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日米指揮所演習 37 の基本想定と解説 
 この演習は実際に部隊を動かして行なう戦闘ではなく、パソコン250台を動かして行なうコンピューター上での図上演習で、自衛隊からは約2200人、米軍から約1000人の指揮官クラスが参加して、陸上自衛隊中部方面総監部のある伊丹駐屯地(兵庫県)など5カ所で行なわれた。今回は82年にヤマザクラ演習が始まって37回目での実施である。今回の演習名は「ROAD TO WAR〔戦争への道)」と名づけられている。

 基本想定
(1)インベンション・DAY  10日前に仮想敵である第8軍の勢力が、山口県西部、北九州付近に上陸を開始した。敵の第一陣の戦力は、福岡の海岸に第83自動車化狙撃師団が上陸、山口県西部の海岸には第81自動化狙撃師団が上陸して橋頭堡を築いた。山口の第81師団には第80旅団を増強して作戦を行なっている。これは米軍が朝鮮半島で軍事危機を察知し、緊急展開命令を出して37日目、敵軍と交戦〔海上など)を開始して12日目そして敵が海岸線〔橋頭堡から)から内陸部に進撃(インベーション)を開始した当日である。九州、山口県の空域では、敵の攻撃機も飛来して攻撃中。
 これに対して、九州では陸上自衛隊の第4師団が、北九州方面から南下してくる敵の第83師団の阻止作戦を実施中。その背後を陸上自衛隊の第5師団が固めている。山口では敵の第83師団、80旅団に対して、陸上自衛隊第10師団が正面で交戦中、しかし背後(中国山地中央より瀬戸内海側)を固める陸上自衛隊13旅団の対応が遅れている。中国山地中央より日本海側は第二混成団がすでに固めている。自衛隊は四国に小規模の警戒部隊のみ配置している。

(2)敵は橋頭堡を出て進攻を開始して8日後〔上陸開始後18日)に、第二陣の勢力を再び山口と北九州に上陸させた。その第陣で上陸した第82機械化狙撃師団は、先攻中の第83師団と交代するために九州中央に進出した。また新たに山口西部に上陸した敵の第372機械化旅団、第371機械化旅団の2旅団は、山口県を先攻中の第81師団の増援にむかった。なお第一陣の第80旅団は山口県の左翼を確保して、日本海の海岸線に上陸阻止戦を張っている。これは米海兵隊の上陸を許し、攻撃中の第81師団の側面を突かせないためである。
 これに対して、陸上自衛隊は山口正面で第10師団が交戦中であり、その背後を第13旅団が固め、その背後は現在戦闘中の第10師団が後退する予定陣地、さらにその背後を第8師団で固めるという陣営配置で交戦準備中。日本海側は引き続き第2混成団が警戒中。

(3)進攻を開始して14日目、九州正面では攻撃中の第83師団が、上陸第2陣で進出してきた第82師団と交代を行なった。第83師団は後退後にそのまま山口県に向かい、関西に向かって進撃する部隊に合流する模様だ。第83師団が北九州から山口に移動すれば、山口にいる敵の勢力は、進攻第一陣の81師団と80旅団、第2陣の第371旅団と第372旅団、それに九州の第83師団が加わることになる。
 これに対して、陸上自衛隊は九州で闘っていた第4師団を後退させ、後続の第5師団が前面にでて第82機械化狙撃師団に対抗させる配置転換を行なった。また広島県でも押されぎみの第10師団を後退させ、第13旅団が戦闘の前面に出る配置転換を行なった。自衛隊は敵の激しい攻勢に対して、守勢を保ちながら攻勢の機会を狙っている。

(4)いよいよ自衛隊と米軍が攻勢作戦を開始〔XDAY)した。敵が上陸を行なった34日目、そして敵が橋頭堡から出て進攻をはじめて24日目だった。その後に自衛隊の第13旅団は後退し、その正面を第8師団と後退した。そこには米軍陸軍の前進指揮所〔司令部)が開設され、すでに名古屋方面には米陸軍の戦闘部隊が到着して、戦闘編成され岡山の戦線に移動中であった。日米軍の総反攻開始の2日前(X−2)に、敵の部隊は岡山地区で大きな打撃を受けていた。敵の第8軍は攻勢進撃を一旦中止し、防御態勢に転換して日米軍の反攻に備えはじめた。敵の戦略予備軍として山口県内にいた第82機械化狙撃師団は、日米軍の反攻を予感し東に移動し広島付近にまで前進配置を行なった。

(5)敵は第8軍の増援部隊として、第10軍の自動車化狙撃師団1個と機械化狙撃師団4個の海上輸送を開始した模様。日本到着予定は日米の総攻勢開始4日後のようである。しかし総攻勢を開始して間もなく、敵の戦力は日米両軍に各所で撃破され、戦闘効率の著しい低下が見られた。この戦闘の状況では、上陸してきた敵軍の敗北は決定的となった。

 総攻勢開始4日後に、極東軍司令部は北海道の米39軍に撤退を命じた。増援するために日本に向かった敵の第10軍は、上陸することなく海上にて撃破された模様である。

 というのが、「YAMASAKURA 37」の基本想定である。ここでは米軍の動きについて詳しい記述はない。軍事常識として米軍のとる作戦としては、朝鮮半島の異常を感じると緊急動員体制をとることになる。ハワイ、アラスカ、アメリカ西岸にいる米軍を、北海道の千歳基地やその他の基地に空輸したり、名古屋付近に地上部隊を海上輸送して移送する。同時に米国内の予備役を召集して、北海道の千歳周辺に集結させる。もちろんその間に、三沢、嘉手納の米空軍機、米本土から緊急移駐してきた空軍機が、山口、北九州の敵軍ばかりか、敵の策原に雨あられの爆弾を投下するだろう。日本近海の海上には米航空母艦が遊弋し、艦載機が九州や中国地方に侵攻してきた敵に爆弾を投下する。むろん海上の戦闘艦や輸送、朝鮮半島の出撃基地などは、日米の航空勢力で完璧に壊滅させられることになる。

 そう考えれば、今回の演習では日米の優勢な航空戦力は、基地や施設への奇襲テロなどで相当のダメージを被って、航空戦力の行使に大きな制限を受けていると考えたほうがいいだろう。そう考えなければ、図上演習が成立しないからだ。

 まあ、図上演習の想定とは大体こんなものである。自分に都合のいいように想定ができるから形式な訓練にはちょうどいい。これが現在の日本周辺の軍事情勢を表しているかといえば、答えは完全にノーである。だれもこの想定が、今の朝鮮半島の軍事情勢を想定しているとは思わないだろう。だから私は「YAMASAKURA 37」演習の基本想定を秘密にするなというのだ。どこに秘密にしなければいけないところがあるのか。

 もし日本の原発に、敵特殊部隊のテロを想定しての訓練なら、たとえ図上演習でもその訓練を公開する必要はない。しかしYASAKURAのように予備役を召集して行なう訓練なら、あらかじめその情報をHPで知らせ、短期間の演習でも訓練効率を上げるためには絶対に必要である。むしろHPの掲載を中止することのほうがより問題でなのだ。
 このことは「痛くもない腹を探られる」と言うより、「煙のないところに火の気はたたぬ」とか、「やましい所があるから隠す」と言われてしまうのだ。なぜ自衛隊はもっと堂々と訓練がやれないのか。大きな演習になると、いつも自衛隊はコソコソと隠れて演習を行なうイメージがつきまとっている。もうそろそろ正々堂々と国民に存在を主張をしてみてはどうだ。

 最後にひとつ自衛隊に聞きたいのは、陸上自衛隊が今まで主張していた水際作戦(敵を海岸線付近で撃破する戦略)は、この演習を見る限り柔軟に対応する戦略に変更されたと考えてよいのだろうか。
写真は北海道で行なわれた日米共同演習の自衛隊と米軍、YASAKURA 37で自衛隊と米軍が本格的な反攻を開始するX−DAYの戦闘状況図米軍である。撮影・神浦 元彰