北朝鮮の不審船に対応する高速特殊巡視船


ジャイロと連動するリモコン式の20ミリ機関砲


これが高速特殊巡視船の新兵器と新戦術!

 2001年2月と3月に、新潟、金沢、舞鶴の海上保安庁部に、3隻の高速特殊巡視船が配備した。これは2年前の不審船事件で、海上自衛隊も海上保安庁も不審船を拿捕・連行できなかった教訓で生まれた新型の特殊巡視船である。(4月26日には3隻合同の射撃訓練を公開した)

 まず速力は、3基のウォータージェットを搭載して、40ノット(時速74キロ)を越えるスピードを出す。これは不審船が逃走したした際に、35ノットの猛スピードで逃げた速度を上回る速度である。

 この高速特殊巡視船は不審船を発見したら、直ちにウォータージェットの高速性能で追跡を開始する。その間に、何度もスピーカーや船舶無線で不審船に停船命令をくり返す。むろんこの間に、不審船の前方や上空に向けて20ミリ機関砲の威嚇射撃を行うだろう。しかし海上警備行動では、相手が武器を使って攻撃をしなければ、こちらから先に武器を使用しての攻撃はできない。(武器の使用は正当防衛に限定されている)

 次に行う行動(戦術)は、不審船の船尾などに体当たりを食らわすのである。不審船の舵や船体の一部を体当たりで破壊し、不審船の速度を落としたり、バランスを崩して操船が出来ないようにするのだ。それでも停船命令に従わないなら、不審船の速度が停まるまで何度も体当たりを食らわす。それが出来るように、高速特殊巡視船の船体は硬い鋼鈑に作られている。また高速特殊巡視船は操舵室が防弾構造となっている。

 ここで不審船が反撃してきたと想定する。武器は機関銃かせいぜいRPG7などの携帯式の対戦車ミサイルやロケット程度である。これらの攻撃で仮に巡視船が損傷を受けても、巡視船船体は内部を細かく区切り、厚い隔壁で浸水が広がらないようにダメージコントロールが施されている。対戦車榴弾程度の爆風にも耐える構造である。

 そこで20ミリ機関砲の射撃である。冬の日本海は海が荒れる。その海面を双方が30ノットを越えるスピ―ドで高速航行している。互いの船は波間を飛ぶように航行し、左右前後に大きく揺れるだろう。とても精密な射撃などできるわけがない。そこでジャイロの登場である。巡視船の機関砲の照準は操舵室の射撃装置で行う。夜間でも赤外線カメラが捕らえた不審船の画像の1点に照準線を合わせロックオンする。このロックオン状態でジャイロと射統コンピューターが作動を始める。双方の船の揺れやスピード、それに加速度をジャイロが計測し、20ミリ機関砲を自動制御して弾道をコントロールするのだ。これはちょうど戦闘機がドッグファイトのときに、敵機に機関砲の照準をロックオンするのと同じだ。双方の戦闘機が激しく機動していても、機関砲の照準装置でロックオンされると、機関砲弾は敵機に命中するように弾道を計算して発射される。この原理にもジャイロが使われる。

 すなわち不審船が攻撃をすれば、どのように海が荒れていても、直ちに20ミリ機関砲で正確な射撃が可能である。最も効果があるのは船尾の舵を破壊することだが、船首部分を破壊してスピードを落さすのも効果がある。むろん不審船の乗組員が甲板に出て、対戦車ロケットをこちらに向かって構えれば、その射手を銃撃することは正当防衛で対処できる。ジャイロを応用した射撃統制装置と20ミリ機関砲で、この高速特殊巡視船は不審船への対応が可能になった。

 この間の行動は、すべて高速特殊巡視船のビデオカメラで撮影し、たとえ不審船が自爆してもその映像を公開して文句は言わせない。これが私が推測した高速特殊巡視船の新兵器と新戦術である。写真は上から、40ノットの高速で航行する「つるぎ」。その下はリモコンで操作できる20ミリ機関砲、その下は夜間でも照準できる赤外線監視装置とテレビカメラ、その下の写真は射手が操作する照準器で、中央の黒い部分に不審船の画像と照準線が表示され、右のレバーのボタンを押しば、ロックオンされ精密射撃が可能である。

 海上保安庁はこの件に関してまだ性能を公表をしていない。それは海上保安庁が警察と同じように、新兵器や新部隊をできるだけ公開しないで、新たな事件に対応しようとする体質があるからだと思う。しかし軍事の世界ではある程度の公開は、抑止効果ができると公開する場合がある。その違いを考えると、今回の不審船対応の高速特殊巡視船は、警察行動と軍事行動の境目の部分にあたる。そこで私はいろいろ悩んだが、抑止効果があると判断してこの情報を公開することとした。海上保安庁から秘密を明かしたと怒られるかもしれないが、私は自分のこの公開が正しいことと信じている。新聞は海上自衛隊の特別警備隊の発足を報じる読売新聞。「4月3日付け、読売新聞夕刊」のトップで、日本は不審船に何も出来ないような記事が載っていた。これは北朝鮮に誤ったメッセージを送ると心配して公開を決意した。でも海上保安庁の広報課長の、苦虫を噛み潰したような顔が心に浮かんでいることも事実である。広報課長、ごめんなさい。でもこれが私の仕事なんです。本当は連休前に週刊誌に掲載する予定でしたが、小泉新内閣の誕生でその記事が吹き飛んでしまいました。でも、このホームページに掲載しても抑止効果が期待できると思います。(2001年 5月7日)
 この関連の質問を、「Re、メールにお返事(5月7日)」に掲載しています。