緊急指令サイバー戦争
編集部 田岡 俊次氏

AERA 2月14日号 360円

 科学技術庁のHPにハッカーが侵入して、ホームページを書きかえる事件が発生した。そのことで大騒ぎをする日本政府と、コンピューター先進国のアメリカとの比較を行なって、日本の対応の遅さを強く指摘する記事である。

 特に米軍は軍事でのサイバー戦争は、近代戦争で航空機が誕生したほど重要な局面になると考えている。そのサイバー戦争のために、米軍では核兵器開発やSDI研究に匹敵するほど、優秀な人材や莫大な資金を投入する体制だと分析している。またすでにサイバー戦争を想定した大演習「エリジブル・レシーバー 97」を行ない、コンピューター戦争への楽観論者を戒める具体例をあげている。

 これに対して日本の防衛庁や自衛隊では、サイバーテロへの対応が大きく遅れ、米軍と比べると空母と丸木舟ほどの差があると解説する。技術的な問題ばかりか、防衛庁職員・自衛官のサイバーテロへの認識の低さも問題があるという。この記事は朝日新聞の編集委員の田岡俊次氏が書いたものである。

 この記事を読めば、米軍は単にサイバー戦争の防衛に備えているのではなく、同じように攻撃的なサイバーアタックに対しても、万全の態勢で取り組んでいることがわかる。違法行為の取締りが主目的の警察と、防衛だけでなく攻撃面も重視する軍隊とでは、サイバー攻撃に対する任務分担が違う所以である。
 
 これに対して防衛庁は科学技術庁のHP騒動の時に、「防衛庁の専用ネットワークは外部との接続をしておらず、ハッカーに侵入される心配はない」というコメントを発表した。このコメントを聞いて、私は防衛庁の認識の甘さに愕然とした。田岡氏はこの記事で組織上部が油断して、知らぬ間に末端が外部の回線に接続する可能性があると指摘している。私は、「ハッカーは昼間はシステムの構築に従事し、夜になるとそのシステムを破壊するハッカーに変身する」という有名な言葉から、外線と接続されなくても、人為的な問題があることを指摘したい。それは防衛ネットワークが外線に接続しなくても、システムを作ったSEが、数ある端末の一部に密かに携帯電話を組み込めば、その日からSEはいつでもその軍事・防衛システムに侵入して、極秘情報を見たり改ざんをすることが可能なのである。それが軍事スパイという高度な社会問題ではなく、趣味などの遊び感覚で出来るから怖いのである。

 国家の防衛を考えるなら、防衛庁や自衛隊はそのくらいの危機感は持っていたほうがいい。以前にアメリカのある銀行では、その銀行のコンピューターシステムを作ったSEが、密かにシステム内に爆弾(システムを破壊するプログラム)を仕掛けて銀行を脅迫したなんて事件も起きている。内部告発の多い防衛庁職員や自衛隊員が、何かの腹いせで防衛庁の専用ネットワークにシステムに、そのような爆弾をし掛けることを皆無と思わないで頂きたい。防衛庁のコンピューターネットワークは、外部と接続がされていないから心配ないというのは、今や日本の防衛当局がいかにコンピューターネットワークに無知であるかを示す言葉になった。
写真は記事が掲載されたAERAの表紙と記事である。