自衛隊の特殊部隊
 自衛隊の特殊部隊といっても、まず特殊部隊の定義から知る必要があります。でないと、陸上自衛隊のレインジャー部隊や空挺部隊を、これが特殊部隊だと勘違いするからです。彼らは特殊な技能を持っていますが、あくまで歩兵部隊の一種であって、特殊部隊ではありません。 

 特殊部隊は、母体となる本隊と遠く離れて単独(あるいは小部隊)で行動する部隊のことです。レインジャーや空挺部隊は、医療や補給、それに通信など支援は、師団や旅団など本隊から得ることを前提に作戦を行なっています。レインジャーは普通の歩兵では通過が困難な場所や、自然環境が厳しい場所であっても、作戦を遂行できる能力があります。空挺部隊は敵への接近経路を、空路から進入することができる部隊と位置つけられています。ですから、あくまで特殊な技能を持った歩兵部隊といことになります。しかし特殊部隊の隊員は、そのようなレインジャー部隊や空挺部隊の中から選んで、さらに専門的な戦技や特技を身に付けさせます。

 本来の特殊部隊の特徴は、本隊から数百、数千キロと離れて単独チームで作戦を行ないます。そのために特殊部隊の隊員には高度な医療技術、広範囲な通信能力、敵の武器を含む各種武器の知識、長距離を自力で走破できる高い機動性、そして敵の支配地域で作戦を行なうために、その地方の言葉が話せたり、高い戦闘能力が必要になります。米軍の場合は、エチオピアの高地に特殊部隊の隊員が深夜にパラシュート降下し、地上で小型の無線機で衛星通信の回線を確保し、地上の詳細な地図などの情報を米本土の司令部から得ながら、ゲリラに人質となった米国人技術者の追跡を行ない、最後のゲリラの拠点であった洞窟を襲撃し、人質の米国人を救出したという作戦例もあります。その救出後には、下の写真のように気球を上げて体とロープで結び、そのロープをMC-130特殊作戦機で引っ掛けて回収するという方法がとられました。ヘリの短い航続距離では回収が不可能だったからです。

 この例のように、自衛隊に特殊部隊を作るといっても、隊員には簡単な手術もできる医療知識、地球規模で画像を含む通信を回線の確保、隊員の潜入や回収を可能にする特殊作戦用の航空機、そのような広範囲の高い戦闘能力が必要になります。単にレインジャーや空挺の経験者を集め、人数だけの部隊を編成しても、あくまでそれは特殊部隊の母体となるもので、特殊作戦の能力があるとはいえません。しかし今後の展開によっては、自衛隊の離島派遣部隊、空挺の邦人救助警備部隊、海上自衛隊の特別警備部隊が、自衛隊の特殊部隊の母体になることは確実です。日本の防衛政策を知る上で、注目していい部隊といえます。(しかし自衛隊は離島派遣部隊の取材を許可していません)

 日本の警察には、人質事件やハイジャックに対応する部隊がいますが、これも特殊部隊というには無理があります。正確には戦闘能力の高い人質救出部隊(HRU)と言います。あまり知られていませんが、同じような部隊は海上保安庁にもできています。(1999年12月26日)

 写真(上)は、装備年鑑に掲載されている9ミリ機関拳銃です。なぜか装備年鑑では、航空自衛隊の分野で掲載されています。製作はミネベアです。警察の人質救出部隊はMP5を装備していることは有名です。やはり海上自衛隊の特別警備隊員もこの9ミリ機関拳銃を装備することになるでしょう。狭い不審船の中で撃ち合うには、銃床を折り曲げた89式2型小銃でも大きすぎますからね。