「弾道ミサイル防衛」は愚行である

 高榎 尭 氏

月刊 「世界」  (2000年3月号)

 アメリカではレーガン大統領のSDI計画の復活を目論む共和党保守派によって、NMDやTMDの総体であるBMD配備への圧力が強まっている。そのために現在は一ヵ所に制限されているロシアとのABM条約を反故にしたり、その改定を主張する勢力が米議会内で活発に活動している。彼らはイランやイラク、それに北朝鮮の脅威を強調し、BMDの早期の配備を訴えている。しかしその背後には、過去にSDI計画で莫大な資金を投入させ、結局、技術的に失敗した米軍需産業の姿が見えると言う。すなわちBMD計画は米国のハイテク軍需産業を守るためのものだと分析する。
 
 その夢のようなSDI計画で、アメリカは国家経済が痙攣を起すほど疲弊した。ソ連がアメリカのSDIに対抗できないで、その無力感から崩壊したという意見には、当時のソ連はSDIに100もの対抗手段を持っていたと反論する。ソ連はアメリカのSDIで崩壊し、米ソ冷戦が終結したという意見は正しくないと分析した。

 またアメリカの脅威の順で上げれば、北朝鮮・イラン・イラクの弾道ミサイルが飛来するよりも、密かにテロリストが爆弾を運び込んで爆発させる方が上位だという。
 
 当然ながらBMDの技術的な問題も、克服できる見とおしが立っていないことも指摘している。

 さらにBMDの開発・配備によって、世界が緊張していくことのデメリットを説く。ロシアや中国はもちろんだが、第三世界もアメリカのBMD配備に警戒感を高めてきた。このように世界秩序を不安定にするBMDを、ホワイトハウスはあまり積極的た態度でではないという。しかし共和党保守派はクリントン大統領が弱腰で、BMD開発に消極的かつ無責任だと攻撃している。そのような状況下で、今年一月のNMD迎撃実験の失敗である。さっそくアメリカはNMD計画を見直して、その資金を貧困やインフラ未整備の問題を抱えている国に援助したほうが、21世紀の安全保障に約立つと主張している。高榎氏の主張は以上のようなものだが、大部分の日本人が大いに共鳴できる主張である。

 ということは、我々にとっては当然の主張だが、本当にまだアメリカの保守派は気がついていないのだろうか。日本政府はとっくに気がついているのに、気がつかない振りをしてTMD開発に資金を出しているのは、BMD計画でアメリカの衰退を願っての政策なのかと疑ってしまう。我々日本人は江戸時代に、参勤交代という制度で大名を疲弊させ、結局は武士社会も崩壊させた歴史を知っている。日本政府が一昨年に行なったTMD計画の参加は、何か裏に一物あるような気がしてならない。私としてはアメリカに覚られないように気をつけなさいと、日本政府や外務省に忠告をしておいた方がいいだろう。私はアル中だと知っている人に、頼まれても酒を飲ましたりしない。それと同じように、BMD計画でアメリカが失敗することがわかっているのに、TMDに資金を提供するような卑劣なことはしたくない。