。あれから30年経ったのか。そのような過去を越えて、私はこの本から得るものは多いし、今後の自分の指針に役立つことを確信した。ぜひ皆さんにも読むことをお勧めする1冊である。(3月9日)