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Communication

所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamimura Motoaki
Military Analyst

English Column of This Month!VOICE OF Mr.KAMIURA

所長ご挨拶

5月25日 2015年

第172回

 

神浦元彰

昨年11月、急に左の耳に水が入ったような、妙に膨らんだ音が聞こえるようになりました。”痛み”や”めまい”、それに”吐き気”や”耳鳴り”などは一切なく、たまたまプールで泳いだ際に耳に水が入ったのかと軽く考えていました。

その状態が1ヶ月ほど続いたので、ちょっと心配になり近所の耳鼻科で受診(初診)したところ、すぐに耳鼻科専門の高度医療病院(東京・お茶の水)を紹介されました。その日の午後に、その専門病院で診察を受けると、直ちに入院して集中治療を受けるようにいわれました。

医師から聞いた病名は「突発性難聴」です。原因は強いストレスの可能性が高いと言われました。入院して直ちに点滴でステロイドを大量投入し、毎日2回、二酸化炭素を含んだガスを吸入するという治療でした。

しかし発症後2週間以内は治癒する確率が高いのですが、私の場合、1ヶ月も放置していたので直るのは難しいとも言われました。

結局、入院して治療の成果もなく、左耳は今も難聴のままです。しかし、右耳は普通に聞こえますので、バイクの運転や電話での会話、日常的な場所での会話は支障なくできます。(でも、騒音の多い場所では会話が聞き取りにくくなります)

入院した病院の担当の医師によれば、さらに右耳も難聴になるようなことはないそうです。また、遺伝や他人への感染などの心配も必要ありません。

そこでストレスの原因ですが、私は第1の原因は安倍政権が昨年中に進めた特定秘密保護法や安保法制の改革(集団的自衛権行使容認の閣議決定など)への動きと思います。安保法制は改悪以前に、軍事的に理解できない論理ばかりが羅列され、こんなものはデタラメだと思うことが多かったからです。今まで自分が必死に勉強してきた軍事学と、戦争の論理や有事の展開とはまったく別物だったからです。これは軍事論ではなく偽物だということに気づきました。

 

そんな私のイライラをぶっつけるには、私にはこのHPしかなかったのです。しかしいくら私がHPで叫んでも、どこらも反応はなく、私はますます孤立感を高めるだけでした。これは私が安倍政権の安保法制案を理解できなかったように、皆さんも与党の安保法制案の内容が理解できなかったからではないでしょうか。

12月31日に耳鼻科を退院してからは、私は正直に今の安保法制の議論がさっぱり理解きないと書き始めました。もし本物の議論であれば、難解であっても、それは私の無知の責任です。しかし、安保法制を報じる新聞記事を何度読んでも理解できないのです。そこでやっと、これは軍事とは無縁の無茶苦茶な議論だと主張しました。

政府が作った新語の”グレーゾーン”や”切れ目ない対応”など、今までの法制で確実に対応できることばかりです。それを、いかにも新しい防衛概念であるように偽装し、より日本が戦争に踏み込んいくための口実にしているだけです。

これは「裸の王様」のように、インチキな仕立屋(官僚や学者たち)が服を縫い上げ、裸の王様に着せて、馬に乗って街をパレードしているようなものです。

それでも、わたしは自分の限界を痛感しました。まさに「自己満足的にHPに書き込んでも、悪化する安保法制に警鐘を鳴らすどころか、辺りを照らす1本のロウソクにもなれない」という自分自身への挫折感です。

そこで、もうこのHPをやめて、次の行動を考えるべきと時期と考えるようになりました。

しかし、もうHPを辞めようという気持ちと、ここでHPを辞めれば安倍政権の暴政で逃げだすことと同じという悔しい気持ちで悩みました。

ツイッターでも呟きましたが、このHPを始めて16年が経過しました。小学校6年、中学3年、高校3年、そして大学で4年を合わせた16年間と同じです。そろそろ私がこのHPを卒業しないと、これからは皆さんに迷惑をかけるという意識もあります。

私は基本的に、早朝、配達された新聞の数紙の朝刊を読み、いろいろな通信社の電子版をチェックし、これは重要と思った記事を選び出し、直ちにコメントを書き出します。すると1本の記事について、改めて調べ直すことはほとんどありません。これはメディアなどの要請に応えて、緊急時の瞬発力を発揮(コメントや解説)する訓練にはなりますが、皆さんにとっては迷惑となることがあります。皆さんに真実をより深く、詳しく解説するという努力が足りないからです。

そこで来月(6月)から、このHPのやり方を変えます。本当はキッパリと辞めるつもりでいましたが、やはり、これから安保法制の本格的な審議を直前にして、敵前から逃げ出すようなことをしたくないからもう少し頑張ります。

しかし単純に辞めるといっても、16年間、毎日のように生活のリズムとして習慣化し、このHPを更新する生活を変えないと何も次のことができません。そこで、しばらく更新を休止したいと考えています。実はHPの更新を休止する方が、私には更新するよりも何倍も心苦しいのです。

今まで、私のHPを読んで頂いた方を裏切るようになるからです。しかし一時的でもHPを自分の生活から切り離さないと、私の次の展開が出来ないのです。このままだとダラダラと今の生活が続くだけです。

つぎに何ができるか、次ぎに何をやるかは、今の私に確かなものはありません。もし今の世の中で私を必要とするならば、次の展開が必ず起こると信じています。

ただ、これからは、これまで閉じこもっていた自分の部屋から出て、世界の戦争や紛争を見て、自分の頭で考えて強く主張できる意見を発したいと考えています。戦争や紛争の当事者の話を聞きたいと思っています。

しかし、昔のように私には体力や気力がないことも事実です。もしも現地に行けないなら、現地に行った人から話を聞きたいと思います。地図を示してもらい、写真や映像を拝見して、出来るだけ詳しく現地の話しが聞ければよしと思っています。その上で平和に対する何かの教訓を得たいと考えています。

今、真剣に、そんな自分勝手なことを考えています。以前、自分の人生で同じような大きな変化が3回あったと思い出しました。1回目は自衛隊(少年工科学校)を辞めたとき(18歳)です。2回目は、自分で立ち上げた軍事学の研究会(セミナー)を辞めたとき(31歳)です。3回目は子供が生まれて積極的に行っていた軍事の現地取材を中断する決心(家事と育児をする)を固めたとき(40歳)です。そして今回、4回目で軍事専門のこのホームページを辞めよう(中断?)としていることです。

おそらく、これが私の最後のわがままです。私が元気なうちに次の展開にかけてみることにしました。私は当分、HPの更新を止めることで禁断症状で苦しむかもしれません。でも、次の展開を楽しみにしてください。必ず底辺からはい上がってきます。

明日から、まずは体力の回復です。今まで、このHPを読んでくださった皆さん。本当にありがとうございました。でも、私が軍事に対する情熱はいささかも衰えていません。ますます戦争や平和のことに興味津々・意気揚々です。これまでの経験と知識、それに旺盛な好奇心をフルに活用して、もう一度一暴れしてみせます。

 

                                             5月25日 

 

今月(5月)だけは、HPの更新を続けます。6月からも、更新回数は激減しますが、時々は更新する約束をしてしまいました。この”所長ご挨拶”で私の近況を伝えたり、重大事件では、私のストレスをためない程度に更新します。旧知の友に相談したら、「その責任が君にはある」と説教されてしました。

要は私が不器用なのです。ひとつのことを始めると、集中して他のことが出来なくなる性格のようです。しかし、その性格のために多くの修羅場をくぐり抜けてこれました。

                                                            

以前の所長挨拶はファイル(文書倉庫)にあります。

著書紹介

「面白いほどよくわかる 世界の軍隊と兵器」
05年1月30日 発売  日本文芸社刊  1400円(税別)  

この本を私の著書と呼ぶことはできない。大部分は軍事ジャーナリストの芦川 淳さんと、軍事フォト・ジャーナリストの菊池雅之さんが書いた本である。二人とも、将来は日本を代表する軍事通になる素質を持っている人である。  この本で私の担当は、監修と第7章の「新しい日本の防衛政策」を書いた。私としては高校生レベルの軍事入門書として読んで頂きたいと考えていた。しかし意外なことだが、若い新聞記者やテレビ関係の報道ディレクターが読んでいた。私のところに取材に来る前に、この本を読んできましたと話す人が多くいた。今までは、軍事とは関係のないところに生き、仕事柄、初めて軍事の世界に触れる人には都合のいい本だったようだ。
 出版社に聞けば、やはり売れているようで、早々と半年で軍事本では珍しい重版になった。ともすれば私たちは軍事の専門家として、高度な内容の本を書きたがる傾向がある。社会に自分を認めて欲しいという欲求があるからだと思う。しかし世の中が求めているのは、確かな基礎知識に基づいた初級クラスの軍事解説本も忘れてはいけないと気が付いた。  これから軍事を勉強してみたいと興味を持った方にお勧めしたい1冊である。 
『戦争の科学』(監修)
03年9月10日 発売  主婦の友社刊  3000円 (税別) 

5月のある日、主婦の友社の編集者が訪ねてきて、「この本を翻訳して、日本でも出版したいと思います。ぜひ協力してください」と話した。原題は『SCIENCE GOES TO WAR』である。すでに下訳ができていて、読んでみると戦争というより兵器の歴史書だった。まずは日本語訳の間違いを訂正するために原書と突合せながら読んでみた。するとこの和訳が実に上手い。いやむしろ上手すぎると思った。言葉を訂正するどころか、逆に、言葉の使い方に感心しながら読んだ。翻訳はまったく問題がなかった。ところが原書には、今の時代では必須のRMA(軍事革命)の記述がなかった。そこで、「この本のタイトルでRMAの項目がなければ欠陥品になります」と編集者に話した。そこで最後の解説の部分として、RMAを書き加えることになった。それを私が担当することになった。
 「高校生にわかるように書きます」と言って、もっともわかり易いRMAの解説を書いた。それから原書にはないイラストを友人の長谷川正治氏を紹介した。ぜひとも図説のイラストが必要と思ったからだ。これで8月末に完成した。訳者の茂木健さんに脱帽した。
「北朝鮮消滅―金王朝崩壊の衝撃、到来する破局」
03年3月1日 発売  イースト・プレス社刊  1500円(税別)

 北朝鮮という国を軍事的な視点で見ると、今までは異常な体制支配で隠された部分から、真の姿が浮かび上がってきた。なぜアメリカは北朝鮮を軍事攻撃できないのか。韓国の太陽政策はなぜ生まれたのか。日本と北朝鮮の国交正常化はなぜ進展しないのか。
 そもそも北朝鮮の軍事力とはどうなのか。テポドンやノドンが日本に飛来する可能性はあるのか。そして、北朝鮮をめぐる中国やロシアの対応に隠された真意はどこにあるのか。
 イラク戦争でフセイン独裁体制が米英の軍事力で倒された今こそ、この本が解き明かす北朝鮮の真実が近未来を予測します。
 この本は1500円で、2003年3月1日が発行日です。
「北朝鮮「対日潜入工作」」
共著  別冊宝島宝島 038  宝島社刊  1200円(税別)

 私が担当したのは、「生物・化学兵器の原料流出のみを警戒せよ!」です。何だか変なタイトルですが、もう北朝鮮の兵器は脅威ではない。エンジンのかからない戦車、飛ばない戦闘機(飛ばせないパイロット)、潜航せきない潜水艦の数を数えて怖がっててもしかたがない。しかし生物・化学兵器だけは怖い。これに対する警戒は必要と書いたら、このようなタイトルになりました。
 原稿を書いたのが02年の7月、本が出たのが8月、そして9月から小泉訪朝と拉致事件被害者の帰国と、日本で北朝鮮関連のことで大騒動になりました。そのためか、何度かこの本が増刷され、こんど宝島文庫にもなるそうです。
 北朝鮮は怖くなければ北朝鮮ではない。怖い北朝鮮が大好きという方には、この本は絶対のお勧めです。金正日の危険度を知る上では面白い本です。
「裸の自衛隊」  
神浦元彰 監修   宝島文庫社   ¥533(税別)

歴史的な名著として話題になった自衛隊本。ベストセラーの初版から9年たっての文庫本なのに、初版〔文庫〕で10万部を刷ったという驚異の本。この「裸の自衛隊〔文庫〕」では、記事中以外に、「INTRODUCTIN」と「あとがき」を担当しています。他の著名な執筆者の鋭い取材や分析には、軍事の専門家でない方が、むしろ自衛隊を正確に見ていると脱帽しました。自衛隊の本当の姿を知りたい人にはお勧めです。現職や元自衛官には圧倒的な人気でしたが、防衛庁高官や自衛隊の偉さんたちにはヒンシュクをかいました。
「北朝鮮最後の謀略」
神浦元彰 著   二見書房   ¥825(税別)

 神浦所長が最初に挑戦した「軍事小説」。本当はこれで直木賞を狙っていたが、候補どころか話題にもなりませんでした。〔もちろん冗談〕 小説の話しの内容は、ロシアの犯罪組織から核爆弾を密かに買った北朝鮮の指導者が、横須賀港に寄港している米原子力空母の船底に核爆弾を仕掛け、関東一帯を「チェルノブイリにする」という計画が発覚。それを阻止すべき自衛隊の特殊部隊が投入された。北朝鮮軍工作員指揮官の許少佐の謀略に翻弄される日本。その間にも、核爆弾は改装された貨物船で東京湾に運ばれ、水中から原子力空母の船底にセットされた。(裏話・この小説はアメリカの高官が、「北朝鮮が1〜2発の核爆弾を持っていても、1万発以上の核弾頭を持っているアメリカの脅威にはならない」と言った事に頭にきて書いたのがもともとの動機です)
「北朝鮮「最終戦争」」
神浦元彰 著   二見文庫   ¥495(税別)

北朝鮮がテポドンを発射実験して、日本政府やマスコミのあまりの動揺ぶりに「ビビルな日本、北朝鮮は怖くない」と、科学的な軍事分析してみせた本がこれ。内容はノンフィクションですが、軍事常識や理論を勉強するには最適の本です。各所に具体例を挙げながら、理論的な説明をしておきました。この本は一部の朝鮮半島の専門家には高い評価をして頂きましたが、「北朝鮮が攻めてくる」と危機感を煽ってなんぼの人には敵視されました。しかし北朝鮮がいくら全体主義の国でも、国民の大多数が飢えているのに、大きな戦争を始める余裕はないでしょう。(裏話・この本で言いたいのは、本当に怖いのは北朝鮮ではなく、その背後にいる中国で、その将来の日中関係によっては、深刻な事態になると警告をしたかった。新たな冷戦を生まないために、中国と日本と米国が軍事対立をしないことが大事)
「アジア有事 七つの戦争」
神浦元彰 他(共著)   二見書房   \1748(税別)

 「何か面白い本を書こうよ」と、軍事評論家の野木恵一さんと話していたら、これからのアジアの10年間を、軍事情勢から分析し予測してみようと企画したのがこの本。そしていつもすごい記事を書くなと関心をしていた、河津幸英〔軍事研究誌 論説委員〕さんと、航空ジャーナリストの石川潤一さんにも加わって頂いて、4人の共著で出版しました。
 本当は4人で酒でも飲みながら、ワイワイガヤガヤとやりながら、進行していこうとぐらいに考えていました。ところが、野木さんは昔から酒を飲まないことを知っていましたが、河津さんも酒を飲みませんでした。石川さんもほんの付き合い程度しか酒を飲まないと聞いて大ショック。大酒飲みの私としては、極めてまじめに企画から、執筆まで真剣に取り組んだ本です。出版後にA新聞社の有名軍事編集委員から電話を頂き、よく書けているとお褒めの言葉を頂きました。4人が大酒のみだったら、どんな本が出来たのでしょうか。
「日本の最も危険な日」
神浦元彰著  青春出版社  絶版  発行1978年6月  

 22年前の本です。「神浦さん、将来、大物になる人は20代で本を出しています。書いてみませんか」と、私が29歳の春に青春出版社編集部の行本さん(当時、現在は文化創作出版社)に言われ、中高生を読者対象にして、わかりやすく軍事常識の解説書を書いたのがこれ。日本や日本周辺で考えられる軍事問題を99項目とりあげて解説をしました。たとえば、「なぜ中国は台湾を攻めないのか」「小さな地域紛争(人種、宗教、国境など)から、人類を滅ぼす全面核戦争までの戦争分類法」「米ソ、戦略核兵器の種類と核戦略」「北海道脅威論のいい加減さ」「開発中の精密誘導兵器の恐怖」などなど、いろいろな項目で書きました。たしか30歳の7月の誕生日にぎりぎり間に合ったと記憶しています。この本を出したのを機会に、テレビなどマスコミに軍事問題で出るようになりました。そのころ週刊ポストで最も若い記者だった二木啓孝氏(現、日刊ゲンダイの編集部長)と、この本が縁で知り合い、同じ年ということで仲良くなり今も付き合っています。私の肩書きの「軍事ジャーナリスト」というのも、二木氏が20代で軍事評論家はないだろうと命名しました。この本で私の本格的な軍事人生(取材・研究・発表)が始まったようなものです。それが今、私の書斎の本箱を見たら、なんと1冊もないんです。びっくりしました。私と同じ頃に青春出版社から「天中殺」の本が出て、歴史的なほど爆発的に売れました。そして日本中で占いブームが起きたときは驚きました。まだ藤本義一氏が日本テレビで11PMの司会をやていた頃の話です。その11PMにも何度か出演させて頂きました。
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